ここ3年の箱根駅伝の順位は8位、9位、6位と推移して、大学初となる「3年連続シード」を獲得。16年連続出場となる中央学院大学は、着々と”駅伝上位校”に成長してきた。 今季は、出雲駅伝の最終6区で福岡海統(かいと…

 ここ3年の箱根駅伝の順位は8位、9位、6位と推移して、大学初となる「3年連続シード」を獲得。16年連続出場となる中央学院大学は、着々と”駅伝上位校”に成長してきた。

 今季は、出雲駅伝の最終6区で福岡海統(かいと/3年)が脱水症状に陥り8位に終わったが、5区までは4位をキープ。全日本大学駅伝では、チームナンバーワンのスピードを誇る横川巧(2年)を欠きながら6位に入った。

 


5区区間賞の走りが期待される細谷恭平

 今回の箱根には、前回の往路で7位に入ったメンバーが全員残っている。5月の関東インカレでは、2部ハーフマラソンで細谷恭平(4年)が3位、市山翼(3年)が6位、大森澪(4年)が7位に食い込み、青山学院大、神奈川大など強豪校のランナーがひしめくなかで”トリプル入賞”を達成している。

 さらに、9月の日体大長距離競技会1万mでは横川が28分29秒12、大森が28分56秒06、 高橋翔也(1年)が29分02秒98、廣佳樹 (ひろ・よしき/3年)が29分08秒46、福岡が29分15秒89、市山が29分27秒97、有馬圭哉(2年)が29分28秒51をマーク。7人が29分30秒を切る自己ベストで走り、大幅な総合力アップを印象づけた。そして、全日本で初めて「2年連続シード」をゲットするなど、”過去最強”ともいえる戦力が整いつつある。

 こうなれば当然、箱根では上位を狙うかと思いきや、選手たちは意外にも「5位以内」という目標を掲げている。その理由について、主将・新井翔理(しょうり/4年)は、「僕らが1年時から、学生駅伝では『5位以内』という目標を立ててきたんですが、箱根だけは5位以内に入れていないので」と説明する。

 そもそも、川崎勇二監督が「優勝」を目指しておらず、そういう意味で極めて異質なチームといえる。

「選手層は厚くなってきましたけど、いわゆる”エース”がいないじゃないですか。箱根もミスがなければシード権(10位以内)は獲得できるでしょう。前回はデコボコでしたので、今回は全員が区間ひと桁の順位で走るような駅伝をしたいですね。とにかく故障と体調不良には気をつけて、いかにトレーニングを継続できるか。それを大切にしていきたいと思っています。優勝ですか? それは無理ですよ(笑)」

 川崎監督はそう話すが、1区~4区は経験者が残っており、復路も穴のないオーダーが組める。安定感のある1区の大森で流れに乗り、2区の高砂大地(2年)と3区の横川は前回の経験を生かした走りができるだろう。4区は前回区間11位の新井とともに、出雲(5区)と全日本(6区)を区間6位でまとめた、ルーキーの高橋が候補に挙がっている。

 このなかでは、全日本を欠場した横川に注目したい。

 ルーキーイヤーの昨季は出雲で1区(区間10位)、全日本で2区(区間8位)、箱根では3区(区間12位)を務めた。今季はふくらはぎ痛でトラックシーズンに活躍できなかったものの、9月の日体大長距離競技会1万mで今季の日本人学生6位となる好タイムをマーク。出雲(2区/区間4位)の後に左ふくらはぎの痛みが再発したが、全日本後の富津合宿で練習を再開した。

「本当は1区が希望なんですけど、大森先輩は絶大な信頼があるので、正直、厳しいと思っています。でも、3区も自分にすごく合っているコース。前回は18kmまで区間賞を狙える位置にいたんですけど、湘南大橋から動かなくなりました(笑)。終盤のペースアップを課題に、ラスト3kmから切り替えて区間賞が獲得できるように練習していきたいです」

 そして、何より楽しみなのが、2年連続で5区を走ることが濃厚の細谷だ。

 昨季は夏に右中足骨を疲労骨折した影響で、出雲と全日本は欠場。実戦的なトレーニングができるようになったのは12月に入ってからだったにもかかわらず、箱根では区間3位と好走した。今季は全日本でアンカーを務めるなど、前回と比べて状態はすこぶるいい。順当にいけば、”山上り”を制する可能性は高いだろう。

「みんなには『区間賞を狙えよ』とか言われますけど、自分のなかでは、まだ大きなことを言える選手ではないと思っています。区間賞を狙うのではなく、自分の出せる力を出し切ることが目標です。それは毎回思っていることで、その結果として区間賞などの結果がついてくればいい。それに、駅伝なので個人よりもチームの目標を達成したい。箱根は『5位以内』が目標なので、それを念頭に置いて、自分の力を出し切るだけです」

 細谷の前回の区間タイムは1時間13分08秒。今季の状態を考えれば大幅なタイム短縮が可能なはずだが、本人は「最低でも1時間12分台では走りたいと考えています。目標が低い? いや、自分のなかでは高いと思っていますよ」と笑顔で答えた。

 6区にも区間歴代4位のタイムを持つ樋口陸(3年)がおり、山での爆発力はナンバーワンといっていい。4区までを粘ることができれば、トップ争いに加わるチャンスは十分にある。目標の「5位以内」どころか、欲張らないチームが箱根に旋風を巻き起こすかもしれない。