メキシコのウインターリーグに参加していた楽天のオコエ瑠偉が12月早々に帰国した。例年、ウインターリーグに参加する日…
メキシコのウインターリーグに参加していた楽天のオコエ瑠偉が12月早々に帰国した。例年、ウインターリーグに参加する日本人選手は、シーズンをまっとうすることなく、年内で引き上げてくることが多いが、オコエの場合は自らシーズンを終えたのではなく、球団からリリースされた。つまり、クビを言い渡されたのだ。
昨年は松坂大輔もプエルトリコのリーグに参加するなど、中南米のウインターリーグは武者修行の場としてすっかり日本の野球ファンにもおなじみとなった。最近ではオーストラリアでもリーグが復活し、日本からも西武、巨人、ソフトバンク、阪神、楽天、オリックスが選手を派遣している。

昨シーズン、松坂大輔がプレーしたヒガンテス(プエルトリコ)の本拠地ロベルト・クレメンテ球場
また、台湾でもアジア・ウインターベースボールというリーグが生まれ、今年は日本からウエスタンリーグ選抜、イースタンリーグ選抜のプロ2チームに、社会人野球選抜の計3チームが参加。
このリーグはいわゆる”教育リーグ”で、日本の3チームに加え、台湾プロ野球選抜、韓国プロ野球選抜、米国&欧州混成チームの計6チームがリーグ戦を行なう。言ってみれば、宮崎フェニックスリーグや、アメリカで言うところのアリゾナ・フォールリーグ(※)に相当する。
※メジャーの各球団がプロスペクト(有望株)を出し合い、混成チームをつくって実施
一方、中南米やオーストラリアのウインターリーグは”教育リーグ”とは違い、各都市にフランチャイズを持つ球団がリーグ戦を行なう本格的なプロ野球だ。選手のほとんどは、春から秋にかけての本シーズンは北米やアジアなどのプロチームと契約しているが、ウインターリーグはそれらの所属球団から派遣されるのではなく、選手が個別に契約を結んでいる。したがってドラフトも存在し、解雇やトレードも当然のように行なわれる。
日本の球団と提携し、選手を受け入れているプエルトリコやオーストラリアのリーグでは、多少の”忖度(そんたく)”もあって派遣された選手をむげにクビにするようなことはないが、それでも不振ならばアクティブ・ロースター(ベンチ入り選手枠)から外されることもある。
ちなみに、昨年の松坂や、一昨年にドミニカのウインターリーグに参加した筒香嘉智(DeNA)、このオフにメキシコリーグでプレーしていた乙坂智(DeNA)は、球団からの派遣ではなく現地の球団と個別に契約を結んでいる。そこで気になるのが、彼らはウインターリーグでどれぐらいの報酬をもらっているのかということだ。日本の契約更改でもなかなか本当のところはわからないものだが、私の知る範囲で、ウインターリーグのマネー事情を探ってみたい。
当然のことだが、各リーグのレベルは選手の報酬の多寡と連動している。治安の良さから、日本の球団が若手選手の派遣先として好むオーストラリアだが、野球のレベルは決して高くなく、当然報酬も低い。メジャー球団もプロスペクトを派遣するようなことはなく、1A級のアメリカ人や野球経験の浅いヨーロッパ出身の選手の多くがここでプレーしている。
映画『ミリオンダラー・アーム』のモデルとなったインド人投手のリンク・シンや、今やニューヨーク・ヤンキースの主力となったカリブ系オランダ人のディディ・グレゴリウスも、かつてこのリーグでプレーしていた。
オーストラリアのウインターリーグの報酬だが、2013年のアジアシリーズで優勝したキャンベラ・キャバルリーのチーム総年俸が4万7000ドル(約530万円)というから、これをベンチ入りの登録人数(26人)で割ると、ひとりあたりの報酬は約20万円。シーズンは3カ月ほどだから、月給にすると7万円にも満たない。
実際、このリーグに参加したことがある日本人独立リーガーに聞くと、月給は10万円だったり、3万円だったりという答えが返ってくる。これでは「野球で稼ぎたい」という選手が集まらないのは当然で、ラテンアメリカの選手は基本、このリーグに参加していない。
カリビアンシリーズに出場する4大リーグ(メキシコ、ドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコ)を除くラテンアメリカのリーグはどうか。
10年ほど前にコロンビアのリーグを取材したことがあるが、このときの選手の報酬は一番安い地元コロンビアの選手で月800ドル(当時で約9万円)だった。彼は、夏はアメリカのルーキーリーグでプレーしていたのだが、当時、このクラスの最低報酬がこれくらいの金額だったので、おそらくそれに合わせたのだろう。ちなみに、3Aでプレー経験のあるベテラン選手は月1500ドル(約17万円)ほどだった。
また、このコロンビアリーグには日本の独立リーグから、のべ16人の選手が派遣されていた。彼らにもきっちり報酬が支払われ、その金額は月1500ドルから2000ドル(約22万円)とまちまちだったが、年を追うごとに待遇は良くなっているようで、独立リーガーたちは日本以上の厚遇を現地で受けていたようだ。
これが4大リーグとなると、選手の待遇はさらに良くなる。
今シーズン、監督就任初年度にいきなり徳島インディゴソックスを独立リーグ日本一に導いた養父鉄(ようふ・てつ)は、ベネズエラとメキシコでプレーした経験を持つ。当時、養父はアメリカの2Aで3500ドル(約40万円)の月給を手にしていたが、ベネズエラでは5000ドル(約56万円)、メキシコでは8500ドル(約96万円)と米マイナーリーグを上回っていた。
ほかの選手にも話を聞いたが、現在はメキシコのウインターリーグの報酬が一番いいようで、ドミニカ人のなかには母国ではなくメキシコをプレーの場としている選手も多い。
その動きはカリビアンシリーズの結果にも表れており、かつて向かうところ敵なしだったドミニカだが、近年は優勝から遠ざかり、逆にメキシコが優勝を重ねるようになってきている。
いずれにしても、ウインターリーグの報酬は、日米のトップリーグには遠く及ばず、したがって”武者修行”という目的がなければ、NPBの日本人選手が足を運ぶ必然性は少ないだろう。
とはいえ、ある意味、成績を気にすることなくいろんなことを試すことができるウインターリーグは、いつもと違った経験ができる貴重な場である。ファンにとっても野球が恋しいオフシーズンに、贔屓球団の選手が海を渡ってプレーすることは話題となり、そうした意欲的な選手には大きな期待を抱くだろう。そういう意味でも、ウインターリーグの存在はこれからますます大きくなっていくに違いない。