文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)写真:getty images5分でガラリと変わる卓球の見方、第2回は「サーブ」だ。第1回はコチラポイント2:サーブのトスの高さと立ち位置卓球のサーブは、全てのプレーの中で唯一、相手の回転の影響を受けずにプレー…
文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
写真:getty images
5分でガラリと変わる卓球の見方、第2回は「サーブ」だ。
第1回はコチラ
ポイント2:サーブのトスの高さと立ち位置
卓球のサーブは、全てのプレーの中で唯一、相手の回転の影響を受けずにプレーできる場面であるため、スピンのかけ方、サーブを出す立ち位置など、選手の個性が顕著に出る。
特に注目して欲しいのはサーブのトスの高さである。
ルール上はトスの高さは(ネットの高さとほぼ同じ)16cm以上投げ上げることとなっている。
逆に言えば、選手は16cmだけ投げてもいいし、天井ギリギリまで高く投げ上げてもいい。
トスを高く上げれば上げるほど、ボールの落下速度を利用できるため、強いスピンをかけることができる。スピンが強ければスピードと攻撃力が増すが、コントロールが難しく、サーブミスのリスクが上がる。また試合会場の照明が視界に入り、サーブが出しにくくなるデメリットもある。
一方で低いトスの場合、コントロールはしやすいが、高いトスのサーブに比べ、変化は少なく攻撃力に欠ける。
世界のトップ選手たちは、このトスの高さを場面によって使い分けるので、そこに注目をして欲しい。
水谷隼や石川佳純は基本的には3~4mのハイトスサーブを中心に試合を組み立てる。水谷や石川のハイトスサーブは世界でもトップクラスでと言われている。その理由は、「緻密なコントロール」にある。高いトスを上げるとその落下速度を利用した威力のある(回転量が多く台上で変化する)サーブが出しやすい一方でコントロールが非常に難しいのだが、両選手はハイトスサーブから自分の思った場所へ送球できる。また、サーブがボールが空中浮遊している約5秒を利用して相手の動きを感じとりながら、瞬時にコースやスピンを変えている。まさに神技と言える。
ハイトス主体の選手たちは相手が慣れてきた頃に突如ロートスに変える。相手選手からすれば、ハイトスの時は構えてから5秒後にサーブが飛んできていたのが、ロートスに変わると2秒後にサーブが来る。すると急にサーブが来るように感じるので微妙に手元が狂いレシーブが甘くなるのである。野球で言えばチェンジアップのようなトリッキーな決め球だ。
また、注目はトスの高さだけではない。サーブの立ち位置を変えるだけでもバリエーションは増える。
例えば丹羽や平野はハイトスサービスはあまり使わず、基本的に低いトスのサーブを早いテンポで出していくが、自分がサーブを出す場所(立ち位置)を変えていくスタイルだ。
台の左右サイドからサーブを出す場合もあれば、台のセンターライン付近から出す場合もある。
対戦相手にとっては、同じ回転のサーブであっても、フォア側から出されるのとバック側から出されるのでは曲がり方が違うのでラケットを出す角度を変えなければ返球が難しくなるのである。
このように卓球のトップアスリートたちは、サーブのトスの高さや立ち位置を変えることでサーブのバリエーションを増やし、相手に慣れられないように工夫をしているのである。特に日本選手たちはサーブを日々研究し、「サーブに強い国」と言われている。
同じ選手でもサーブのトスの高さや立ち位置を大会毎、対戦相手毎に変えているので、注目をし、楽しんでいただきたい。