クラブW杯5位決定戦。それが、浦和レッズにとっての今季最終戦となった。 結果は、ウィダード・カサブランカ(モロッコ…
クラブW杯5位決定戦。それが、浦和レッズにとっての今季最終戦となった。
結果は、ウィダード・カサブランカ(モロッコ)に3-2で勝利。FW興梠慎三曰く、「勝ててよかった。いい形で得点も取れたし、やっていて非常に楽しいゲームだった。最近では3得点とか、なかなか取れていなかったので、(今季の)締め括(くく)りとしてはいい締め括りだった」。

クラブW杯5位決定戦で勝利した浦和レッズ
浦和は昨季、あまりに悲劇的なシーズンを送った。
J1年間勝ち点ではトップだったものの、チャンピオンシップ決勝で鹿島アントラーズに2戦合計の結果で敗れた。本来なら手中にしていたJ1優勝を、いわば”制度”によって失ったわけである。
だからこそ、MF柏木陽介は今季開幕を前に、「獲れるタイトルは全部取りたい」と言い、なかでも「一番獲りたいのはAFCチャンピオンズリーグ」だと話していた。
なぜ、ACLが一番なのか。理由は単純。「クラブW杯に出たいから」だった。
自分たちからタイトルをさらっていった鹿島がその後、檜舞台でレアル・マドリードと互角の試合を繰り広げたことに、浦和の選手が何も感じないはずはなかった。柏木と同じ思いを抱えている選手は、他にも少なからずいたはずである。
そして、浦和は実際、望みどおりにACLを制した。クラブW杯にも出場できた。
とはいえ、充実したものとなったはずのシーズンは、「思っていたものとは全然違う」と柏木。ときに、うまくいかない攻撃に苛立ちを募らせていた背番号10は「いろいろと難しかった」と、今季を振り返らなければならなかった。
時計の針を巻き戻せば、今季の浦和は出足よくスタートを切っていた。開幕戦こそ落としたものの、その後の7試合を6勝1分けとし、第8節終了時には2位に勝ち点4差をつけ、独走態勢に入り始めた。攻撃のバリエーションは増え、1試合平均3点を叩き出す攻撃力は、J1とACLの二冠獲得も夢ではないと思わせた。
ところが、突如として歯車が狂い出す。
猛威を振るった得点力は影を潜め、相手の堅守速攻にいとも容易(たやす)く屈してしまう。第9節以降の12試合で3勝8敗1分けと急失速。ついには、2012年からチームを率いてきたミハイロ・ペトロヴィッチ監督が、解任される事態にまで発展した。
それを思えば、新たに堀孝史監督が就任し、まずは攻撃時のリスクを負わず、失点を減らすことに注力した結果、10年ぶりのACL優勝までたどり着いたことは、よく持ち直したとも言える。
しかし、MF遠藤航は「それを成果と言ってしまうと、ミシャ(ペトロヴィッチ監督)に申し訳ないという気持ちが少なからずある」と言い、こう続ける。
「ミシャが作り上げた土台があり、そこに堀さんがテコ入れをすることで勝負強さもついて、ACLで優勝できた。でも、(クラブW杯で敗れたアルジャジーラ戦のように)引いた相手に勝てないというのは、今のウィークポイントなのかもしれないし、攻撃のバリエーションを増やすというところには課題がある」
確かに遠藤が言うように、ACLでは優勝できたものの、J1では最後は3連敗を喫するなど7位に終わっている。堀監督就任後も、本当の意味でチームが立て直されたとは言い難い。
興梠の「個人的には、よくここまで来たな、というレベルだったと思う。今までにもっと強い時期はあったから、(ACL優勝も)運がよかったのかな、という気がする」という発言には、うなずける点が多い。
10年ぶりのビッグタイトルを手にしたシーズンも、裏を返せば、最近では例がないほどに大きな不安を抱えたまま幕を閉じたとも言える。興梠が語る。
「攻撃に関しては、やっている選手たちが戸惑いを感じながらやっているし、そこは、たぶん堀さんも感じていると思う」
そのふたつを同時に抱えていることが何とも不可思議な、大きな勲章と大きな不安。だからこそ、今季の浦和は評価が難しい。
柏木は「(難しい状況が多く)なかなか経験できない1年を経験できた。でも、だから、よかったとは言えない」と語り、こう続ける。
「(目標だった)クラブW杯には出られたけど、内容も結果もともなっていない。そこが、自分たちの弱みかなと思う。このチームはできるだけリスクをなくして勝ってきたというのが現状やけど、リスクを冒さずに攻める分、(攻撃に)厚みが出ない。勝ち切るためには何か必要なことがある」
興梠もまた、「ミシャがやっていたサッカーは非常に楽しかったし、攻撃に関しては、またそういうサッカーができれば、もっとレベルアップするのかなという気はする」と語るように、堀監督就任後のリスク管理ができたうえで、前監督時代のようなコンビネーションで得点力を高めることが、来季の浦和が追求していく理想形ということになるのだろう。
だが、ふたつの異なるサッカーのいいところだけを融合させるなどということは、口で言うほど単純な作業ではない。というより、かなりの困難を強いられるはずだ。
柏木は「(シーズン途中の監督就任で今季は)ホントの堀さんのトレーニングというか、堀さんのやりたいサッカーを植え込んでいく練習はできなかったと思う。それが(来季開幕前の)キャンプではできるから」と語り、決意の言葉をつなぐ。
「(クラブW杯の内容と結果は)浦和レッズとして、完全には強くなり切れてない証拠なのかなって感じた。だから強いクラブにしていくために、オレはまた浦和と契約を結んだ。来年は(ACLがなく)リーグしかないから、それをしっかり獲れるようにやっていきたい」
アジア王者はおそらく、期待と同じか、それより少し大きめの不安を抱え、新たなシーズンへ向かうことになる。