1月4日、全日本バレーボール高校選手権大会が東京体育館で開幕する。果たして、未来のバレー界を担う逸材は現れるのか。”春高バレー”に出場する男女の注目選手を紹介していこう。 女子で大会3連覇がかかる下北沢成徳(東…

 1月4日、全日本バレーボール高校選手権大会が東京体育館で開幕する。果たして、未来のバレー界を担う逸材は現れるのか。”春高バレー”に出場する男女の注目選手を紹介していこう。

 女子で大会3連覇がかかる下北沢成徳(東京)は、全日本男子のエースである石川祐希の妹で、2年生エースの石川真佑(まゆ)がチームを引っ張る。ここまで、インターハイと国体では頂点に届かなかったが、石川は「3連覇というより、目の前の試合に集中したい」と意気込んでいる。



前回大会で、1年生ながら優勝に貢献した下北沢成徳の石川真佑 photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 1981年からチームを指導する小川良樹監督は、174cmと小柄な石川の進化をこう評する。

「体力的なデータはすごく変化しています。特に、ランの記録は著しく伸びていますし、体幹もかなり強くなっていますね。ウェイトに関しても、スクワットもデットもベンチも20%くらいは記録が上がっています。これまでは、強い力を発揮するために自分の体を痛めているところがありました。ケガをしやすいというか、ずっと足のかかとに痛みがあったんですが、徐々に体が強くなってきたので、不安なく練習できるようになってきています」

 レシーブが課題とされてはいるが、その点について小川監督は「どの試合でも狙われますよね。木村沙織も、(東レアローズに入団した)黒後愛もそうでした。他のチームの皆さんに育ててもらっているんです」と、かつてのエースたちと重ね合わせ、大会期間中のさらなる成長に期待を寄せる。

 そんな下北沢成徳の連覇を阻み、6年ぶりの春高バレー制覇を狙うのは、インターハイ女王の東九州龍谷(大分)だ。2008年から春高バレー5連覇を成し遂げた強豪中の強豪は、インターハイとの2冠を目指す。

 攻撃の中心は、3年生でエースの中川美柚(みゆ)。183cmの長身で、バスケットゴールのリングをつかむことができる跳躍力を活かしたスパイクで得点を重ねる。トスを供給する比金有紀(ひがね/3年)もセッターとしては長身の174cmで、高い位置でトスを上げることで相手をかく乱することができる。このコンビが、相原昇監督が掲げる「相手の攻撃を半減させるくらい圧力のある攻撃を」というテーマを体現する。

 また、金蘭会(大阪)も優勝候補のひとつだ。バレー部の歴史は10年と短いが、現在アメリカ留学中の宮部藍梨が1年生エースとして大活躍し、2015年に春高バレーを制してからは高校バレー界の強豪校として走り続けている。インターハイでは初戦で敗れて悔しい思いをしたが、春高バレーへの切符は7年連続で手にした。

 金蘭会は、レギュラーの多くが全日本ユースや全日本ジュニアに選出されるなど、充実した戦力を有する。「誰が出ても勝てるチーム」という池条義則監督のモットー通り、レギュラー全員が注目選手と言っても過言ではない。なかでも、西川有喜(2年)、宮部藍梨の妹・愛芽世(あめぜ/1年)といった、強力なウィングスパイカー陣が繰り出す攻撃が見どころだ。

 それに対して、八王子実践(東京)は春高バレーでの”覇権奪還”を期す。大林素子や狩野舞子など、錚々(そうそう)たるOGの系譜を継ぐのは、2年生からエースとして活躍する東谷玲衣奈(とうこく・れいな/3年)だ。父がガーナ人、母が日本人のハーフで、最高到達点303cmと全日本女子平均を突破。世界ジュニア選手権でも活躍した逸材が、チームを1993年大会以来の優勝へ導く。


前回大会で優秀選手に選ばれた習志野の上條レイモンド

 photo by AFLO SPORT

 一方の男子は、21年ぶりにインターハイ王者となった鎮西(熊本)が2冠を狙う。チームをけん引するのは、U-19代表にも選ばれたキャプテンの鍬田憲伸(くわだ・けんしん/3年)と、水町泰杜(みずまち ・たいと/1年)のダブルエースだ。

 春高バレーでは、鍬田が1年生だった2016年に決勝まで進んだが、現在JTサンダースで活躍する金子聖輝(かねこ・まさき)擁する東福岡に屈した。昨年は初戦で習志野に敗れるなど悔しさを知る鍬田が、水町という強力な相棒とともにリベンジを誓う。

 前回大会でその鎮西を破った習志野(千葉)では、ナイジェリア人の父を持つ上條レイモンド(3年)に注目。身長195cmで最高到達点は345cmと、すでに全日本男子クラスの高さがある。

 バレーを始めたのは中学に入ってからだが、昨年にレギュラーとして起用されるようになるとポテンシャルが開花。U-19代表で経験を積んだことで、さらに成長を遂げた。3位まで躍進した前回大会を上回り、よりいい色のメダルをつかむため、”規格外の新星”はラストイヤーもがむしゃらに突っ走る。

 他では、昨年度に高校3冠を達成した駿台学園で、ウィングスパイカーとセッターをこなす”二刀流”の伊藤洸貴(3年)や、埼玉栄の197cmミドルブロッカー・関根ヒカル(3年)にも要注目だ。2011年から1月開催となり、3年生の”集大成の舞台”となった春高バレー。ここまでに挙げた選手の活躍はもちろんだが、新たな”金の卵”が生まれることも楽しみにしたい。