東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東(ホンダ学園)の学生によるヒストリックラリー参戦プロジェクト「Team 夢双」は、1月7日に東京大学にて中間報告会を行い、これまでの経過報告とともに今回参戦する6名のクルーを発表した。   第8期にあた…

東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東(ホンダ学園)の学生によるヒストリックラリー参戦プロジェクト「Team 夢双」は、1月7日に東京大学にて中間報告会を行い、これまでの経過報告とともに今回参戦する6名のクルーを発表した。
 
第8期にあたる今回のプロジェクトで参戦するのは、1月31日から2月7日まで開催されるラリー・モンテカルロ・ヒストリック。2016年に参戦予定だったTeam MUSASHIがフランスのテロにより参戦を断念して以来、3年ぶりの再挑戦となる。マシンは、これまでレストアしたTE27カローラ・レビン、SB1シビック1200RSに加えて、スバルff-1 1300Gを新たにレストアし、3台体制で挑む。すでにマシンは2017年12月に船積みを終えており、メンバーたちは1月半ばに出発し、2週間に及ぶラリーを戦う。

豊国学園高等学校からインターンシップを受け入れ


Team 夢双でのトピックのひとつが、同プロジェクトとして初めて、高校生のインターンシップを受け入れたことだ。九州の豊国学園高等学校の高校生3名が夏季インターンシップとして1週間ほどこのプロジェクトに参加し、CADと3Dプリンターによる自動車パーツの作成などを担当した。



 
この日発表を行った参加メンバーの山中さんは、当初は自らの役割や担当業務についてイメージできなかったが、「すでに修理部品のなくなった古い自動車を修復して海外のラリーで1位を狙うというプロジェクトで、ものづくりの価値観を理解することで少しずつ周りが見え、自身の課題を知ることができた」という。そして、「東京大学の授業では、思考と能力を兼ね備えどうにかする力、ホンダ学園では、工夫と鍛錬のやりきる力が必要でした」と語り、「AIなどが発展している自動車のテクノロジーのなかでも、古い自動車により基本と構造を学ぶ意義や、グローバルな活動を行うこのプロジェクトのように固定観念や先入観を捨て、自分自身を前に出していきたい」とインターンシップで学んだことを発表した。

続いて、今回参戦する3台のドライバーとコ・ドライバーが発表された。1970年式のスバルff-1 1300Gが篠塚建次郎/仮屋重文、1972年式のTE27カローラレビンが久保雅俊/永井進、1975年式のSB1シビック1200RSが川﨑修司/川﨑ひとみ。各クルーが登壇し、参戦にあたっての感想を述べた。過去のプロジェクトで4回ステアリングを握っている篠塚は、「すでにマシンにも乗りましたが、とても乗りやすくいい感触でした。確実にミスなく走って、モナコでみんなで祝杯を挙げたいですね」と語った。





各メンバーが1年間の活動を報告


このプロジェクトでは、基本的にすべてを学生たち自身が行っており、部門を分けて得意な分野や自ら希望する分野について学業の合間にこなしてきた。





ホンダ学園側はマシンのレストアやオーバーホールなどを中心に担当し、ラリー中はサービスとしてマシン整備などにも携わる。こちらはボディ、シャシー、エンジン、電装という4つの部門に分かれているが、同プロジェクト参加メンバーは同じクラスに所属しているため、メンバー同士の関係構築も学校として準備されている。
 
ただし、今回初めてレストアしたスバルff-1は、水平対向エンジンやトランスミッション側に設置されたブレーキキャリパーなど、学生たちが学ぶ現在の自動車にはないような機構が多く、苦労することも多々あったという。ff-1の車検は9月末に設定していたが、4回落ちて5回目でやっと取得できたという。
 
リーダーの横瀬さんは、「本当に得るものが必ずあるような毎日でした。基本は毎日21時まで作業をして、最後の2カ月は日付を超えるような作業をしてきました」とここまでの活動を振り返った。10月からはシビックとレビンの2台のレストア&オーバーホールを始めたが、シビックの整備でトラブルが発生。「今回、ピストンを73.5φに拡大するためにシリンダー上部を削ったのですが、ヘッドを組んでみたところクランクが回転せず、ピストンがバルブに当たってしまうことが完成3日前の深夜11時半に判明しました。すでに加工済みのヘッドも使えず、結局予備のノーマルヘッドを組んだところ、思いがけずこれまでで一番吹け上がりのいいエンジンに仕上がりました」とレストアの苦労を語った。 
 
一方、東京大学側は、協賛企業集めや交渉を行う渉外部門、広報活動のひとつであるウェブサイトやSNSの運営、プロジェクト内で使うツールの管理などを行うWeb部門、ロゴや名刺、ステッカーなどを行うデザイン部門、現地でのサービスに関わるクルマやメンバーの組み合わせなどを担当するサービス部門、あらゆる予算の管理を行う会計部門、そしてマシンの改造やラリーコンピュータなどのラリーに必要な装備を作るものづくり部門の学生たちが、それぞれが担当した実務や実際に手を動かして行うなかで感じた苦労などを報告した。





リーダーの徳永さんは、ほぼ全員が初めての作業となったクルマの改造での苦労について語った。「自分たちでサスペンションを入れようとするとうまく入らないのですが、熟練のメカニックの方がやるとすぐにできるんです。簡単に見えることが難しく、それを簡単にするために工夫してきた先人の知恵の塊がクルマなのだということがよく分かりましたし、実際に工具を使って行うことの難しさを感じました。また、リーダーとしての非力さから、周りのやる気を持っている人たちのやる気を引き出すことが難しかったです。なあなあで仕事を進めてしまったり、サスペンドしたままになってしまうことなどもあり、根を詰めればできることが船積み直前になってしまったりもしました。ラリーまであと2週間、現地でもまだまだやるべきことが残っていますが、ラリーまでは必ずなんとかします」

最後に、報告会に集まった学生、クルー、協賛企業各社の方々で集合写真を撮影。徳永さんは、「本当に奇跡的な縁の巡り合わせで多数の方々にご支援いただいたので、助けてくださった方々に恩返しできればと思っています」とし、個人的な目標ながら、「第1期で草加/國正組が獲得した日本人最高位の総合43位を塗り替えたい」と力強く語ってくれた。

まだまだ様々な困難も待ち受けているが、結束を深めてきたTeam 夢双のメンバーの頑張りは、ラリー・モンテカルロ・ヒストリックできっと報われるだろう。2月7日のフィニッシュには、3台のマシンとともにきっと全員の笑顔が見られることを願いたい。