7月30日からイングランドのロイヤルリザム&セントアンズゴルフクラブで開催されたAIG女子オープン(全英女子)では、日本ツアーからスポット参戦した桑木志帆がプレーオフの末に優勝。昨年大会の山下美夢有に続き、日本勢の大会連覇となった。
今大会の桑木は、パーオン率1位という数字が示すように、際立って高いショット精度を見せた。そして、勝負どころで重要なパットを沈めたことも、海外メジャー制覇につながった大きな要因である。
象徴的だったのが、プレーオフ1ホール目。ティーショットを曲げ、苦しい状況に追い込まれたものの、3打目をピンそば約1メートルにつけた。そして、プレッシャーのかかるパットをしっかりと沈めてパーをセーブ。良い流れで迎えた2ホール目で勝負を決めた。
桑木は国内ツアーでもトップレベルのショット力を誇る一方、これまでパッティングには課題を抱えていた。しかし、今大会のプレーからは、そのパットにも確かな成長が見て取れた。その背景には、地道に繰り返してきたアドレス時のアライメントチェックがあるのではないだろうか。
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■ツアー会場で繰り返していたパット練習
4月に埼玉県の石坂ゴルフ倶楽部で開催された「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」。桑木はパッティンググリーンで、コーチとともにフェースの向きに焦点を当てながら、アドレス時のアライメントを入念にチェックしていた。
使用していたのは、「フェースの向きを確認するためのレーザー」「レーザーを照射するボード」「パット練習用カップ」である。カップに向かってアドレスし、フェースにレーザー照射器をセットすると、カップの奥に設置したボードにレーザーが照射される。これによって、アドレスした時点でフェースが狙った方向を向いているのか、どの程度ズレているのかを確認できる。
パッティングでは、わずかなフェース向きのズレが結果を大きく左右する。1度、2度のズレは見た目には非常に小さい。しかし、カップインするかどうかがシビアに問われるショートパットでは、そのわずかな違いが結果を左右することもあるのだ。このような小さなズレはプロレベルでも起こり得るが、アドレス時のフェース向きを整えることができれば、イメージしたラインへ正確に打ち出せる確率も高まる。桑木は、こうしたアライメントチェックを1球ごとに時間をかけて繰り返していた。
一見すると地味な練習である。しかし、「ストロークを始める前」に生じているエラーを徹底して減らしていく作業は、中長期的に見れば大きな意味を持つ。アドレスの精度を地道に高めていく桑木の取り組みからは、パッティングの再現性を高めるために何が必要なのかが見えてくる。
■スタッツにも表れ始めたパットの成長
この地道な取り組みの成果は、国内ツアーのスタッツにも表れ始めている。
桑木のパーオンホールにおける平均パット数と、1ラウンドあたりの平均パット数は、ともに向上傾向にある。2022年はそれぞれ52位と56位、23年は20位と26位、24年は15位と35位、昨季は11位と38位。そして今季は8月10日時点で9位と23位につけており、いずれも過去最高順位となっている。パットのスタッツはアライメントだけで決まるものではないが、アドレス時のフェース向きという基本的な部分を繰り返し確認し、そのズレを小さくしていく取り組みが、パッティング全体の安定性向上につながっている可能性はある。
もともと桑木のショット力はツアートップレベルにある。そこにパッティングの安定性が加われば、国内ツアーで圧倒的な強さを見せても不思議ではない。

桑木志帆のスタッツ(8月10日時点) ※作成:SPREAD編集部
■年間女王を手土産に米ツアーへ
海外メジャーの成績は、国内ツアーのメルセデス・ランキングにも反映される。海外メジャー優勝では、国内ツアーの3日間競技の4倍となる800ポイントが加算される。AIG女子オープン制覇によって800ポイントを獲得した桑木は、2位の菅楓華に800ポイント近い差をつけ、同ランキングのトップを独走している。
今回の優勝によって、桑木はすぐに米ツアーメンバーとなる道も開かれた。しかし、今季は国内ツアーを主戦場とし、来季から米ツアーに挑戦する意向を表明している。そうなると、目下の目標は「年間女王」。ツアートップレベルのショット精度に、パットの安定性が加わり始めた今、その可能性は大きく高まっている。
海外メジャーチャンピオンとなった桑木が、国内ツアー最大のタイトルである年間女王も獲得し、それを手土産に米ツアーへ本格参戦することになるのか。今季後半戦、パッティングとともに注目したい。
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