チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の組み合わせが決まった。ユベントス(イタリア)対トッテナム・ホッ…
チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の組み合わせが決まった。
ユベントス(イタリア)対トッテナム・ホットスパー(イングランド)
バーゼル(スイス)対マンチェスター・シティ(イングランド)
ポルト(ポルトガル)対リバプール(イングランド)
セビージャ(スペイン)対マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
レアル・マドリード(スペイン)対パリ・サンジェルマン(フランス)
シャフタール(ウクライナ)対ローマ(イタリア)
チェルシー(イングランド)対バルセロナ(スペイン)
バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)対ベジクタシュ(トルコ)
(前のチームが第1戦ホーム)

チャンピオンズリーグ3連覇を狙うレアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウド
レアル・マドリードの3連覇達成なるかを最大の焦点にスタートした2017~18シーズンのCL。レアル・マドリードは、チャンピオンズカップとしてスタートした最初のシーズン(1955~56)から5シーズン連続で欧州一に輝いているが、それ以外に3連覇を達成したチームはアヤックス(1970~71、71~72、72~73)とバイエルン(73~74、74~75、75~76)しかいない。つまり41シーズンぶりの偉業に、レアル・マドリードは挑戦しているわけだ。
ところが、グループリーグではトッテナムの後塵を拝し、2位に甘んじた。したがって決勝トーナメント1回戦では、他の組の首位チームと対戦することになった。抽選会最大の見どころは、その対戦相手だった。
抽選の結果、レアル・マドリードの相手に選ばれたパリ・サンジェルマン(PSG)は、この結果を歓迎しているのだろうか。落胆しているのだろうか。気になるのはこの点だ。
今季、バルセロナからネイマールを獲得。モナコからキリアン・ムバッペも獲得し、これにエディソン・カバーニを加えた強力3FWを前線に並べたPSGは、グループリーグ第2節、ホームでバイエルンと対戦した。結果は3-0。毎シーズン、CLで優勝を狙える位置につける格上のドイツの強豪を撃破し、今季こそはやりそうなムードを欧州に誇示していた。
PSGはここ数年で欧州の上位チームに台頭した、言わずと知れた金満クラブである。2012~13シーズン、8シーズンぶりにCLの舞台に立つと、そこから昨季まで5シーズン連続決勝トーナメント進出を果たしたものの、その最高位はベスト8。敗れた相手はその5回のうち3回をバルサが占めている。
昨季の決勝トーナメント1回戦では、4-0で第1戦を終えながら、第2戦に1-6で敗れ、通算5-6で大逆転を許した。記憶に新しいのはこのまさかの敗退劇だが、PSGはそれ以前にも2度、優勝候補の本命だったバルサに、まるで出る杭を打たれるように敗れている。
そしてPSGは今季も、トーナメントの早い段階で優勝候補と対戦することになった。この現実を、PSGはくじ運に恵まれなかったと嘆いているのか、「今年こそは」とチャレンジャー精神を漲(みなぎ)らせているのか。問題はそこだ。
先述の試合でバイエルンに大勝したことで、「その気」になっていることは確かだ。バイエルンホームのリターンマッチは1-3で敗れはしたが、悲観するような内容ではなく、「その気」は維持されていると思われる。一歩階段を上がったつもりで、この決勝トーナメントの抽選結果を待ちわびていたに違いない。
その目の前に3連覇を狙うレアル・マドリードが出現した。その胸の内はどうなのか。絶対に負けられない試合と位置づけ、昨季の対バルサ第2戦のように、精神的に守りに入るようだと危ない。
対するレアル・マドリードは、今季前半、パッとしない戦いを続けている。CLのグループリーグでは、トッテナムに1分け1敗と負け越し、国内リーグでも、15節を終了して首位のバルサに勝ち点8の大差をつけられ、4位に甘んじている。リーグ優勝は望みにくい状態になりつつある。
CLで2連覇を達成し、お腹いっぱいの状態にあると捉えるべきか、とりあえず一休みし、後半勝負に出ようと考えているのか。CL最終節のドルトムント戦には、どちらかと言えば余裕を感じた。前半の早い段階で2-0とリードすると、レアル・マドリードは明らかに手を抜いた。ドルトムントに2点を取らせ、同点に追いつかせるサービス精神を発揮、あえて試合を面白くさせたようにさえ映った。
スタメンを落とし、布陣を途中で変え、戦術的交代を駆使しながら、終盤ジワジワと追い込み、最後は3-2でドルトムントをきれいにかわす姿に、むしろ感心させられた。鞭を入れず、馬なりで戦い、楽に勝利したという印象。スコア的には接戦だが、レアルの懐の深さを感じさせた試合。2月中旬にスタートするCLの決勝トーナメントから、本格的にエンジンがかかりそうな気配を感じた。国内リーグ戦で優勝が難しくなっていることも、CLには好影響を与えるはずだ。
とはいえPSGは強敵だ。今季好調なイングランド勢より怖そうな存在に見える。モチベーションや、緩んでしまっているかに見える緊張感を、再度向上させるには、格好の相手なのかもしれない。レアル・マドリードは、いまの状態から上がるのみ。下がることは考えにくい。
見どころは選手の配置だ。イスコの台頭でスタメン候補が4人になった中盤と、FWとの関係だ。4-4-2でいくのか。あるいはマルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケス、さらには復帰してくるはずのガレス・ベイルらを起用する4-3-3で臨むのか。真ん中でボールを引っかけられると、バイエルンがそうだったように、PSGの前線3人に暴れられる可能性は高い。
決勝トーナメント1回戦、もうひとつの見どころは、ベスト16に過去最多の5チームを送り込むことになったイングランド勢の動向だ。現在のUEFAリーグランキングは2位。首位スペインとの差は大きいが、今季は接近する絶好のチャンスを迎えている。
ベスト16に3チームを送り込むスペイン勢と5チームを送り込むイングランド勢との力関係は、この決勝トーナメント1回戦を経て、どのように変化するか。両者が直接対決するのは、セビージャ対マンチェスター・ユナイテッド戦のみだが、そういう意味においては、PSGと対戦するレアル・マドリードも、絶対に負けられない戦いになる。
レアル・マドリードは41シーズンぶりの3連覇を達成できるのか。イングランド勢の巻き返しはなるのか。ネイマールを獲得して金満クラブの色を強めたPSGはどこまで勝ち上がることができるのか。個人的に気に入っているエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督率いるローマの行く末は? 来年2月が待ち遠しい限りである。