ドルトムントにとってはひと安心といったところか。ブンデスリーガ第16節、ドルトムントはマインツを相手に9月30日以…

 ドルトムントにとってはひと安心といったところか。ブンデスリーガ第16節、ドルトムントはマインツを相手に9月30日以来、実にリーグ戦9試合ぶりの勝利をあげた。フル出場した香川真司は、あまり喜びすぎないように気をつけながら、それでも素直に安堵感が伝わる様子でこう切り出した。

「(勝てない期間が)非常に長かったですけど。まあ、ここからですね」



マインツ戦にフル出場、今季3ゴール目を決めた香川真司(ドルトムント)

 本来のドルトムントなら、これで16位まで後退したマインツに勝ったぐらいで浮かれているわけにはいかないのだが、嬉しくないわけがない。前節、ブレーメン戦に敗れたのが先週の土曜日。ペーター・ボスからペーター・シュテーガーへの監督交代が発表されたのが翌日の日曜日。その2日後のマインツ戦だった。香川も慌ただしい時間を過ごしたはずだ。

「(監督交代に)すごく責任を感じましたし、同時にこれがサッカー、プロの世界ですから、切り替えて、また新しい監督のもとでやらなきゃいけないのかなと。やはりいろいろな切り替えが短時間で必要でした」

 気持ちの切り替えはもちろん、また一から始まるメンバー争いや、新たなサッカー、そして新たな人間関係を受け入れなければならなかった。

「練習は1回しかやってないのですが、フォーメーション形式でやって、最初はスタメンでは出てなかったんです。監督は『(先発とベンチメンバーを)ミックスしてる、関係ない』と言っていたんですけど、ベンチかなと、少し予想していました。でも、フィーリング的には練習で悪くなかったし、しっかりスタメンだったので(よかった)。コンディションは悪くないので、プラスアルファ、チームとしての自信であったり、どう戦っていくのかであったりを、これからもっと積み上げていきたいです」

 なによりも大事なのは勝つことだったのは明らかだ。

「どんな不細工な試合でも勝つぞと、みんなで言っていた。前半はうまくいかなかったですけど、慌ててなかったですし、これを続けてどんな形でも点をとれるはずだっていうのは話していた。今日はみんな、割り切ってやれていたと思います」

 自分たちの本来の姿を取り戻すために、何よりも勝利を優先したのがこの一戦だったというわけだ。

 前半は、ホームのマインツが多くのチャンスを作り、ドルトムントを脅(おびや)かした。立ち上がりから攻め込まれ、ポストに救われるようなシュートもあった。だが、この日のドルトムントは慌てて反撃に出ることはしなかった。じっくりと引いて落ち着いて立て直し、そこから前に出ていくことを徹底した。とにかく攻撃をして主導権を握ることを優先してきたボス時代からの変化が、早くも見られた。

「こういう時だからこそ、特に前半はバランスを見ることが大事だな、と。失点してしまうと厳しくなるのはわかっていたので、みんながバランスを重視しているぶん、サッカー自体はなかなか展開がなかったのですが、今のチーム状況を考えると、そこを崩すというよりは、まずはしっかりとしたポジションをマネジメントしながら戦っていく。失点をしないようにまずは守備をやっていこうというのは、プランとしてありました」

 本来引いて守るのはドルトムントのサッカーではない。だが、今はそんなことを言っている場合ではないということを、新監督ははっきりさせた。

 また選手起用も、若干これまでと変えながら、自然なものに見えた。システムを4-3-3に戻し、右SBには、今季ここまで起用されながら無理があるように見えたマルク・バルトラに代えて、本職のジェレミー・トリヤンを起用。中盤の3枚の底には守備的なユリアン・ヴァイグルを置き、その前に香川とラファエル・ゲレイロを並べた。3トップには右にアンドリー・ヤルモレンコ、左にクリスティアン・プリシッチ、トップにオーバメヤン。ベンチにはアンドレ・シュールレではなく、アレクサンデル・イサクが入った。

 ドルトムントが挙げた2得点には、いずれも香川が絡んだ。55分の先制点は香川のフリーキックから。シュートがバーにあたり跳ね返ったところを、ソクラティス・パパスタソプーロスが押し込んだ。2点目は89分、香川がヘディングで前線にパスを送ると、抜け出したオーバメヤンがエリア内に運び、GKをかわしたところで走り込んだ香川へパス。香川は右足ダイレクトで流し込んだ。

 得点シーンを香川はこう振り返る。

「オバ(オーバメヤン)がよく見てくれていましたけど、その前に1本外していたし、ピッチ状況も含めていろいろなプレッシャーがありましたけど、入ってよかったです。ゴール前3分の1でそういうチャンスは絶対来ると言い聞かせているなかで、ボールが入るところには入っている。しっかりと判断できているので、あとは決まるか決まらないかの世界だと思う」

 秀逸だったのは試合後のシュテーガー監督の会見だ。

「久々の勝利は、私とクラブにとって重要であり満足だ。今日はとても多くのポジティブな側面が見受けられた。それは前監督ペーター・ボスがこのチームに残してくれたものでもある。今日の勝利の何割かは彼のおかげだと思う」

 ケルン監督時代に人気者だった理由のひとつは彼の人間性にあるということが、こんなコメントひとつからも伝わってきた。

 ドルトムントとシュテーガーとの契約は今季いっぱい。だがこのピンチを乗り切り、チャンピオンズリーグ出場権獲得までチームを浮上させることができれば……そんな期待が高まるリスタートの一戦だった。