WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス PGAツアーの2017-2018シーズンは昨年10月からすでに開幕しているが、新たな年を迎えて、選手たちもその気持ちを新たにする。 年明け初戦となったのは、ハワイ州カパルアのプラ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 PGAツアーの2017-2018シーズンは昨年10月からすでに開幕しているが、新たな年を迎えて、選手たちもその気持ちを新たにする。

 年明け初戦となったのは、ハワイ州カパルアのプランテーションコースで開催されたセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ(1月4日~7日)。2017年に米ツアーで優勝を遂げた選手だけが出場できるエリート大会だ。そこでも、年末に短いオフを過ごしたトッププレーヤーが集結し、迎えたニューイヤーに向けて、それぞれが”目標”を掲げた。



2018年の目標を語った松山英樹

 まずは、今大会で3度目の出場となった松山英樹(25歳)。12月に3週間のオフを日本で過ごし、「そんなに(日本を)楽しむほどゆっくりはできなかったけど、それでもいい休憩にはなりました。また1年の始まりだな、という感じです」と、リフレッシュされた表情を見せた。

 そして松山は、こう目標は掲げた。

「今年の目標は”無”です」

 つまり”無心”でプレーし、戦っていくということだ。

 松山がプロ転向前から掲げている目標は、「メジャーで勝つこと」。日本勢がいまだ達成したことのないメジャー制覇を目指して、日々戦っている。

 年が明けると、ゴルフ界は一気にマスターズ(4月5日~8日/ジョージア州オーガスタ)への機運が高まっていき、無論、松山の士気もそこに向けて高揚していく。ただ、今年の松山はそのマスターズに対しても、平静を装っていた。

「周りの人が立てた目標に向けてがんばるだけ」

 松山は「マスターズ」という言葉さえ発することがなかった。

 おそらく、頭の中では”マスターズ”でいっぱいのはずである。だが、そこはあえて言葉にしないで、目標に掲げたとおり”無”の意識で戦っていこう、という気持ちの表れだろう。

 トッププロは、誰もがメジャーに照準を合わせていく。しかしながら、自身のピークをメジャーに持っていくようにコントロールするのは難しい。

 そこで、米ツアー5年目を迎えた松山は、特に”秘策”ということではないが、”無欲で臨む”という考えに至った。それが今現在、彼がたどり着いた”メジャーで勝つため”の答えなのではないだろうか。

「試合が始まってしまえば、(いろいろなことを)考える余裕はないので、しっかりと1試合、1試合を大事に戦っていきたいな、と思います」

 そう話す松山の言葉に重みを感じた。

 一方、松山のライバルたちは、どんな目標を掲げたのだろうか。

 昨季は”松山キラー”とも呼ばれ、全米プロでメジャー初勝利を飾るなど、年間5勝を挙げたジャスティン・トーマス(24歳/アメリカ)は、「今年は予選落ちをなくしたい」と意外にも地味な目標を掲げた。

 ちょうど1年前のこの大会でも、松山と優勝争いを演じたトーマス。最後の2ホールでバーディーを奪い、猛追する松山を振り切って勝利した。その翌週のソニーオープン・イン・ハワイでも、初日に「59」をマークするなどして、2週連続優勝を遂げた。

 しかし、その後の5試合で3度の予選落ちを喫した。さらに、6月末からは3試合連続予選落ちという屈辱も味わった。

「あの予選落ちが、ものすごく僕を苛立たせている」

 そう言って、トーマスは顔を歪めた。その姿を見れば、今年の目標が「予選落ちしたくない」というのもわからなくはない。

 実は、トーマスは具体的な数字の目標をたくさん作っていることでも知られている。昨季も、細かく記したその目標を自身のスマートフォンに入力し、ひとつひとつ、達成に向けて励んできた。そのスタンスは、今年も変わらないという。

「(具体的な数字を示した)全部の目標は、シーズンが終わったから公表するよ。それでも、ひとつ例を挙げるなら、リッキー(・ファウラー)のようにサンドセーブの数字は高めたい(※)」
※サンドセーブ=グリーン周りのバンカーから1パットで沈めるセーブ率。その部門において、ファウラーは昨季、68.66%でツアー1位。片や、トーマスは48.21%でツアー122位だった。

 そしてトーマスは、最後にこう語って気を引き締めた。

「昨季はグレートイヤーだった。だからこそ、(驕ることなく)今年も少しずつ地道な目標を達成していくだけ」

 翻(ひるがえ)って、「新たなマインドセットで今年は戦う」と、精神面を大きな目標に掲げたのは、ジョーダン・スピース(24歳/アメリカ)だ。

 メジャー3勝を含めて、すでにツアー通算11勝をマークし、ツアーを席巻する”ヤングガン”の中でもトップを走るスピース。その成功は大いに称えられているが、”苦い過去”が彼をずっと苦しめていたようだ。

「2016年のマスターズで、僕は最終日のバックナインでミスショットをして勝利を逃した。その失敗にはたくさんの批判の声があった」

 2016年マスターズ。前年の覇者スピースは、初日からトップを快走して誰もが連覇を達成すると思ったが、最終日の12番パー3で2度の池ポチャ。目前に迫っていた優勝を逃した。その後、世の中でさまざまな反応があったことは確かだ。

 それでも、スピースはその”悪夢”を克服して、昨季は全英オープン最終日にミラクルショットを放って劇的な勝利を飾った。

「あのときも、『マスターズのように、また失敗したらどうしよう』という不安があった。でも、それを乗り越えられた。どんなに批判を受けようとも、戦っているのは僕自身。今までは周囲の声を気にしすぎていたと思う」

 そう語ったスピース。2018年は、精神的にも意識改革を図って挑んでいくという。

 注目のトッププレーヤーが、それぞれの目標を掲げて臨む2018年。メジャー初戦となるマスターズまで、はや100日を切った。

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