ここ数年、青学大の独壇場となっていた学生駅伝だが、東海大が出雲駅伝を制し、神奈川大が全日本大学駅伝を制したことで”戦国時代”に突入した。2018年の箱根駅伝を「三つ巴の戦いになる」と予想する声も多いが、前回10…

 ここ数年、青学大の独壇場となっていた学生駅伝だが、東海大が出雲駅伝を制し、神奈川大が全日本大学駅伝を制したことで”戦国時代”に突入した。2018年の箱根駅伝を「三つ巴の戦いになる」と予想する声も多いが、前回10位までに入りシード権を獲得した各大学も戦力を整えてきている。果たしてどの大学が優勝争いを演じることになるのか、注目選手と戦力をチェックしていこう。

※紹介は前回大会の総合結果順



出雲で2区の区間記録を更新するなど、好調な4年の田村和希 photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

青山学院大学

田村と下田を軸に、史上6校目の4連覇にチャレンジ!

 昨季は「箱根3連覇」&「学生駅伝3冠」を達成するも、今季は出雲2位、全日本3位と苦戦。箱根の4連覇に黄色信号が灯っている。

 “花の2区”に不安があるものの、出雲で5人抜き、全日本で4人抜きを演じた3区候補の田村和希(4年)で急上昇が可能。前回5区の貞永隆佑(4年)が登録から外れたため、8区で2年連続区間賞の下田裕太(4年)を山上りに起用する方針を固めつつある。

 前回1区(区間4位)の梶谷瑠哉(3年)、同4区(区間2位)の森田歩希(3年)、ユニバーシアード代表の鈴木塁人(2年)も往路候補だ。6区には2年連続で区間2位と快走した小野田勇次(3年)が控えているだけに、復路を”山下りの神”で抜け出して、そのまま逃げ切りたい。



出雲、全日本でともに区間2位の走りを見せた3年の山本修二 photo by Association Japan de la Presse Sportive/AFLO SPORT

東洋大学

全日本の前半で見せた”爆発力”を再現してトップ3入りを!

 今季は出雲と全日本で5位。出雲は3区の山本修二(3年)でトップ争いに加わり、全日本は1区の相澤晃(2年)で抜け出すと、6区途中までトップを快走して存在感をアピールした。

 箱根では1区に相澤、2区に山本が起用されることが濃厚。日本インカレ1万m日本人トップの西山和弥(1年)、全日本2区で区間2位の渡邉奏太(2年)も往路につぎ込み、攻めのレースを見せるだろう。

 前回9区で区間賞を獲得した野村峻哉ら、箱根を経験した4年生3人がエントリーから外れたため、復路には不安が残る。その一方で、全日本8区を区間4位と好走した吉川(1年)など、登録者16人中に2年生以下が12人も入った。フレッシュなメンバーで伊勢路の”爆発力”を再現し、10年連続となる「3位以内」を目指す。



前回の5区を区間4位で走った4年の安井雄一 photo by AFLO SPORT

早稲田大学

箱根は得意な”山”で勝負する!

 出雲9位、全日本7位と厳しい戦いが続いているが、適材適所のメンバーが揃う箱根では虎視眈々と「総合優勝」を狙っている。

 チームにとって最大の攻撃ポイントとなるのが”山”だ。3年連続の5区が濃厚な安井雄一(4年)は区間賞候補のひとりで、区間記録(1時間12分46秒)を上回る「1時間12分切り」を目標としている。

 前回6区の石田康幸(4年)も、関東インカレのハーフで5位に入るなど力をつけた。今季は度重なるケガに苦しんできた永山博基(3年)も調子を上げており、再び2区で起用される予定だ。

 上尾ハーフで自己新の藤原滋記(4年)、今季急成長した太田智樹(2年)、スピードのある新迫希志(2年)も往路候補。狙い通りに山でトップを奪えるか。



昨年はリオ五輪3000m障害にも出場した3年の塩尻和也 photo by AFLO SPORT

順天堂大学

塩尻&栃木のWエースでトップ争いに参戦!

 3000m障害でリオ五輪に出場した塩尻和也(3年)と、前回は4区区間賞を獲得した栃木渡(4年)のWエースが強力。

 今季は、1万mで塩尻が日本人学生歴代4位となる27分47秒87を、一方の栃木も今季日本人学生ランキング3位となる28分19秒89をマークするなど、さらに飛躍した。

 塩尻は3年連続の2区が濃厚で、日本人では過去3人しかいない「1時間6分台」を目指している。栃木が1区に入ることになれば、序盤でトップを奪うことも可能。

 5区には前回区間5位と好走した山田攻(3年)も控えており、山でも順位アップが期待できる。復路を踏ん張ることができれば、総合優勝を果たした2007年以来のトップ3も見えてくる。



前回の2区を制した4年の鈴木健吾 photo by Association Japan de la Presse Sportive/AFLO SPORT

神奈川大学

2区鈴木健吾でリードを奪い、20年ぶりの優勝へ突き進む!

 前回は12年ぶりのシード権獲得となる5位。今季は全日本で20年ぶりの優勝を飾っている。

 特に、前回2区で区間賞を獲得した鈴木健吾の走りに注目が集まっており、今回は2区で日本人最高記録(1時間6分46秒)の更新を狙う。

 1区は1万mの神奈川大記録(28分25秒27)を持つ山藤篤司(3年)が有力。1区、2区の”爆発力”はナンバーワンといえるだろう。序盤で奪ったリードを、1万m28分台の鈴木祐希(4年)や大塚倭(4年)、全日本5区で区間賞を獲得した越川堅太(2年)、5区を希望している荻野太成(2年)らで死守できるのか。

 チームの目標は「往路優勝」。アンカー鈴木健吾で逆転した全日本とは逆の展開で、20年ぶりの総合Vにもチャレンジする。



5区区間賞の期待がかかる4年の細谷恭平 photo by YUTAKA/AFLO SPORT

中央学院大学

5区細谷の激走でサプライズを巻き起こせ!

 学生駅伝は昨年度の出雲から4位、5位、6位、8位、6位と安定している。

 今回の箱根には前回のメンバーが8人も残り、特に、5区を区間3位で駆け上った細谷恭平(4年)の快走が期待される。前回は夏に右中足骨を疲労骨折。実戦的なトレーニングは12月に入ってからにもかかわらず、区間記録(区間賞)とは22秒差だった。今回は状態が良好のため、区間賞争いの筆頭といえるだろう。

 他にも、1区のスペシャリスト大森澪(4年)、6区で区間歴代4位の記録を持つ樋口陸(3年)、1万mでチーム最速タイム(28分29秒12)を持つ横川巧(2年)、前回2区を担った高砂大地(2年)と粒揃い。

 4区終了時で好位置につけることができれば、チーム目標の「5位以上」が見えてくる。



1万mでチームトップのタイムを持つ4年の小町昌矢 photo by AFLO SPORT

日本体育大学

総合力で70年連続出場の節目を飾れ!

 2年続けて6区の区間新記録を打ち立てた秋山清仁(現・愛知製鋼)が卒業。流れを変えられる”大砲”はいないが、出雲では強豪校を差し置いて3位に食い込み、学生駅伝では14年の箱根以来となるトップ3に返り咲いた。

 4年生の選手層が厚く、前回3区で4位の吉田亮壱、同5区で9位の辻野恭哉、同7区で2位の城越勇星、いずれも1万m28分40秒台を持つ小町昌矢、富安央と好選手が揃う。

 加えて、中川翔太ら2年生も力をつけてきた。過去2回の箱根は序盤で出遅れながら、「6区秋山」で急浮上して7位を確保したが、今回は序盤から好位置につけて”総合力”で勝負する。70年連続70回目の出場をどんな順位で飾るのか。



今季にエースへと成長を遂げた3年の坂東悠汰 photo by AFLO SPORT

法政大学

坂東、青木、佐藤の3本柱で12年ぶりの連続シードへ!

 前回は3年生以下の6人が区間ひとケタ順位で走破し、4年ぶりのシード権獲得となる8位に入った。

 今季は選手層が厚くなり、12年ぶりとなる「連続シード」への機運が高まっている。

 前回1区を9位と好走した坂東悠汰(3年)が日本インカレ5000mで4位に食い込むなどエースに成長。今回は2区が有力で、坪田智夫駅伝監督が持つ法大記録(1時間8分16秒)をターゲットにしている。

 関東インカレ3000m障害を制した青木涼真と、前回6区を区間3位と好走した佐藤敏也の2年生コンビが山を担う予定で、区間上位に入る可能性が高い。復路は安定感のある選手が控えているだけに、3区、4区の踏ん張りが連続シードのポイントになりそうだ。



ユニバーシアードで金メダルを獲得した3年の片西景 photo by AFLO SPORT

駒澤大学

ユニバーシアード金・銀コンビで「3位以内」を目指す!

 前回は9位に沈み、今季の前半戦も振るわなかった。

 しかし、今夏のユニバーシアードで片西景(3年)と工藤有生(4年)がハーフマラソンで金・銀メダルを獲得。1区で13位と出遅れた出雲は7位に終わったものの、「1区片西、2区工藤」とWエースを序盤に起用した全日本は4位に食い込んだ。

 多くの箱根出場校のランナーが参戦した上尾ハーフでも、片西と伊勢翔吾(3年)が日本人ワン・ツーを飾るなど、チームの調子は上向いている。箱根でもユニバのメダルコンビで”先制攻撃”を仕掛かけたい。

 5000mと1万mでチーム2番目の記録を持つ下史典(3年)、全日本6区区間賞の堀合大輔(3年)ら脇を固める戦力もアップしており、「3位以内」は十分に射程圏内だ。



逸材揃う2年生の中でエースを担う關颯人 photo by AFLO SPORT

東海大学

「世界」を見据えるスピード軍団が、箱根路を疾走する!

 持ち味のスピードを生かし、出雲では10年ぶりに優勝をさらった。

 全日本は最終8区で神奈川大に逆転を許したものの、エントリー選手上位10名の平均タイムは5000m、1万m、ハーフのすべてでトップに立つ。特に2年生には、1万m28分17秒52の鬼塚翔太と同28分23秒27の關颯人、日本選手権1500m優勝の館澤亨次ら逸材が揃っている。

 選手層が厚いチームだけに様々な区間配置が考えられるが、2区は關と川端千都(4年)、5区は春日千速(4年)と松尾淳之介(2年)、6区は中島怜利(2年)と館澤が候補に挙がる。

1区が有力な鬼塚で勢いに乗り、スピードを生かした駅伝で、初の総合優勝へ突っ走りたい。

(次回、予選会突破チーム編につづく)