仕事でもプライベートでも輝いている人は、歩く姿からちょっとした所作に至るまで、凛とした雰囲気があります。ただ、周りの人のことはよく見えても、自分の姿はなかなか目に入らないもの。疲れが溜まったり、気を抜いたりしたときに、いつの間にか猫背にな…

 仕事でもプライベートでも輝いている人は、歩く姿からちょっとした所作に至るまで、凛とした雰囲気があります。ただ、周りの人のことはよく見えても、自分の姿はなかなか目に入らないもの。疲れが溜まったり、気を抜いたりしたときに、いつの間にか猫背になってしまっていることはありませんか?

 “日本人の国民的生活習慣病”ともいわれている猫背ですが、猫背になると、疲労がたまりやすくなり、血流や内臓の働きが低下するため、冷えや体調不良の原因になることもあります。

 今回は、猫背の解消法を「女性専用 ゆがみ調整専門整体院とことん整体Hosoda」の院長で整体師の細田祐子先生に伺いました。猫背ぎみの方は、ぜひチェックして、自分の姿勢を見直してみてくださいね。

猫背は体にこんなに悪い! 内臓の働きから顔にまで影響

 まずは猫背の弊害をおさらいしましょう。

 猫背は、背中と肩が丸まり、首が前に傾きやすくなった状態です。猫背になると内臓が最小限の働きしかできなくなります。

 呼吸の面でも弊害が。背中と肩が丸まると、イメージとしては、肺が窮屈な箱の中に入れられて、開いたり閉じたりしようとしても大きく動くことができない状態になります。胸を張ってあごを上げた状態の時は、大きく息を吸うことができますが、猫背になって下を見たままでは、同じだけの息は吸えないもの。猫背になると血液を循環させるポンプの力が弱くなり、血流が体の先に届きにくくなることで冷えの原因になります。疲れやすくなったり、元気や食欲がなくなったりもします。

 猫背の姿勢では、お腹も圧迫されますが、胃腸の働きも低下して、消化が悪くなり、便秘になりやすくなることも。女性の場合は、生理痛が酷くなるケースも考えられるのです。

 また、首が前に倒れてしまうと、首の重さ(大人が使うボーリングのボールくらい)を支えるために余計に筋力を必要とし、疲労がたまります。猫背の人は首が前に傾いたまま顔だけを上に向けようとするため、あごがしゃくれて見えてしまうことも。

猫背は、実は楽な姿勢!?

 猫背の原因は人それぞれにありますが、「がんばり屋さんの女性は猫背になりやすい」といわれます。炊事も、掃除も、洗濯も、すべて、体の前で行なう仕事だからです。毎日、楽器を演奏する人も、赤ちゃんを抱くお母さんも猫背になりやすいです。パソコンを操作する際も、マウスとキーボードがベストの位置にないと猫背になる原因になります。

 実は、猫背の人にとっては、猫背の姿勢は、意外と苦ではなく、むしろ落ち着きすら感じるそう。足を組むときに、右か左かで組みやすい方がありますが、それは、骨盤が左右のどちらかにゆがんで固まってしまっているからです。猫背の人は、猫背の状態でいることが楽で、正しい姿勢を維持するためには腹筋をはじめとする筋肉を使うので、かえって疲労や苦痛を感じてしまうことがあります。しかし、楽だと感じる猫背であり続けると、気づかぬうちにさまざまな弊害が生まれてしまうことは前述の通り。よほどのことがない限り、猫背になってよいことはありませんので気をつけたいですね。

 つづいて猫背を解消して、正しい姿勢に戻すためのストレッチをご紹介します。

猫背解消に役立つストレッチ①:下半身を重点的にほぐしてくれる

 床にお尻を付けて座り、伸ばした方の足のつま先を両手で掴んで上体を前に倒します。膝を曲げないことがポイントで、手が届かない人はタオルを利用するとよいでしょう。

▲下半身を重点的にほぐすストレッチ

▲タオルを使ってもOK

 このストレッチでは、もも、ふくらはぎ、腰、腕が伸びますが、その人の一番固いところから伸びていくため、その人の体を本来の形に戻す効果が高いです。猫背は、上半身だけのことと思いがちですが、正しい姿勢になるには、上半身を支える骨盤と下半身を正しい姿勢にすることが必要。どんなに頑丈な外見をしていても、土台がゆがんでいたら、建物自体がゆがんでしまうことと同じです。

 土台から正しい姿勢に戻るため、毎日、続けることが理想なんです。

猫背解消に役立つストレッチ②:股関節をほぐしてくれる

 体を土台からほぐすためのストレッチをもうひとつ。

 背筋を伸ばして真っ直ぐに立ち、足の付け根である鼠径部(そけいぶ)に手を当てて、遠くを見ます。体育の時間に足を開いて屈伸をしていたような姿勢をイメージし、指で鼠径部を前方から後方に押してあげます。背筋を曲げないことがポイント。

▲鼠径部に手を当て足を開きます

 股関節は球体の関節なので、本来ならば足はどの方向にも大きく動きます。しかし、猫背の人は、スキーのジャンプの姿勢のように常に前に倒れようとしているため、筋肉が固まって、股関節が前にしか動かなくなってしまいます。このストレッチでは、股関節を前から後ろに押すことで固まった筋肉をほぐし、股関節をどの方向にも動く本来の状態に戻すことができます。

猫背解消に役立つストレッチ③:上半身をほぐしてくれる

 最後は、上半身のストレッチ。

 椅子の上に真っ直ぐに座り、片手で足を固定します。もう一方の手を真っ直ぐ上にあげ、そこから後ろに倒します。5回ほど倒したら、一番倒した状態で止まり、息を大きく吐きます。手を後ろに伸ばす動きは普段はしないのですが、その動きをすることで、日頃から猫背の姿勢に固まってしまっている腕や、肩や、背中をほぐします。

▲まずは手をあげます

▲次に手を後ろに倒します

 このときに腰をひねってしまうと楽になるのですが、腰をひねらずに真っ直ぐのままでいることがポイント。1日、5回~10回ほど続けると効果が現れます。

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 猫背は自分では気づきにくく、大人になってから「猫背だね」といわれ初めて実感することもあります。スポーツやトレーニングにすでに取り組んでいる人なら、筋肉を付けることと並行して、正しい姿勢でいることにも気をつけて、快適な生活を送りたいですね。

[プロフィール]
細田祐子(ほそだ・ゆうこ)
『女性専用 ゆがみ調整専門整体院とことん整体Hosoda』院長。1975年生まれ。東京都出身。推拿の専門学校で整体を学び、その後、操体法、関節の動きを軸に体と顔のゆがみを整える施術を行なう。施術歴7年。
【「ゆがみ調整専門整体院とことん整体」サイト】http://hosodayugami.com/

<Text&Photo:竹内みちまろ(H14)>