ラストゲームを戦うレジェンドに勝利を。
 1月13日(秩父宮)のヤマハ発動機ジュビロは、その思いで結束した。
 司令塔として長くチームの真ん中に立ってきた大田尾竜彦が、この日のトヨタ自動車戦でブーツを脱ぐ。仲間たちの気持ちは奮い立っていた。
 28-10。スカイブルーのジャージーは、高い集中力で日本選手権3位決定戦を制した。

 3点を先制された。しかし、ヤマハは揺るがなかった。
 前半19分にWTB田中渉太が相手のこぼしたボールを足にかけて走り、インゴールへ。同28分には大田尾がチップキックでCTBマレ・サウのトライを呼ぶ。同35分にはFL八木下恵介がゴール前ラックから飛び込んだ。
 21-3とリードして入った後半の立ち上がりにも加点した。同4分にふたたびCTBサウがトライを奪う。
 28-3としてゲームを決めた。

 選手たちの気持ちの入り具合は、防御や接点での激しさから伝わった。特にNO8堀江恭佑のパフォーマンスは抜群だった。
 清宮克幸監督は、主将のコンディションを「満身創痍。普通の人間なら入院しているレベル」と明かした後に続けた。
「素晴らしかったですね。激しさ。責任感。きょうのプレー、タックルで、ジェイミー・ジョセフ(日本代表ヘッドコーチは)彼を選ぶことになるんじゃないかな」
 指揮官はチームの出来にも満足そうだった。
「チームのレジェンドである竜彦を勝利で送りだそうということで、チームがひとつにまとまっていた」と言った。
「久しぶりにヤマハらしい試合でした。どうせなら先週(の日本選手権準決勝で)こういうプレーをやってくれたらよかったのに。(きょうのように)FWがいろんなところで助け合い、気が利く動きをして、得点力あるBKに外国人選手を配置し、判断力のあるSOがいたら、ラグビーは簡単なスポーツだと思わせることができるんじゃないかな、と思いながら見ていました」
 堀江主将は以前コーチを務めていた長谷川慎氏から前日に連絡が入り、「ラグビーはメンタルスポーツ。FWから(チームに)エナジーを与えるようなラグビーを、と言われました。それをみんなで確認しました」と話した。

 大田尾自身はこの日を迎えるにあたり、「自分でもどんな気持ちになるのか分からなかった」と、試合前の心境を口にした。
「結局いつもと同じでした。チームをどう勝たせようか。それだけを考えて昨日の夜を過ごしました。先週、チームはサントリーに惨敗(7-49)したと言っていいと思います。そこから立て直してくれた首脳陣、主将のキャプテンシーに感謝したいと思います。来年以降のヤマハの礎になる試合ができました」
 数年前から引退のタイミングを探していた。2018年度のリーグ戦の試合数の少なさ(7試合)、2019年度以降の状況を考え、若手に道を渡し、そのサポートにまわる時が来たと判断した。
 ベストメモリーは決勝に進出した試合(2004-05年と2014-15年シーズン)で、ワーストは入替戦出場時(2010-11年シーズン)。前者は高揚感しかなく、後者は悲壮感が漂っていたと回想した。
「その両方を経験した選手はなかなかいないでしょう」
 今後は、指導者としての生活を希望している。

 清宮監督は、大田尾の決断とトップリーグを取り巻く環境の変化は無関係ではないだろうと話した。
 決断について「本人が決めた」という同監督は、大田尾は、若手や外国人の出場機会も考慮して決断したのではないかと言った。
「年間20試合ぐらいプレーできて、自分と若手、外国人が7試合ずつぐらいプレーする。そういう中で競争した結果(引退を)決断する。それがプレーヤーとしては幸せでしょう」
 しかし実際は、2018年はリーグ戦が7試合しかおこなわれない。
 2019年はワールドカップの影響でトップリーグのリーグ戦はない。2018-19年シーズンは2018年12月までに終了し、2019-2020年シーズンは2020年になって開幕するからだ。
「異常な状況。プレーヤーやチーム運営側にとっては残念なこと。これは、大きな過渡期になる」
 指揮官は、選手たちの幸せに目を向けた改革こそすすめられるべきと考えている。