日本のベーブ・ルース、大谷翔平は、ベースボールに革命を起こせるか――これは、64年の歴史を誇るアメリカのスポーツ専…

 日本のベーブ・ルース、大谷翔平は、ベースボールに革命を起こせるか――これは、64年の歴史を誇るアメリカのスポーツ専門誌、スポーツ・イラストレイテッドに踊った見出しである。



二刀流としてメジャーに挑む大谷翔平

 大谷がアメリカで”野球の神様”と呼ばれるルースに準(なぞら)えて語られるのは、MLBとNPBの球史を紐解くと過去、ルースと大谷だけが同一シーズンにピッチャーとして2ケタ勝利を挙げ、バッターとして2ケタのホームランを放っているからだ。それをもってアメリカでも日本でも、「ルースと大谷はツーウェイ(二刀流)のプレーヤー」だと言われている。

 果たしてそうだろうか。

 確かに、ルースはピッチャーでありながら、登板のない日に外野手として起用されていた。しかし、もともとピッチャーとしてプロ入りを果たしたルースは、まずはピッチャーとして頭角を現した。その中でバッティングの才能を発揮し、徐々にバッターへとシフトしている。2ケタ勝利、2ケタ本塁打を達成した1918年の前後2年ずつ、すなわち1916年からの5年間の勝利数と本塁打数を見れば、それは一目瞭然だ。

<1916年からの勝利数> 23勝→24勝→13勝→9勝→1勝
<1916年からの本塁打数> 3本→2本→11本→29本→54本

 つまり、1918年にルースが達成した同一シーズンの”13勝、11本塁打”という数字は、右肩下がりの勝ち星と右肩上がりのホームラン数が交差した年に、たまたま生まれた記録だったのであって、ピッチャーとして、またバッターとしてのベストシーズンだったわけではない。

 実際、ルースはピッチャーでいくべきか、バッターでいくべきかを迷い、最終的に投手から野手へ転向した。ツーウェイ(二刀流)はそのプロセスの一環だったのである。

 大谷は違う。

 彼の二刀流は、いつか、どちらかに絞るためのプロセスではない。ピッチャーの大谷がいて、同時にバッターの大谷がいる。大谷は野球選手である限り、ピッチャーであり、バッターでもあるのだ。

 そして、ファイターズの栗山英樹監督の言葉を借りれば、「二刀流は大谷翔平にとっての武器ではなく、大谷翔平という選手を生かすための必須条件」であり、「大谷翔平の二刀流はチームにとって、勝つために必要不可欠な武器」でもあるのだという。つまり二刀流をやらせたほうが、大谷も生きるし、チームも勝てるというわけだ。

 そう考えたとき、大谷をどう使うのがベターなのか――そのカギは、3つある。

1、バッターの大谷はDHのレギュラー。
2、ピッチャーの大谷は中4日で投げさせる必要はない。
3、DHとピッチャーの両方をもっともお得に使える起用法を考える。

 ここで、別表を参照していただきたい。

 これは、2018年のロサンゼルス・エンゼルスのスケジュールである。表1は、大谷を5番目の先発ローテーションのピッチャーとして中4試合で起用し、DHとしては登板前日と登板翌日を除いて起用した場合の起用法。



表1.大谷を先発5番手とし、中4日で起用したときのスケジュール(日付は現地時間)

 表2は、エンゼルスの先発ローテーションの1番手、2番手を、プライドと調整のしやすさを考慮して優先的に中4日で起用し、大谷を含めた3番手以降を中4日にとらわれず、大谷を中7日以上で起用した場合。DHとしての大谷については、登板前後は休みとする。



表2.1、2番手のみ中4日のローテーションで回したときのスケジュール(日付は現地時間)

 大谷が2018年のシーズンから、いきなりメジャーでフルにプレーすることを期待するのがお門違いであることは重々、承知している。さらに、エンゼルスのローテーションがまだ不確定であること、エンゼルスの2018年のDHのレギュラーがアルバート・プホルスであることも含んだ上で、これはあくまでも2018年のスケジュールをモデルケースにシミュレートした大谷の起用法だということをご理解いただきたい。

 もちろん、東海岸にありがちな雨によるスケジュールのズレやピッチャーの故障など、ローテーションが狂うことはいくらでもあるだろうし、大谷がプホルスに代わってファーストを守ることだって、ないとは言えない。そうした不確定要素をここに反映することはできないが、あくまでも機械的に2つのパターンにはめて大谷を運用してみると、意外なことがわかってくる。

 まず、ピッチャーの大谷をローテーションの5番手として中4試合で起用すると、シーズンの先発機会は31試合になる。その場合、DHでの出場は80試合だ。しかし中4試合にこだわらず、大谷を中7日以上で起用すると、20試合の先発と、107試合のDH出場を確保できる。その場合、間隔をあける大谷の代わりに先発が必要となるのは12試合ということになり、そのくらいの試合数なら中継ぎ陣の中から誰かを先発として登用することも可能だろう。

 フルに先発で31試合に先発させた結果、DHの出場を減らしてしまうのと、中7日以上の余裕を持たせて20試合に先発させ、DHとしてできるだけ出場試合数を増やすのと、どちらが大谷を生かし、チームを勝たせることができるのか――答えは後者であると、球史が示している。

 大谷は2016年、ピッチャーとして規定投球回数に、バッターとして規定打席に達することなく、ピッチャーとDHの両方でベストナインに選ばれ、リーグMVPに輝き、チームを日本一に導いた。その大谷に中4日とか、200イニングとか、そうしたメジャーの先発ピッチャーとしての当たり前を期待することが、そもそも先入観にとらわれた発想なのだ。

 先入観は可能を不可能にする――大谷が心に刻んでいるこの言葉を改めて噛み締めれば、大谷の二刀流の理想形が見えてくる。ここではピッチャーとバッターを別々に起用するケースに絞ってシミュレートしたが、やがてはファイターズのときにそうしたように、先発する日にあえてDHを使わない”リアル二刀流”をメジャーで実現させる日が来るかもしれない。そしてその先には、メジャーでの”4番ピッチャー、大谷”がある――。

 エンゼルスの大谷翔平は、100年前のベーブ・ルースをトレースしているわけではない。過去、MLBにひとりもいなかった、”ほんとうのツーウェイ・プレーヤー”を目指しているのである。