2017年シーズン、FC東京は18チーム中13位で終わっている。サッカーは結果がすべてではない。しかし、結果以上に…
2017年シーズン、FC東京は18チーム中13位で終わっている。サッカーは結果がすべてではない。しかし、結果以上に、その内容は寂しいものがあった。
「何をしたいのか、わからない」
目玉選手として今季やってきた大久保嘉人は第5節、サガン鳥栖に引き分けた後、ミックスゾーンでそう洩らし、イラついていた。一時は3-1とリードしたが、後半43分、アディショナルタイムと立て続けに失点して追いつかれている。その悔しさもあったのだろう。しかし歯がゆさともどかしさは、この時点でほとんど怒りに近いものとなっていた。
実は開幕2試合は連勝スタートで、その後も白星は先行していた。にもかかわらず、大久保は言ったのだ。
「勝ってるだけ。どうして勝ったのかわからない」
大久保の資質と言える勝ち気は空回りしていた。苛立つ様子は今シーズンのFC東京を象徴しているようだった。

第33節広島戦でJ1デビュー、最終節ガンバ大阪戦にも出場した久保建英
結局、FC東京はプレーモデルを見出せていない。9月には篠田善之監督が解任され、その後を率いた安間貴義監督も光明を見出せずに去っていった。前線は早くボールがほしいと要求するが、最終ラインは上がらず、選手同士の距離が遠い。結果としてボールはつながらず、セカンドボールは拾えず、プレスもかからなかった。終盤に採用した3バックは混乱を増しただけだ。
2018年に向け、FC東京は常勝軍団に生まれ変われるのか?
来季は、ガンバ大阪を長年率いた長谷川健太監督の就任が決まっている。
「いい守備から、いい攻撃」
そういうイメージのある指揮官で、引き出しも多いだけに、「外れは出せない」というFC東京の思惑が見える。過去2年間は不振を極め、ほぼ失われた時間だった。それを取り戻す必要があるのだ。
チームの顔ぶれも大きく変わる。石川直宏が引退し、徳永悠平がV・ファーレン長崎へ移籍、ピーター・ウタカは退団。さらに大久保も去就が取りざたされている。年齢的にベテランに属する選手たちが去り、新たな力の台頭が求められる。
その点、真っ先に浮かぶ”希望”が久保建英なのだろう。16歳のプレーに期待するのは論理的ではない。過剰な要求は慎むべきだろう。しかし現実として、その周辺には期待が渦巻いており、ポテンシャルもスター性も申し分ないのだ。
「タケフサは、ボールを持ったら違いが出せる」
トップチームの選手たちもそう口を揃え、信頼を寄せる。トレーニングから久保には自然にボールが集まるという。
久保はボールを受けたら、ためらいがない。そのケレン味のなさでゴールまでボールを持っていける。ふてぶてしいまでの技量でシュートを打つことができ、第33節、サンフレッチェ広島戦、最終節のガンバ大阪戦という実戦でも、短い出場時間ながらポテンシャルの高さを証明している。
久保ひとりにチームを託すべきではないが、何かをやってのける予感はある。
下部組織であるアカデミーからは、平川怜のトップ昇格も決まっている。平川は中足骨の骨折で開幕スタートは難しいだろうが、第32節のサガン鳥栖戦ではJ1で遜色のないプレーを見せるなど、将来が嘱望される。若い力がチームの気運になっていることは間違いない。
「タケフサは安心してボールを預けられますね。得点の匂いがするし、自分で取りにいくところまでいける。それは練習から見せているプレーで、とにかく肝がすわっている。(J1で試合に出ても)自分を出せるし、すでに意見も言える」
そう語ったのは、自身もFC東京の下部組織からトップに昇格した橋本拳人(24歳)だ。今シーズンは混迷のチーム状況でも、28試合出場6得点。インテンシティをインテリジェンスで出せる若手MFで、久保とも息の合ったプレーを見せている。
「東京はこれまで、補強した選手が活躍してタイトルをとったことはあります。でも、自分のようにアカデミー(出身)の選手がチームを引っ張っていけるようになりたい。マッシモ(・フィッカデンティ監督)のときは、(権田修一、三田啓貴、吉本一謙、丸山祐市などが活躍する機会が増えて)少しそういう感じもありました。
(久保、平川の所属していたユースは)かなり強くて、勝ち癖もついているはずで、レベルは違うにせよ、そういう勢いを出せていければ。自分も来季はチームの中心となって、勝ち続けるボランチになりたい。チームとしては最後まで優勝争いをできるようにしたいですね」
16歳の久保に依存するようなら、首都クラブの未来は暗い。しかし、若い力の台頭は必ず力になる。指揮官がプレーモデルを確立し、選手がやるべきことがはっきりしたら――。能力の高い選手を擁するだけに、悲観する状況ではないはずだ。