2017シーズンを28試合出場、5得点で終えた豊田陽平(サガン鳥栖)「鳥栖で優勝したい、その一念でとどまり、戦ってき…



2017シーズンを28試合出場、5得点で終えた豊田陽平(サガン鳥栖)

「鳥栖で優勝したい、その一念でとどまり、戦ってきました。そういう集団なら、自分はベンチに座ってもいいほど。日本一がどういうものか、それをこのチームで見たいんです」

 サガン鳥栖を引っ張ってきた豊田陽平は、あらためてその胸中を明かしている。

 しかし今シーズンの鳥栖は、降格こそ回避したものの、優勝争いに加わることなく、8位。失敗ではないが、成功とも言い切れない。ボールはつなげるようになったが、攻守の迫力は減った。

 そしてリーグ終盤、エース豊田は先発の機会を失っている。

「(トップフォームでできるのは)あと5年だと思っています。残った時間を無駄にしたくはありません。来シーズンは岐路になると思いますね」

 在籍8年目になる豊田はそう言って、唇を噛みしめた。

「アビスパ福岡に移籍するの?」

 豊田は博多で知り合いにそう訊かれて戸惑ったという。来年も契約は残っているし、代理人をつけていない彼は、マーケットでは自ら動いていない。ところがサッカー専門誌でも「豊田の去就は?」という記述があるなど、本人の知らないところで憶測が独り歩きしていた。

 今シーズンの豊田は28試合出場、5得点。2011年にはJ2得点王になって、鳥栖をクラブ史上初のJ1へ導いた。以来、過去5シーズンで83得点。4シーズン連続で15得点以上という記録も作った。常に得点王争いをしてきたストライカーとしては、不本意な年だったと言える。

 噂の火元は、そうした不振にあるのだろう。

「はっきり言っておきますけど、試合に出られなくなったからどっかに出ていく、という考えは僕にはないですよ」

 豊田は肩をすくめて言う。

「基本的には契約をまっとうします。鳥栖でタイトルを獲るために、身を粉にする、その想いは少しも変わってません。マッシモ(・フィッカデンティ監督)も『信頼している』とは言ってくれているので」

 先発の座は元コロンビア代表FWビクトル・イバルボに譲ったものの、フィッカデンティ監督との関係は決して悪くはない。そもそも開幕前、キャプテンに指名され、チームリーダーを託されている。豊田が先発する試合では、そのプレースタイルに合わせて戦術もマイナーチェンジされているのだ。

「ふて腐れたりするタイプではないので、監督にとっては扱いやすい選手かもしれないですね。そうやって、自分の立場を守る選手もいますから」

 豊田はそう言って笑う。

「今シーズンはキャプテンになったことで、”チームのために”が強くなりすぎたのはありますね。自分が点を獲らなくても、他の選手が獲って勝つならそれでもいい、というか。それでゴールの執着が薄まったのかもしれない。フォア・ザ・チームというのが強すぎて、ふてぶてしくエゴが出せない、そのジレンマはありました。FWがキャプテンをするのは難しいですね」

 そう振り返って険しい表情を浮かべた豊田は、もうキャプテンを引き受けるつもりはないという。ゴールゲッターとして仕留める、という部分に再び向き合うつもりだ。

「自分は”(ゴールを)仕留める”というのが真骨頂。そのためのボールをチームメイトに託してもらうようになる必要があります。実は昨シーズンの終わりから、来るべきボールが来ないな、という感覚が少しあって。そこをもう一度、信頼されるように、ブレずに突き詰めていくしかないと思っています」

 豊田は現状について冷静に語っている。地元では英雄視されるが、本人はいたって謙虚。むしろ犠牲精神が強すぎるのだ。

「今シーズンは実績のある選手が数多くやってきて、チームが変わりつつあるのは感じます。人間関係が近くて、選手同士で出かけたりとか、そういう昔の雰囲気はなくなってきていますね。でも、鳥栖は謙虚さを失ってはならない。一枚岩で戦いに挑むというか」

 鳥栖への愛情も人一倍深い。「人生は我慢」が矜持(きょうじ)の男は、鳥栖そのものを体現してきた。

「自分は前に進むだけですよ。鳥栖に来てから、ここまで我慢のシーズンはなかった。その意味で、いい経験をしているのかもしれませんね」

 来季も鳥栖で戦う豊田は前向きだ。進化するために手を尽くしている。例えば、アレルギー検査で食事を制限し、体の動きは軽くなった。根本的に体の動きを変化させるため、脳の動きを書き換えるようなトレーニングで、クロスボールに対する反応も鋭くなった手応えがある。

「次男坊がサッカーを見るようになったんですが、今シーズンはあまり活躍する姿を見せられていない。そこは父親として歯痒いですよ」

 そう言って悔しそうに苦笑いを浮かべた豊田は、来年、試練のシーズンを覚悟している。