12月9日のラ・リーガ・サンタンデール(リーガエスパニョーラ1部)第15節。マドリード郊外にあるヘタフェの本拠地コ…

 12月9日のラ・リーガ・サンタンデール(リーガエスパニョーラ1部)第15節。マドリード郊外にあるヘタフェの本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスで行なわれたエイバル戦で、84日ぶりに柴崎岳がピッチに戻ってきた。



試合前のセレモニーに登場した(右から)柴崎岳、ハビエル・フェルナンデス、乾貴士

 柴崎が負傷したのは、9月16日に行なわれたホームでのバルセロナ戦のこと。その試合の前半39分、強烈な左足ボレーで自身初となるラ・リーガ初ゴールをバルサ相手に叩き込みながら、後半54分、突然ピッチに座り込むと、そのままアルバロ・ヒメネスと交代してベンチに下がることとなってしまった。

 結局、柴崎がピッチを去ってから8分後にルイス・スアレスに同点ゴールを許したヘタフェは、試合終盤の84分にパウリーニョに決勝点を決められ逆転負け。ヘタフェ・サポーターにとっては、日本人プレーメイカーと大金星を一気に失うというショッキングな記憶が刻まれることになった。

 第五中足骨の亀裂骨折。通称ジョーンズ骨折ともいわれるケガが、柴崎がベンチに下がることを強いられた原因だった。これはサッカー選手によく見られる疲労骨折の一種で、10月2日に無事手術を終えた柴崎はリハビリのために一時帰国。11月9日からヘタフェでの練習を再開し、約1カ月を経て復帰準備を整えてきた。

 迎えたエイバルとの一戦は、柴崎の復帰を待ち望むヘタフェ・サポーターのみならず、日本人サッカーファンにとっても注目の試合となった。もちろん、ヘタフェが対戦するエイバルにはもうひとりの日本人プレーヤー、乾貴士がいるからだ。

 異なるチームに所属する日本人同士が相まみえる”日本人ダービー”は、同時にピッチに立つという点では、リーグ創設88年の歴史上、まだ実現したことがない。昨シーズンに実現するかに思われた「セビージャ清武弘嗣vs.エイバル乾」の対決も、乾がメンバー外だったことで幻に終わっている。そこでラ・リーガ側は、多くの日本人が注目するこの試合を日本向けの演出で大々的に盛り上げた。

 まず、試合開始時間を日本のゴールデンタイムの21時に合わせて現地時間13時キックオフに設定。公式ツイッター上では柴崎と乾の対決を”日本風アニメ”と”サムライ風イラスト”の2パターンで作ったバナーを掲示したほか、キックオフ前には柴崎と乾とともに、日本でもよく知られるスペイン人フィギュアスケーターのハビエル・フェルナンデスがセンターサークルに登場。日本人選手2人に挟まれながらキックオフセレモニーを行なうというサプライズも用意した。

 注目の試合は故障明けの柴崎がベンチスタートとなった一方で、乾は予想通り4-4-2の左MFでスタメン出場。残念ながら試合開始から日本人対決は実現しなかったが、前節で無敗の2位バレンシア相手に金星を挙げるなど絶好調のヘタフェと、3連勝中で上昇気流に乗るエイバルの戦いは、お互い一歩も譲らない激しいつぶし合いが続いた。

 開幕前の予想を覆して8位につけているホームのヘタフェは、ファウルも恐れぬ激しいディフェンスが最大の売りだ。ボールポゼッションを度外視したカウンター狙いのそのサッカーは、もしかしたら日本人ファンからすると華麗なパスサッカーを特徴とするラ・リーガのイメージとは異なるスタイルに見えたかもしれない。実際、この試合でも中盤を省略したロングボールを2トップの一角、アンヘル目がけて放り込み、そこを起点にカウンターを狙うという戦術を徹底した。しかし、実はそれこそが、創造性豊かなテクニシャンである柴崎がこのチームで貴重な戦力となっている理由でもある。

 その柴崎がピッチに登場したのは、後半74分。日本人対決を意識しすぎたのか、この日はミスも多く見せ場を作れなかった乾が途中交代でベンチに下がってから11分後のことだった。柴崎と同じくテクニックを武器とする乾にとっては、ヘタフェのように球際に激しくくる相手にいかに対処するかという課題が残された試合でもあった。

 一方、万雷の拍手の中で復帰を果たした柴崎は、試合の感触を確かめるかのような落ち着いたプレーを見せた。直線的なサッカーを身上とするチームの中で、ひとり涼しげにヒールパスでテクニシャンぶりを発揮するなど、曲線的なプレーで変化を与え、試合のリズムを変えることができていた。

 もちろんまだトップフォームとは程遠い内容ではあったが、随所に見られた柴崎らしいプレーに、ヘタフェ・サポーターは完全復活に向けて大きな期待を寄せたはずである。

 不在の間にレギュラーメンバーが固まってしまったうえ、ホセ・ボルダラス監督も柴崎の起用については慎重に行なうと明言しているだけに、すぐに次節からスタメンを奪取するのは難しいかもしれない。しかし監督やチームメイト、そしてサポーターにも自分のプレースタイルと特長を理解してもらっている柴崎が、チームの中で重要な役割を担っていることに変わりはなさそうだ。

 試合は、0-0のまま終了して、お互い勝ち点1を分け合う結果となった。しかしヘタフェは7位、エイバルも勝ち点わずか2ポイント差の13位に上昇するなど、お互い得るものはあっても失うものはなかった試合だったのではないだろうか。

 そして今回実現しなかったラ・リーガ史上初の日本人直接対決は、来年4月22日に予定されるエイバルホームの第34節に持ち越されることになった。そのとき、柴崎はヘタフェのプレーメイカーとして輝きを放っているだろうか。日本のサッカーファンは、ワールドカップ本番の約2カ月前に実現しそうなその対決を、大きな期待を寄せながら見ることになるだろう。