全国高校ラグビー大会がおこなわれる大阪・東大阪市花園ラグビー場の計3会場では、高校日本代表のセレクターが巡回している。

 その1人が「自分のなかでの理想のスタメンが変わったかも知れない。観に来てよかった」とつぶやいたのは、石見智翠館高のFW陣のパフォーマンスを見たからだろうか。

 島根から27回連続27度目の出場となる石見智翠館高は、12月30日、第1グラウンドでの2回戦からシード校として登場した。

 前半1、9分とモールでスコアして主導権をつかみ、28分には敵陣ゴール前左中間で相手ボールのスクラムをターンオーバーして加点。26-14とリードして後半を迎えた。終盤は過去5度優勝の大阪・常翔学園に33-33と同点に追いつかれたが、24分には攻め込んだ先での接点でモールを作る。勝ち越す。27分にもモールでだめを押した。

 モールの塊そのものはやや形崩れだった場面もあったが、個々がゴールラインへ肩を向ける姿勢が得点につながったか。

 身長190センチ、体重100キロの2年生LO、武内慎が芯となり、モールの仕留め役になったNO8の齋藤龍夜主将は身長179センチ、体重91キロの身体でラインブレイクでも魅した。身長183センチ、体重92キロのFL、柳川正秀もモール時に相手防御の壁となるなど、渋く光った。齋藤主将と武内はかねて高校日本代表候補でもあり、大会中のパフォーマンスが正代表入りへの選考基準のひとつとなりうる。

 試合後の会見中も、石見智翠館高のFW陣の強さを称える声が集まった。もっとも、当事者の実感は異なるか。歴史的には小柄な隊列を率いてきた安藤哲治監督は、今季、ある課題を抱えてきたという。

「チームとして大きなFWを持ったことがなかったので、正直、どうチームを作っていこうかが私もわからなかったというか…。(小柄な選手に身に付けてきた)ボールを動かす、ディフェンス時のリアクションといったところはきょうもまだまだだった」

 あちらが伸びればこちらが縮むといったジレンマを、味わっているようだった。一概には言えないが、地上戦でのしぶとさや俊敏性はサイズで圧倒できる大型選手よりも小柄な選手のほうが自覚的に身に付けんとする傾向がある。

 石見智翠館高は後半7分、敵陣中盤で右から左への展開でトライを奪っている。しかし指揮官は「それなりにつながっていましたが、まだ恐々とやっている。サポートにも走れていなかった印象でした」。口調は穏やかで、「FWは近場(接点付近)で勝負してくれた」と教え子を称えてもいる。ただ、周りの評価に左右されていないのも確かだ。

 ひたむきさを育み4強1回達成の石見智翠館は、2018年元日の3回戦で石川・日本航空石川(13年連続13回目の出場)とぶつかる。謙虚に挑む。(文:向 風見也)