【石川祐希が語る3度目のイタリア挑戦 前編】

 全日本男子のエース・石川祐希(中央大4年)が、世界最高峰のバレーボールリーグであるイタリアのセリエAで、3度目の競技生活を送っている。

 現在プレーするラティーナは今季、負けが先行して苦しい戦いが続いているが、年が明けてからは2連勝。リーグ開幕直後、全日本バレーボール大学男子選手権大会(インカレ)出場のために帰国していた石川も、調子を上げるチームのなかで存在感を増している。

 そんな、イタリアで奮闘する日本バレー界の至宝に、3度目のイタリア挑戦の手応えや、昨年9月のグラチャンで負ったケガの状態、惜しくも4連覇を逃したインカレについて聞いた。




イタリア・セリエAのラティーナでプレーする石川

――現在のコンディションはどうですか?

「ケガは、プレーに支障が出ないくらいに回復していますが、ヒザも腰も完治はしていません。診断結果も『まったく心配ないですよ』というわけではないんですけど、痛みはないのでプレーは問題なくやれています。なので、コンディションは『悪くない』という感じです」

――イタリアに挑戦するのは3度目ですが、これまでと比べて変わったところは?

「自分のことでいうと、いろんな指示が(イタリア語で)だいぶ理解できるようになってきたので、プレーがしやすくなりましたね。こちらから何かを言おうとするときには言葉に詰まることもありますが、ある程度は伝えられるようになってきたので、そこは過去2回とは違うかなと思います。

 チームに関しては、セッターや対角の選手以外はけっこうメンバーが変わっているので、そこも新しい経験になっています。昨年もラティーナでプレーしましたし、バレーに専念できる環境であまりストレスはありませんが、私生活ではときどき変化があった方がリフレッシュできていいですよね。『車があったら、どこかへ行けていいな』とも思うのですが……。僕は車の免許を持っていないので、他の方法を考えます(笑)」

――ラティーナは今季に向けて、アメリカ代表のリベロであるエリック・ショージや、セルビア代表のサーシャ・スタロビッチ、元イタリア代表のクリスチャン・サバーニなど、大幅に補強をしました。それでも成績がついてこない現状をどう見ていますか?

「メンバーは揃っているんですが、連敗しているときはチームがバラバラになっていました。日本人の血が入っているエリックは、常にポジティブで、チームの雰囲気をよくしようとしているのが伝わってきます。それに対して、サバーニや、セッターの(ダニエレ・)ソッティーレとかは結構イライラしちゃう。そこは、ちょっとやりづらいところではありますね。

 また、サバーニが肩を痛めているので、それを穴埋めするべき僕が(インカレ出場のために)途中でいなくなったり、交代しないといけないところでケガで出られなかったりといったことも原因かなと思います。チームの調子に波があるので、悪い時にどうよくしていくかを考えないといけないですね」

――昨年11月、リーグの途中で帰国して臨んだ大学最後のインカレは、準決勝で筑波大に敗れて3位となりました。振り返っていかがですか?

「僕はチームに合流するのがギリギリになるのがわかっていたんですが、(大竹)壱青もドイツでプレーすることになって、同じように直前の合流になってしまいました。なので、キャプテンを(武智)洸史に任せて、チーム作りは他の4年生に頼る形になりました。僕も、グラチャンで負ったケガの影響があってコンディションを万全にできなかったですし、結果について自分があれこれ言うことはできないです。

 ケガの回復よりもチームを重視して、後のことを考えずに無理をしていたら結果は変わっていたのかもしれません。でも、昨年も同じような感じでケガが長引いてしまったので、それは避けたかったんです。『ケガをしないで勝つ』のが今後の課題ですね」

――4年間で出場したインカレでわずか1敗。その唯一の敗戦から感じたことは?

「正直、中大に勝つチームがあるとしたら筑波大じゃないかと思っていました。最もプレーに魂がこもっていて、他の大学の試合も見ていましたが、『当たるとしたら筑波かな』と。だからといって、もちろん負けていいとは思っていなかったですけどね。
 
 すごく印象に残っているのは、その試合の内容ではなくて、大会が終わった後のことなんです。3位決定戦に勝って僕がすごく泣いていた時に、誰かに『泣かせてごめんね』と言われて。(実際は)負けたことじゃなくて、大学での競技生活が終わったという想いからの涙だったので、その言葉には引っかかるところがありました。悪気はなかったと思うんですけど、負けたら悔しい言葉を掛けられることもあるんだなと。あらためて、『少なくとも日本でやる時は絶対に負けたくない』と強く思いました(笑)」

――中央大学での4年間のなかで、特に印象に残っている試合はありますか? Vリーグの強豪であるサントリー・サンバーズに勝利した、2015年の天皇杯を覚えているファンも多いと思いますが。

「その年の天皇杯も印象深いですけど、試合の内容で考えたら、2016年のインカレの東海大との決勝ですね。4年間で最も気合いが入っていた試合で、どのセットも接戦になって、本当に力を出し切って勝った。大学の試合に限定した場合は、その決勝の試合が一番です」




イタリアで子供との記念撮影に笑顔で応じる石川

――大学での戦いを終え、ラティーナでの活躍が期待されていますが、昨季と同じくケガで出遅れたこともあって出場時間は短くなっています。

「昨年末のミラノ戦の前の練習からAチームに入ったんですが、試合の3日前くらいにまた腰を痛めてしまってBチームに戻りました。今は腰の状態はいいんですけど、せっかく掴みかけたチャンスを逃してしまうケースが多いんです。ケガの原因がどこにあるのかをしっかり見直して、『スタメンで出る』という信念を持ってやっていきたいと思います。(過去に監督とサバーニが同じチームだったこともあって)今年は監督がサバーニを信頼しているので、スタメンを取るのはなかなか難しそうですけど。

 この前の試合(1月5日のBCCカステッラーナ戦)は、久しぶりにサバーニの調子がすごくよかったですね。でも、彼も波があるのでチャンスはあると思っています。サバーニは35歳のベテランですが、セリエAでは年齢が高い選手が起用されるケースが多いんです。そこは、今までの実績が評価されてのことでしょうね。まだ経験が浅い22歳の僕が信頼を得るためには、コミュニケーションをしっかりとって、何より、いいプレーをすること。スタメンを取るまで、それを徹底してやっていきたいと思います」

(後編に続く)