私事で恐縮だが、毎年、野球の取材現場の最後は松山(愛媛)と決めている。翌年の国際大会の主力となる大学ジャパン候補た…

 私事で恐縮だが、毎年、野球の取材現場の最後は松山(愛媛)と決めている。翌年の国際大会の主力となる大学ジャパン候補たちが一同に集結するからだ。今年も全国の大学リーグから推薦を受けた50人の選手たちが集まり、3日間の合宿が行なわれた。

 午前中にシートノック、バッティング練習が行なわれるのだが、選手たちにとって最大の”アピールの場”となるのが紅白戦だ。代表入りに向け、ここでどんなプレーを見せられるかが重要になってくる。

 当然、代表候補のなかには、2018年ドラフトの主役になりそうな逸材が数多くいる。その中から、まずは投手を紹介したい。



今年秋のリーグ戦で完全試合を達成した関西大の山本隆広

 東京六大学の代表が法政大の菅野秀哉(かんの・しゅうや/3年/右投右打/福島・小高工)なら、東都大学の代表は東洋大の甲斐野央(かいの・ひろし/3年/右投左打/東洋大姫路)だ。

 この秋、法政大のエースとして4シーズン目を迎えた菅野には、徐々に”エースの貫禄”が漂ってきている。ゆったりと自分のリズムで投球動作に入り、自然の流れで腕を振り下ろす。

 菅野のいいところは、無理に速いボールを投げようとしないことだ。だから、スコアボードの球速表示など、まったく見向きもしない。とにかく「打者の間合いでスイングさせないこと」を第一に考えたピッチングは、野球的精神年齢の高さを感じさせる。

 一方、甲斐野は持っているエンジンの大きさが頼もしい。今年秋のリーグ戦で150キロをマークしたというから、素材は間違いなく一級品。ただ、菅野に比べるとまだピッチングにあどけなさが残る。

 紅白戦で、高めに抜けたフォークを近畿大の2年・竹村陸にスタンドインされるシーンがあったが、1球に対する用心深さが今後の課題か。それでも後続を150キロ近いストレートで追い込み、最後はしっかり外角低めにフォークを落として連続三振。あらためて潜在能力の高さを見せつけた。

 この合宿中に”フォーク”で光ったのは、立命館大の山上大輔(3年/右投左打/立命館宇治)だった。

 1年先輩にこの秋のドラフトでDeNAから単独1位指名された東克樹がいて、1学年下にはこの春に156キロを投げた福島滉貴がいる。いわば日常がサバイバルの山上にとって、こうした舞台はお手のものだ。

 山上のピッチングは、とにかく追い込んだらフォーク。打者の手元で急に鋭く落ちるため、フォークとわかっていてもバットに当たらない。立て続けにフォークで3つの空振り三振を奪ってみせた。

 この山上と同じ関西学生リーグに所属する関西大の山本隆広(3年/右投左打/大阪・桜宮)は、140キロ台後半のストレートを中心とした投げっぷりのよさが持ち味の投手だ。

 この投手、腕がしなるというよりも、肩がしなり、ヒジがしなり、手首までもしなって、なかなかボールが離れない。この球持ちのよさが力のタメをつくり、リリースで一気に素晴らしい爆発力を生む。まさに、唸(うな)るようなストレート。

 正真正銘のオーバーハンドなのに、ホームベース上でホップしているような球質。身長172センチと大きくないが、これだけ球持ちがよければ、打者は見た目以上に角度を感じているに違いない。投手にとって角度とは、身長が生むものではなく技術が生み出すものだ。山本のピッチングがそれを証明している。

 ところで、代表候補合宿には毎年、「どうして僕が呼ばれたのか……正直わからないです」といったテンションでやってくる選手がいる。しかし、そうしたなかにも”掘り出し物”がいるから面白い。

 今年でいうなら、九州共立大の島内颯太郎(3年/右投右打/福岡・光陵)がまさにそれ。全国的にはまだまだ無名の存在だが、とにかく腕の振りが素晴らしい。球速も145キロ前後がきちんと続くなど、スピードにブレがない。フォームとリリース感覚が常に一定している証拠だ。

 こういう投手はコントロールに破綻が少なく、小さく横にキュッと滑るスライダーに、落差の大きいフォークも絶妙のコースに投げ込んでくる。プロでも即戦力として使える逸材だ。

 近年、大卒投手の活躍が目覚ましいプロ野球。スカウトたちも大学生投手に大きな期待を寄せている。当然、今回紹介できなかった大学生のなかにも、来年の上位候補はまだまだいる。他にも来年のドラフトの主役となるような選手は現れるのか。2018年の大学野球に期待したい。