フィジカリティに長けた走者がひとたび突破口を開くと、左右にボールを動かしながらあっという間に数的優位を作る。帝京大は、流経大の戦士たちを何度も置き去りにした。

 なかでも最後尾の尾崎晟也副将は、2人のタックラーの間へ切れ込んでのオフロードパス、サインプレー時のラインブレイク、防御の裏へのキックなどでチャンスメイク。身長174センチ、体重85キロのFBは、この日も素早くスペースを見つけて攻略するという無形の力を発揮した。

 12月23日、東京・秩父宮ラグビー場。関東大学対抗戦Aを7季連続で制していた帝京大は、9連覇を目指す大学選手権に準々決勝から登場していた。最終スコアを68-19とし、1月2日の準決勝にコマを進めた。

 もっとも当事者たちは、会心の勝利に満足していない。例えば尾崎副将はこうだ。

「プレーのところは、細かいところ(精度)、コミュニケーションの部分をもう一回、高めたいと思います」

 特に28-14で終えた前半は、連続攻撃を受けた時の防御の連携をやや乱した。最後尾での感触は「ポジショニングが遅れていた」と芳しくなかったようだ。

「いいところに立てば、皆、いいタックルを持っている。まずは(倒れてから)早く立つように修正していきたい」

 11月下旬までに対抗戦の日程を終えていたチームは、約1か月ぶりの実戦で足踏みしたか。1年時からレギュラーだった尾崎副将は、リーダーとしてこんな反省点を見出したという。

「ゲームが空いていたということもありますし…。前半はどこか緩さ、では、ないですが、甘さがあったのではないかと思います。自分自身、そう感じてはいたのですが、前半のうちに変えることができなかった。次のゲームではスタートからバチッとした帝京大を出せるよう、練習からやっていきたいです」

 対抗戦期間中も苦しんではいた。夏合宿中に82-0で大勝していた早大には一時リードを許し(10月28日/秩父宮 〇40-21)、その早大との直接対決で競り合った慶大には31-28と辛勝(11月5日/神奈川・ギオンスタジアム相模原)。その後は対抗戦2位となる明大に41-14で勝つなど好試合も演じているが(11月18日/神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場)、この先の高値安定の実現には何が必要なのだろうか。

 その要素に、尾崎副将は「練習の本気度」を挙げた。ここでの「本気」とは、常に落ち着いて集中しているさまを指していよう。

「いつも練習は本気でやっているんですけど、ひとりひとりにゲームが空いていること(での違和感)、プレッシャー、緊張もあるかもしれない。そこで、いかに個々をゲームに合わせてバチッと持っていけるか…」

 日々の鍛錬の先で、充実した心技体を本番のフィールドへ「バチッ」と提出し続ける。尾崎はそれを当たり前のようにやってきたのかもしれないが、常勝集団のメンバーとて全員がそうできるとは限らないのだろうか。自分ではない人間に自分と似た気持ちを抱かせるのは容易ではない。その現実に、尾崎副将は向き合っている。

「ひとりひとり、マインドの作り方も違います。もっとリーダーとして、個人個人が持ってきたマインドをまとめられるようにしたいです」

 今度の準決勝では、前年度まで2季連続でファイナルを演じていた東海大と対峙。強敵とのカードを前に、王者は自分たちとの戦いに挑んでいる。(文:向 風見也)