セレッソ大阪がJ1復帰1年目にして充実のシーズンを、二冠達成で締め括った。 元日恒例の天皇杯決勝。セレッソは横浜F…
セレッソ大阪がJ1復帰1年目にして充実のシーズンを、二冠達成で締め括った。
元日恒例の天皇杯決勝。セレッソは横浜F・マリノスを2-1で下し、優勝を果たした。日本リーグの強豪として知られた前身のヤンマー時代を除けば、これがクラブとしての天皇杯初優勝である。

勝負を決めた逆転ゴールを決めて喜ぶ水沼宏太(左から2人目)
試合は、キックオフの笛からわずか8分で先制を許す、セレッソにとっては苦しい展開でスタートした。
カップ戦決勝という一発勝負では、先制点が大きくものを言う。しかも、1本のパスで簡単にDFラインの裏を取られての失点とあっては、セレッソが受けたダメージは決して小さくなかったはずだ。
しかし、「得点の後、相手にボールをコントロールされすぎ、(自分たちが)下がりすぎた。ゲームをコントロールできていなかった」とは、F・マリノスのエリク・モンバエルツ監督。
セレッソは時間の経過とともに、ボールを支配し、攻撃時間を増やしていくと、65分にFW山村和也のゴールで同点に追いつき、延長前半の96分には、MF水沼宏太のゴールで逆転。「(先制を許し)F・マリノスに流れがあるなかで、ミスもあったが、慌てず戦えた」と、殊勲の山村が振り返ったように、セレッソは落ち着いた試合運びで、難しい試合をひっくり返した。
3年ぶりにJ1の舞台に戻ってきたばかりのセレッソだが、今季のJ1では3位に躍進。加えて、ルヴァンカップでクラブ史上初となるタイトルを獲得したばかりか、天皇杯も制して二冠を手にした。
セレッソは1995年のJリーグ参入以来、天皇杯で3度の準優勝を経験してきたのをはじめ、タイトルを取れそうで取れない時間を20年あまり過ごしてきた。ところが、ついにルヴァンカップ優勝で、”シルバーコレクターの呪縛”から解き放たれると、二度目の歓喜はわずか2カ月足らずで訪れた。
現在もプレーする柿谷曜一朗や清武弘嗣、あるいは香川真司など、優れたタレントを擁しながらも、これまではどこか図太さやたくましさに欠ける印象があったセレッソだったが、突如として勝負強い集団へと鮮やかな変貌を遂げた。準決勝、決勝と、2試合連続の逆転勝利で優勝を手にした天皇杯は、まさにその象徴だろう。
尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督が語る。
「チームとしてやろうとするプレーを、ひとりではなく、全員で表現できた。自己犠牲や献身、最後まであきらめずに戦うということが、体と精神に染みついたことが、勝利の原動力になったのではないだろうか」
セレッソが勝負強さを手にする過程、すなわち、尹晶煥監督が目指すサッカーをチームに浸透させる過程において見逃せないのは、この試合で決勝ゴールを決めた水沼の存在である。
今季から新たに指揮官に就任した尹晶煥監督とタイミングを一にして移籍加入した水沼は、サガン鳥栖時代にも同監督のもとでプレーした経験を持つ、いわば、尹晶煥監督の秘蔵っ子。常に足を止めず、ハードワークし続けられる背番号16が、セレッソの変貌に大きく影響していることは間違いない。
尹晶煥監督も「水沼選手は僕のことを知り尽くしているので、気をつける必要がある」と報道陣を笑わせた後、こんな言葉で水沼を絶賛する。
「2017年の1年間が順調だったのは、水沼選手がいたからと言っても過言ではない。彼は僕の考えを選手にうまく伝えてくれ、僕ができない仕事をしてくれた。このチームで何かを成し遂げたいという強い気持ちがあったのだろう」
水沼自身、「まずは自分が(実際のプレーで)体現することがわかりやすい」と、率先して指揮官が求めるハードワークに努めた。もちろん、はじめからすべてがうまくいったわけではない。水沼曰く、「リーグ戦でうまくいかないときは、先制されるとズルズル失点を重ねていた」。
しかし、だからこそ、指揮官も一目置くMFはチームの成長を実感するように、「今日(天皇杯決勝)は最後のところで体を張って守ることができたし、粘り強く戦えた。それはサッカーの基本だが、なかなかできないこと。それができたのは成長した部分なのかなと思う」と語ると、うれしそうな笑顔で続けた。
「こんなにうまくいくシーズンになるとは思わなかったが、チームの初タイトルから二冠獲得に関われてうれしい」
とはいえ、今季大きなブレイクスルーを遂げたセレッソの真価が問われるのは、来季以降のことだ。
近年、J1では昇格1年目のクラブが躍進するケースが少なくない。ところが、そうしたクラブの昇格2年目以降の成績はというと、ジリ貧傾向に陥ることがほとんどだ。
そうした悪しき前例は当然、韓国人指揮官の頭のなかにも入っているだろう。尹晶煥監督は「現役時代に取れなかった天皇杯を取れてうれしい」と、まずは二冠達成を喜びつつも、すぐにこう語る。
「すでに来季が1カ月後に控えている。早く休んで体を回復させ、来季への準備をしなければいけない」
充実のシーズンを今後の成長への足掛かりにできるかどうか。セレッソにとって本当の勝負は、これからである。