全仏オープン(5月22日~6月5日)がスタートした22日、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は29歳の誕生日を迎えた。そしてこの日は、いまだ彼から逃げ続けている唯一のグランドスラム・タイトルを勝ち獲る挑戦が始まる日でもある。それは彼にとっ…

 全仏オープン(5月22日~6月5日)がスタートした22日、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は29歳の誕生日を迎えた。そしてこの日は、いまだ彼から逃げ続けている唯一のグランドスラム・タイトルを勝ち獲る挑戦が始まる日でもある。それは彼にとってフラストレーションを誘うものになっているのだろうか…。

 2年連続で、決勝で敗れ、合計3回(2012、14、15年)の準優勝を経験しているジョコビッチは、今年12回目の全仏オープンに臨み、オープン化以降の『ロラン・ギャロスでタイトルを勝ち獲る前に、出場回数で最多記録』を打ち立てるかもしれない。

 昨年のスタン・ワウリンカ(スイス)、2009年のロジャー・フェデラー(スイス)、1999年のアンドレ・アガシ(アメリカ)、1990年のアンドレス・ゴメス(エクアドル)の4人は、全仏オープン11回目の出場の年に優勝を遂げた選手たちだ。グランドスラム大会全体でいえば、2001年のウィンブルドン優勝前に14回のトライを必要としたゴラン・イバニセビッチ(クロアチア)が、オープン化以降の最多出場記録を保持している。  全仏タイトルを獲らねばならないという強迫観念はない、と主張するジョコビッチだが、彼にとって今年ほどのチャンスは2度とめぐってこないものではないだろうか。というのも9回にわたって全仏オープンを制したラファエル・ナダル(スペイン)は、いまだクレーでの調子を取り戻そうとしている最中であり、昨年優勝のワウリンカの調子は安定しておらず、グランドスラム大会で17回の優勝を誇るロジャー・フェデラー(スイス)は、背中の故障で欠場を決めた。ただし、先週のローマの決勝でジョコビッチを倒した、第2シードのアンディ・マレー(イギリス)は、真の脅威となり得る存在と見られる。  「もちろん、ほかの皆同様、今年、このタイトルをつかむことを期待している」とジョコビッチは言う。「たとえ僕のキャリアが明日終わろうとも、僕は誇りに思っていい、いくつかの偉業を成し遂げてきたとは思う。だから、今大会、あるいはほかのどの大会でも、僕は何かに取りつかれているというような、強迫観念をもって物事にアプローチするようなことはない」。  フェデラーはどこでプレーしようと、常にファンたちのお気に入りの存在であり続けてきた。喜ばせるのが難しいとされるパリのファンたちは、ナダルが2005年に、もじゃもじゃ頭のティーンエイジャーとして初めてタイトルを獲って以来、そのクレーの寵児を常に温かく迎え入れてきた。おそらくジョコビッチは、優勝にたどり着くための追加的エネルギーとして、フランスのファンたちを見方につけたいと願っているだろう。  21日の土曜日に、練習を始める前、ジョコビッチはフランスの伝統的スポーツ『ペタング』をプレーしつつ――重いメタルのボールの代わりに黄色いテニスボールを使っていたとはいえ――ベレー帽をかぶっておどけたり、ふざけてバイオリンを弾いてみせたりした行動に、それが現れているように見えた。

 あるいはジョコビッチはただ、プレッシャーと期待をやわらげようと努めていただけかもしれない。

 2015年以降のジョコビッチは119勝9敗の戦績をおさめ、今年獲得した5つのタイトルを含めると、4つのグランドスラム・タイトルに、16のツアータイトルを獲得してきた。さらにキャリア全体に広げて見れば、ジョコビッチは「11」のグランドスラム・タイトルを獲得しており、そして今年の終わりには、それを「14」と増やして、ナダルの記録に追いつく可能性も手にしている。  2014年の全仏オープン決勝でジョコビッチがナダルに敗れたとき、ナダルはまだ、クレー上で最強とみなされていた。しかし今の状況は変わっている。4月にナダルがモンテカルロで9度目の優勝を遂げ、そしてバルセロナで同じく9度目の優勝を遂げ、クレーコート大会での優勝回数「49」を記録して、ギレルモ・ビラス(アルゼンチン)の記録と並んだのが事実だとしても、今のナダルはクレーの上でさえ、ジョコビッチの陰にいる。  2014年の全仏決勝で敗れて以降、ジョコビッチはナダルを7回連続で破っている。そのうち3対戦がクレーコートの大会でのもので、2015年の全仏準決勝はストレートセット(7-5 6-3 6-1)でナダルを退けた。また、直近のローマの準々決勝でも7-5 7-6(4)で倒した。

 二人が、今年の全仏オープンで対戦するとすれば準決勝だ。それは彼らの50回目の対戦となり、ナダルの30歳の誕生日に実現するかもしれない。  二人の対戦成績は、26勝23敗でジョコビッチがリードしていて、ナダルに対する連勝数でもジョコビッチは最多タイ記録を持っている。ジョコビッチはそれ以前にも、すべて決勝での対戦でナダルに7連勝したことがある。2011年の6勝と、2012年全豪オープンでの勝利だ。

 ナダルの1回戦の相手は、世界95位のビッグサーバー、サム・グロス(オーストラリア)となった。まだ一度も対戦したことがない二人だが、ナダルは「彼は難しい相手だ」と言っている。「彼のサービスゲームをブレークするのは難しいことだとわかっている」とナダル。  ジョコビッチは1回戦で、世界100位のルー・イェンシュン(台湾)と対戦する。マレーは、予選を勝ち上がったベテランのラデク・ステパネク(チェコ)と、そして、ワウリンカはハードヒッターのルーカシュ・ロソル(チェコ)との油断のならない1回戦を予定している。(C)AP(テニスマガジン)