北中米カリブ海王者は南米王者に果敢に挑み、美しく散った。敗れはしたが、その戦いぶりは称賛に値するものだった。 クラ…
北中米カリブ海王者は南米王者に果敢に挑み、美しく散った。敗れはしたが、その戦いぶりは称賛に値するものだった。
クラブW杯準決勝。グレミオ(ブラジル)と対戦したパチューカ(メキシコ)は、延長の末に0-1で敗れた。
実力的には、グレミオが明らかに上だったはずだ。しかも、パチューカは3日前の準々決勝、ウィダード・カサブランカ(モロッコ)戦で延長120分を戦ったばかり。この試合が大会初戦のグレミオと比べても、不利は明らかだった。
しかし、北中米カリブ海王者は、ただただ劣勢を強いられるばかりではなかった。前半から奪ったボールを確実につなぎ、反撃に転じた。決定機を作り出すことはできなくとも、うまくボールを動かすことで自分たちの時間を作り、一方的な展開にはさせなかった。
さすがに60分を過ぎたあたりからは、南米王者に攻め込まれる時間が続き、ついには延長前半の95分にゴールを許して力尽きたが、胸を張ってメキシコへ帰れる試合だったに違いない。
「もう少し圧倒されるイメージで入ったが、思った以上に(ボールを)持たせてくれた。向こうは初戦で、たぶん僕らの初戦と同様で硬かった。勝機があるとしたら、そこかなと思っていたんで。前半の決めどころで決めていれば、勝つ可能性が数パーセントでも高まっていたが、それは言っても仕方ない。パチューカの実力から言えば、すべてを出し切ったと言っても過言ではない」
そんな言葉で納得の敗戦を振り返った本田圭佑も、グレミオに何度も冷や汗をかかせたひとりである。
準々決勝のウィダード戦での本田は、ボールに触れる機会こそ多かったが、パスをさばくばかりの淡白なプレーが多かった。両チームともにミスの多い落ち着かない試合になったことで、無理せずバランスをとらざるを得ない面もあったのかもしれない。
だが、明らかに試合のレベルが一段上がったグレミオ戦では、ボールに触れる回数は減ったが、むしろ存在感は際立った。

南米王者を敵に回して再三チャンスを作った本田圭佑
本田が攻撃の推進力を生み出した場面は、主に3つ。まずは前半29分、MFエリック・アギーレがボールを持って顔を上げた瞬間を見逃さず、DFライン裏のスペースへ走り込み、浮き球のパスを引き出した。
前半ロスタイムの46分には、自陣でパスを受け、ワンタッチでMFビクトル・グスマンにボールを渡すと、リターンを受け取り、ドリブルで前進。さらにFWフランコ・ハラとのパス交換で相手DFラインを破りかけた。
そして後半54分には、中盤でパスを受けて前を向くと、DFラインの裏へ走り込むアギーレへ、タイミングよくスルーパスを通した。
いずれの場面も結果的には相手DFの戻りが早く、シュートまでは至らなかったのだが、パスの受け手にも出し手にもなれる本田のよさが表れていた。
本田は淡々と「悔しいという気持ちよりは、むしろ僕としてはパチューカにすごく感謝しているというか、会長含めてクラブの関係者には、ホントにこういうチャンスをもらえたことにすごくありがたい気持ちでいっぱい、というほうが強い。やるべきことはやったし、悔いはない」と語り、表情こそ変えなかったが、持てる力は出し切ったという充実感が漂っていた。
もちろん第一義としては、本田がこの大会で、パチューカの勝利のために戦ったことは言うまでもない。だが、それと同時に本田は、自らの評価を再び高めるために、この大会をうまく活用したとも言えるだろう。ショートパス主体のパス・アンド・ムーブで攻撃を組み立てる、パチューカのサッカーとの相性のよさもそれを後押しした。
こうなると、「本田を日本代表に」の声も高まってくるだろう。このところ、日本代表から外れている本田だが、やはりメンバーに加えるべきなのだろうか。
本田がボールを持ったときには、さすがというところを見せているのは確かだが、その一方で気になるのはオフ・ザ・ボール、つまり、ボールを持たないときのプレーである。特に攻守の切り替えのテンポが速くなると、試合の流れについていけず、攻守両面で適切なポジションをとれなくなることが目立つ。
例えば、味方がボールを保持して、「さあ、これから攻めますよ」というわかりやすいタイミングでは力を発揮するのだが、目まぐるしく攻守が入れ替わる展開のなかで、ふいに守から攻に切り替わると、本来いてほしい場所にいないことが多いのだ。
オン(ボールを持ったとき)のプレーは十分だが、オフ(ボールを持たないとき)のプレーは物足りない。それが、この大会の本田から強く受ける印象だ。できるだけ高い位置からプレスをハメ込み、ボールを奪ったら速く攻めたい現在の日本代表のスタイルとは、相性がいいとは言えまい。
とはいえ、オンのプレーがこれだけできる状態にあるのであれば、本田を日本代表に加える価値は十分にあるだろう。例えば、1点がほしいときのスーパーサブとして。あるいは、勝つしかない瀬戸際での試合の最終兵器として。
いずれにせよ、本田株は再び上昇気配をうかがわせている。この大会で本田は、自らの「待望論」を再燃させるだけのプレーを見せていることは間違いない。