12月17日、「天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権」のファイナルラウンド準々決勝が行なわれ、男子はパナソニックパンサーズ、豊田合成トレフェルサ、東レアローズ、ジェイテクトSTINGS が、女子はデンソーエアリービーズ、東レアローズ、NECレッドロケッツ、トヨタ車体クインシーズがそれぞれベスト4進出を決めた。



社会人1年目から活躍する東レアローズの黒後愛

 準々決勝の最大のサプライズは、女子の大会6連覇がかかっていた久光製薬スプリングスが姿を消したことだろう。デンソー相手に2セットを連取され、そこからフルセットに持ち込む意地を見せたものの、最後は一歩及ばなかった。新鍋理沙、石井優希という全日本の主力選手を擁する久光製薬は、ここまでVリーグで15戦無敗。大会6連覇も確実視されていたが、デンソーのサーブと粘り強い攻撃に屈した。

 効果的なサーブとスパイクでデンソーの勝利に貢献した、こちらも全日本代表の鍋谷友理枝は、「サーブをしっかり打っていこうとチームで決めていました。第1、第2セットは攻めるサーブが打てたんですが、第3セットは緩くなって(セットを取られて)しまいましたね。でも、今季に久光と対戦するのは3度目で、『3度目の正直だ』とみんなで声をかけ合っていたので、それが実現できてよかったです」と振り返った。

 そのデンソーと準決勝を戦う東レは、復活を遂げた栗原恵が所属する日立リヴァーレに3-1で勝利した。この試合では、東レ注目のルーキーである黒後愛に日立のサーブが集中し、時にはサービスエースを献上してしまう場面も。しかし、黒後はサーブレシーブで崩されても決して慌てず、スパイクでミスを取り返すなど新人らしからぬ落ち着きを見せた。

 さらに、自身のサーブでは”お返し”とばかりに相手のレシーブを乱し続け、第2セットをサービスエースで締めくくっている。1年目の選手として十分な活躍をした黒後だが、試合後には反省ばかりが口をついた。

「チームとしては、1セットを落としてしまったんですが、第4セットをしっかり取り切れてよかったです。でも、個人的には何もできませんでした。レセプション(サーブレシーブ)は、Aパス(セッターが動かずトスが上げられる位置へのパス)があまりなかったので納得していません。攻撃面では、セッターの(白井)美沙紀さんが、ブロックを1枚や1枚半にしてくれたのになかなか決めきれなかったので、そこできちんと点を取れるようにしたいです」

 また、初めての出場となる天皇杯・皇后杯のファイナルラウンドについては、「高校生の時は予選には出たんですけど、ファイナルラウンドには進めなかったんです。この大会は高校生から社会人まで幅広い年齢の選手が出るので、すごく楽しみにしていました。今日は自分が納得できるプレーがあまりできなかったので、準決勝からはチームにプラスになるプレーや動きができるように頑張ります」と、さらなる奮起を誓った。

 名門・下北沢成徳のエースとして春高連覇を達成し、全日本や東レのエースとして君臨してきた木村沙織の後継者として注目を集めている黒後。社会人1年目ながらVリーグでは全試合でスタメン出場を果たしているが、高校時代との「速さ」の違いに苦戦中だという。

「自分たちの攻撃では、もともと速いトスが苦手なわけではなかったんですけど、速いトスの中でも高さを出したり、セッターと合わせないといけなかったりする場面がいっぱいあるので、工夫できることはないかと模索しているところです。相手の攻撃への対応も、コンマ何秒か遅れるだけで変わってくる世界です。ディグ(スパイクレシーブ)をきっちり上げるための動きや位置取り、その前のブロックも含めて、もっと考えて動かないといけないと思っています」

“パワーバレー”で知られる下北沢成徳では、高く上がったトスを強く打つことで得点を重ねてきた。黒後は、記者からの「たまには速いトスではなく、以前のように思い切り打ちたくなりませんか?」との質問に、「なります!」と笑顔で即答した。それでも、「社会人ではブロックが高いですし、どんな攻撃が最も効果的かが大切なので、速いトスを頑張って打ちます。トスが速くても、自分の高い打点で打てるようにしていきたいです」と力強く語った。

 反省を力にして成長を続ける黒後については、全日本女子の中田久美監督も「対応力がすごい」と太鼓判を押す。デンソーとの準決勝では、独特なフォームから繰り出される鍋谷の変化の大きいサーブや、久光製薬を破ったチームの勢いをはねのけられるかがカギとなるだろう。黒後の真価が問われる注目の一戦は、12月23日に大田区総合体育館で行なわれる。