ランニングしていると、「どうしてそんなに走るの?」なんて質問される機会は多いでしょう。ダイエットや健康維持、あるいは記録向上など、その目的はさまざま。しかし市民ランナーとして趣味の一環で走るのであれば、やはり“楽しむ”ことも大切ではないで…

 ランニングしていると、「どうしてそんなに走るの?」なんて質問される機会は多いでしょう。ダイエットや健康維持、あるいは記録向上など、その目的はさまざま。しかし市民ランナーとして趣味の一環で走るのであれば、やはり“楽しむ”ことも大切ではないでしょうか。

 しかし中には、距離が伸びるほど飽きてしまうなど、なかなか長い距離が走れないという方もいるはず。レースならば周囲の雰囲気もあって走破できるものの、1人のトレーニングではそうした悩みが起こりやすいかもしれません。そこで、「本州縦断・青森~下関1521kmフットレース」を完走した村場伸也さんに、ロング走を楽しむためのコツを伺いました。ランニングをもっと楽しむためのヒントが見つかるかもしれませんよ。

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ロング走を楽しむためのポイント

 例えばウルトラマラソンに挑戦しようと決めたとき、やはり10kmや20kmといった距離のトレーニングでは不安があるでしょう。とはいえ、距離が伸びるほどモチベーションの維持が難しくなり、飽きたり妥協したりしてしまうことも……。そのためロング走に初めて取り組む際は、やはり誰かと走るようにすると良いようです。

「まずは、ロング走を経験したことのある先輩ランナーと一緒に走ってみてください。100kmやオーバーナイトランニングなど、少しずつ経験を積むことですね。また、ランニングはオールウェザースポーツですから、暑さや寒さなどの気候も両方含めて楽しみましょう。もちろん、暑くて疲れてしまったり、寒くて身体がなかなか動かなかったりするかもしれません。それでも、そのときの自分にできることを、確実に行うというのが重要です」

 また、長い距離を快適に走るためには、服装も大切なポイントとなると言います。

「Tシャツよりポロシャツがおすすめですね。首を日光から隠してくれますので。また、ロング走ではバックパックを背負うことが多いと思いますが、襟がバックパックによる擦れを防いでくれます。あとは天候対策で防水性、防寒性なども求めたくなるのですが、スポーツショップより登山ショップに足を運ぶことが多くなるかもしれません。私の場合、最終的には作業服などを扱っている『ワークマン』に行き着きましたよ」

 距離が伸びるほど、走っている最中の天候やコースの変化は大きくなります。そう考えると、確かにいわゆるランニングウェアより、登山などに用いられるウェアやアイテムの方が適するのかもしれません。

辛くなったときの心の立て直し方

 走っていると、疲労や痛みなどから心が折れそうになることがあるでしょう。走ろうという気持ちが失われれば、そこから先は辛いだけ。そんなときは、何らかの方法で心を立て直さないと、ゴールまでたどり着けないのではないでしょうか。

「私の場合、ランニングフォームのお手本にしているランナーが4名います。辛くなってきたときは、そのランニングフォームをイメージし、1つ1つ見直しながら立て直しますね。走るのが厳しければ、まず早歩きから。徐々にジョギングへ繋げて、丁寧に一歩一歩進んでいきます。原点に帰って走りを見直す、つまりスタートした時の気持ちに戻るとも言えるかもしれません。これまで一緒に走ってきた人から学び、良いと思ったことは真似ましょう。お手本が複数あれば、走ることのルーティンを変えながら前へ進むことができます」

 辛いときというのは、確かにランニングフォームも崩れてしまっています。その崩れがさらに負担を増やし、悪い循環を生み出してしまうでしょう。身近なランナーでもトップアスリートでも、自分の中でお手本とできるランニングフォームを見つけておくのは、安定して走り続けるうえでも支えとなるかもしれません。自分の走りを見直し、できることを見つけて取り組む。そうすれば“走る”ことに心を向き続けられることでしょう。

「どんな走りをするかは、その人の自由なんですよ。だから、自分らしいレース、走りを心がけたら良いと思います。たとえば私の場合、どんなにしんどくても笑顔で走ります。『本州縦断・青森~下関1521kmフットレース』に出場した際も、道中で見つけた変な看板と写真を撮るなどして、笑いを絶やさず走り続けました。辛いときこそ、走る以外のことに気持ちを向け、頭を切り替えると良いかもしれませんね。特に下らないことほど良いと思います」

 確かに私もウルトラマラソンを走っている際、周囲の景色に目を向けたり、レースとは全く関係のない仕事のことなどを考えたりしていると、いつの間にかかなりの距離を進んでいたという経験があります。走ることは身体の運動ですが、やはり脳も大いに関わっているのでしょう。走ることが辛ければ、走ること以外のことを考える。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

 そのほか、レースに挑戦する際には、事前にレースを想定した装備で走ってみることも大切とのこと。例えばバックパックは、同じ荷物でも詰め方で感じる重さが異なり、ランニングフォームにも影響を与えるそうです。細かな調整を行い、実際に走りながら自分なりにしっくりくる方法を探す。こうした過程もまた、楽しみの1つと言えるのではないでしょうか。

[プロフィール]
村場伸也(むらば・しんや)
1971年生まれ、大阪府出身、高知県在住。小学4年生から社会人2年目までは、短距離(100m/幅跳び)選手として活躍する。その後、2007年よりランニングを始め、ウルトラマラソンを中心にさまざまな超長距離レースへ挑戦。2017年に「本州縦断・青森~下関1521kmフットレース」を走破。現在は高知県内のフィットネスジムでトレーナーとして活動中。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text&Photo:三河賢文>

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