2017年シーズン、柏レイソルは、波のある戦いではあったものの、リーグ戦4位、天皇杯ベスト4、というまずまずの成績…
2017年シーズン、柏レイソルは、波のある戦いではあったものの、リーグ戦4位、天皇杯ベスト4、というまずまずの成績で終えている。

天皇杯準決勝を戦う大谷秀和(柏レイソル)。横浜F・マリノスに1対2で敗れた
リーグ戦の序盤は苦しみ、2勝4敗と低迷した。しかし、そこから10試合負けなし(9勝1分け)という猛然とした巻き返しを見せて優勝争いに顔を出している。第17、18節で鹿島アントラーズ、セレッソ大阪との上位対決に連敗し、首位争いから遠ざかるも、再び9試合負けなし(5勝4分け)。そこから2敗と調子を崩して勝ち点を落としたが、最後の5試合は再び負けなしでフィニッシュした。
柏が最後まで優勝争いをするには、何が足りなかったのか?
「優勝を意識するのが早すぎました。リーグはまだ半分のところだったですからね」
そう説明するのは、柏の主将、大谷秀和である。レイソル一筋15年のMFはこう続けている。
「8連勝、9連勝というのは、もちろん自分たちが出した結果ではあったと思います。日々のトレーニングがうまく出て、(中村)航輔が1試合に2、3度、ビッグセーブを見せたのはあったにせよ、チームとして戦い方を共有していました。でも、できすぎの部分もあったと思います。そこで周りが(優勝争いと)騒ぎ出し、『代表にこの選手を』とか持ち上げるようになって……。そこで選手は地に足をつけるべきだった。
一番大事なのは、最後に上に立っているか。やっぱりメンタルのところで、チーム全体として脆さはありました。例えば、先にやられて落ち込んでしまうとか、負けて引きずるとか」
若さが出たことが、波の大きさにつながっていたのだろう。一方で、若手が充実してきたことも事実だ。
GK中村航輔は2017年のJリーグベストイレブンに選ばれている。抜群の反応で、いくつもの決定機を防いできた。大崩れせず、チームとして巻き返すことができたのは中村のおかげだろう。
左利きのボランチ、手塚康平も鮮烈なインパクトを与えた。ケガでシーズン半ばに長期離脱を余儀なくされたが、ボールを持って失わず、動かせる選手で、ポジション取りも巧妙だ。左足で持てるだけに、ボールの周りに多様性が出て、おかげで右サイドの伊東純也は翼を得ていた。
「若い、と言われてきた選手たちも、1年、2年と主力でプレーすることで、着実に力をつけてきたと思います」
Jリーグではあらゆるタイトルを手にしてきた大谷も、成長の手応えを感じているようだった。2018年シーズンに向け、チームがさらに飛躍するには、成長した若い力を結集するしかない。
「ひとりひとりがリーダーシップを持てるか、は課題ですね。若手がもうひとつ殻を破れるか。例えば(伊東)純也はあのスピードで仕掛けられるんで、敵としてはすごく嫌だったと思いますよ。ただ、これだけ活躍したら、来シーズンは相手も必ず対策を講じてくると思います。これまで1人で突破できていたところが難しくなったりする。そうした試合を戦うなかで、もう一個上の怖い選手になれると面白いですね」
クラブも補強に動いている。センターバックは中谷進之介、中山雄太の若手2人が不動で、2人ともさらなる成長を見込める。しかし、終盤のパワープレーに屈したシーンも少なくなかった。そこで、「高さ、強さのあるタイプも」とセンターバックの獲得候補をリストアップ。中山は20歳でヤングプレーヤー賞を受賞するなど、貴重な左利きの選手だが、競争相手が出現することによってグレードアップできるはずだ。
また、柏が上位にいた時代を考えると、トップ下で「魔法の杖を振れる」選手が必要かもしれない。2011年にJ1優勝をしたときは、レアンドロ・ドミンゲスが1本のパスでチャンスを創り出せた。武富孝介、中川寛斗というセカンドストライカータイプはいるが、閃(ひらめ)きとスキルのある選手がカードとしてチームにいれば、攻撃はより完成に近づくはずだ。
現有戦力だけでは太刀打ちできないというわけではない。マイナスを埋めようとすると、逆に失われるものもある。しかし、プロクラブとして競争力を上げる必要はあるはずだ。
「ネルシーニョの時代は勝負へのこだわりが徹底していましたね」
大谷は2010年から2013年シーズンまで、柏が毎年タイトルを勝ち取った時代を振り返った。
「目の前のバトルからして、『そこで覚悟を見せろ』と焚きつけられて。サブの選手もギラギラして、練習からバチバチといくのに、試合になるとみんな結束していました。うかうかしていると代えられるという危機感があった。それぞれが戦っていましたね。
結局、タイトルを獲れていたのは、そういうところの勝負強さだったと思います。例えば(ジョルジ・)ワグネルはここっていうときにパワーを出せた。決勝とか、頑張らないといけないところを知っていましたよ」
若さが熟するその瞬間。柏は真の強さを得られるはずだ。