加藤未唯インタビュー 前編「優勝というものがイメージできるようになった」 加藤未唯(みゆ)は2017年に、WTAシングルスランキングを年初の182位から126位に上昇させてシーズンを終えた。その上昇の過程には、シングルスでグランドスラム…

加藤未唯インタビュー 前編

「優勝というものがイメージできるようになった」

 加藤未唯(みゆ)は2017年に、WTAシングルスランキングを年初の182位から126位に上昇させてシーズンを終えた。その上昇の過程には、シングルスでグランドスラム初出場を果たしたり、WTAツアー大会で初めて決勝進出するなど、世界の舞台で、加藤は確かな足跡を残してみせた。

 まず、インタビュー前編では、シングルスに関して、2017年シーズンの成長、躍進を振り返ってもらった。



トップ100入りも見えてきた加藤未唯

――2017年2月のWTAクアラルンプール大会では、予選を2回勝ち上がって、本戦1回戦で、第2シードのカルラ・スアレスナバロ(25位、スペイン)に、2-6、6-1、6-3で逆転勝ちました。ツアーレベルでは、2016年8月のWTA南昌(ナンチャン)大会(中国)での初戦突破以来の勝利でした(ツアー本戦マッチ3勝目)。加藤さんが当時201位で、破った対戦相手の中では最高位の選手でしたが、振り返って何がよかったと思いますか。

加藤未唯(以下、加藤) スアレスナバロに勝てたことで、シーズンのいいスタートが切れた感じでした。これまで、一番ダメだったのがメンタルだったんですけど、そのために何かしたわけではありませんし、特に意識はしていなくて、「あ、できるんやな」って気づかされた試合でした。

 プレーがよかったから、メンタルにもいい影響があったんだと思います。私はフォアのクロスをベースにプレーするんですけど、そのショットが有効で相手をコートの外に追い出せた。彼女は高い弾道で打ってきたのに対し、第1セットでは、ボールを落として(低い打点で)私が打っていました。でも、セットを取られてから切り替えて、フォアもバックも(コートの)中へ入って打っていったら、それがうまくいった。スライスも交ぜながらうまくできて、私の判断もよかった。

 今までで一番いい試合だと思っていて、1試合とおして高い集中力でできた印象があります。これを続けられれば、(トップ)100位も見えてくると思えた試合でした。

――5月下旬のローランギャロス(全仏オープン)では厳しい予選を勝ち上がって、グランドスラム初の本戦入りを果たしました(大会時、加藤199位)。

加藤 (全仏前哨戦の)ローマではダブルスだけだったんですけど、試合以外ではコーチとシングルスの練習に時間を使って、それがよかった。その練習の成果もあって、全仏の予選でいいプレーができていた。

 私は体がちっちゃいけど(身長156cm)、クレーで本戦に上がれたのは自信になりました。何かクレーは好きなんです。初めて(グランドスラムの)予選を勝ち上がれたのはクレーだったので、すごく嬉しかったですし、自分の中で意味がある。初めて上がったのがウインブルドンだったら、そこまで嬉しくなかったかなって。

――もともとレッドクレーというサーフェスは得意だったのですか。

加藤 クレーは好きで相性がいい。ジュニアの時に、グランドスラムのシングルスは1勝しかしてなくて、それがクレー(2011年、ローランギャロス)でした。プロになってから、(2016年のローランギャロスで)初めてグランドスラムの予選で勝ったのもクレーで、そして今回、本戦に初めて入れたのもクレーでした。

――勝利を決めた瞬間は両手でガッツポーズして、雄叫びをあげましたが、あの時はどんな気持ちでしたか。

加藤 (ガッツポーズは)本戦に上がれたというものではなくて、競り勝てたという感じでした。今までずっと予選で負けていたので、もちろん嬉しかったですけど、それ以上に疲れていたので、そんなに喜ぶ気力もなかった。



全仏オープン予選を通過し、本戦出場を決めてガッツポーズ

――グランドスラム本戦の舞台に初めて立てたという特別な気持ちはありましたか。

加藤 グランドスラムは特別と言いますけど、1試合は1試合で、一緒なのでそこまで特別感はないです。やっぱり勝ちたいのはグランドスラムですけど、ふだんのツアーでの戦いがポイントを支えているので、どちらかというとその方が大切です。

(1回戦では)試合がどうというよりも、すごく疲れていたし、足も痛かった。本戦でプレーできてよかったという最小限の喜びでした。