西岡良仁インタビュー@後編世界14位のベルディヒを破ったときの西岡良仁 今年3月末、西岡良仁は前十字じん帯断裂の大ケガを負った。 当時21歳。世界14位(当時)のトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)をはじめ、多くのトップ選手を破る急成長の疾…

西岡良仁インタビュー@後編



世界14位のベルディヒを破ったときの西岡良仁

 今年3月末、西岡良仁は前十字じん帯断裂の大ケガを負った。

 当時21歳。世界14位(当時)のトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)をはじめ、多くのトップ選手を破る急成長の疾走のなかで遭遇した、本人いわく「完全な事故」であった。

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 それから、9ヵ月――。手術とリハビリやトレーニングの日々を経て、復帰の日を数週間後に控えた若者は、今、何と戦い、いかなる想いを抱いて実戦のコートに立つ日へと向かっているのだろうか。胸のうちを語ってもらった。

―― まずは復帰戦のプランを教えてもらえますか?

西岡良仁(以下:西岡) オーストラリアのプレイフォード開催のチャレンジャー(ATPツアーの下部大会)に参加します。これが1月1日開幕で、その後はクーヨン開催のエキシビション大会に出てから、全豪オープンです。

―― 術後に通達された「心配なくテニスができるようになる日」が今ごろ(12月上旬)だったと思います。最近は試合形式で練習しているのですか?

西岡 そうですね。もうけっこう前から……11月の中旬ごろからフルでやっています。最初のうちは、どれくらいできるだろうと思ってたんですが、思った以上に恐怖心もなくて。むしろコーチたちから、『もう少し抑えて』と言われるくらい(笑)。筋力や爆発力の不足というのもないですね。たぶん動きだけなら、周りから見たらケガしていたというのは、ほとんどわからないと思います。

―― 恐怖心がないというのは、自分では意外でしたか?

西岡 どうですかね。単純にポイント(試合形式の練習)を始めたら負けたくなかったので、自然とボールを取りたくて走っちゃいました。それで無意識に一回スライディングしたら、できるなって思って怖くもなくなりました。

―― 対戦相手がいて駆け引きも必要になるポイント練習になったとき、試合感覚という意味では違和感はありませんでしたか?

西岡 いや、もう全然ダメでしたね、最初は……。本当に、ボールをどこに打ったらいいか全然わからなくて。

 ラリーはできるんですが、ポイントになったときに……練習でのラリーって、自分の打ちたいところに好きなだけ打てるじゃないですか? でも実戦では、強く打っているだけじゃ意味ないですよね。いろんなボールが来るし、相手と駆け引きしなくてはいけないし。そのときに、ボールの緩急がつけられなくなったんです。緩急がつけられないので、単調になって、どうしたらいいのかわからなくなって……。

―― 相手がいても、最初はクリーンヒットすることに意識が行き過ぎたのでしょうか?

西岡 そうですね。打つことだけを気にしすぎちゃって、逆にポイントを組み立てる感覚がなくて。たとえば相手にいいコースに打たれたとき、以前の自分だったら強引に打ち返さず、まずはニュートラル(五分の状態)に戻そうとしていたと思うんです。でも、そんなときでも無理に決めにいっちゃったり……。ケガする前だったら負けないような学生の子たちにやられたりして……イライラもありましたね。『マジか!?』って。

 最初はフラストレーションがすごかったですね。理想というか、自分のなかにあったいいときのイメージとは全然違うので。試合とかで負けたら、やっぱりムカつくこともあるでしょうね。今まで負けなかった相手に負けたりしたら、イラッとしちゃうと思います。

―― そんな自分に少し安心するところもあったりしませんか? 負けず嫌いなところは失ってないなって。

西岡 そうですね……トレーナーの浜浦(幸広)さんも言ってましたね。僕が少しイライラしているのを見て、『やっぱ変わんないな、久々にこういう良仁を見た』って。

 そこはやっぱ変わらないですね。根本的なところは負けず嫌いだし、僕はそこを中心にがんばってきたんで。そこは変わらないです。

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