現在、UAEで開催中のクラブW杯において、浦和レッズとともに注目を集めているのが、本田圭佑である。 久しぶりにリアルタイムで、本田のプレーを目にするという日本のファンも多いのではないだろうか。北中米カリブ海王者パチューカでプレーする本…

 現在、UAEで開催中のクラブW杯において、浦和レッズとともに注目を集めているのが、本田圭佑である。

 久しぶりにリアルタイムで、本田のプレーを目にするという日本のファンも多いのではないだろうか。



北中米カリブ海王者パチューカでプレーする本田圭佑

 本田を擁する北中米カリブ海王者のパチューカ(メキシコ)は、12月9日に行なわれた準々決勝で、延長の末にウィダード・カサブランカ(モロッコ)を1-0で下した。次戦は現地12月12日(※日本時間12月13日未明)、準決勝で南米王者のグレミオ(ブラジル)と対戦することが決まっている。この勝ち上がりにより、幸いにしてパチューカの試合は、あとふたつ見られることになったというわけだ。

 本田は120分間フル出場したウィダード戦を終え、まずは外国人記者を相手に英語での取材に答えると、「英語ではここまで深い話はできないので」と、日本語での会話を楽しむかのように、日本人記者の質問に答え始めた。

 そんなやり取りのなか、興味深かったのは、本田が今大会の特殊性について語ったくだりである。

 パチューカが勝ったとはいえ、内容的には見るべきものが乏しかった試合を振り返り、本田は「W杯でも、チャンピオンズリーグでも、クラブW杯でも、ビッグゲーム(大きな大会)の一発目はこんなもん。一発負けたら終わりの緊張感がある試合だった」と語り、こんなことを話している。

「これだけデカい大会で、一番短期(で行なわれる大会)。そういう意味ではこんなに内容がどうでもいい大会はないと思う。結果がすべて。内容がよくなくても、一個勝てば次に進めて、いきなり南米王者とやれる」

 クラブW杯はグループリーグもなく、最初から一発勝負のトーナメント。その分、難しさはあるが、たった1試合勝つだけでも得るものはかなり大きい。

 だからこそ本田は、「やりたいことはいくつもあったが、前半で全部あきらめて、今日は勝てばいいと、ゲームを読みながらプレーしていた」と語り、「ノルマは達成」とうそぶいた。

 まさに本田の言うとおりだろう。

 世界中のどこを見渡しても、サッカーという競技の日常は週1試合のリーグ戦だ。強豪クラブになればカップ戦が加わり、過密日程になっていくことはあるが、それでも中2日で試合が続くことは多くない。

 例えば、来年ロシアで開かれるW杯にしても、決勝トーナメントに入ってから一部例外はあるが、基本は中3、4日の試合間隔で行なわれる。

 ところが、クラブW杯は各大陸王者を一堂に集めた短期集中。基本的に中2日で試合が行なわれる、とりわけ非日常性が強い大会である。

 もちろん、この大会に何を求めるかは出場クラブの価値観次第だ。自分たちのスタイルを世界に発信する好機と、内容を求めるのもひとつだろう。だが、本田はそんな特殊な大会だからこそ、内容は度外視せざるを得ない部分があっても仕方がないと判断し、ひとつでも多く勝ち上がって、強豪クラブと対戦する機会を求めたのだろう。本田は語る。

「(準決勝でパチューカが)グレミオに勝ったら世界中のサッカーファンが、『決勝はおもんないな』と思うだろうが、僕らはそれを狙いにいく」

 今大会に臨む本田のメンタリティは、まさにアルジャジーラに敗れた浦和に欠けていたものではないだろうか。

 どんな内容であれ、絶対にこの試合に勝ってレアル・マドリードと対戦する。その覚悟が浦和の戦いぶりからは感じられなかった。浦和はいつもどおりに戦ったと言えるのかもしれないが、言い換えれば、この大会の価値が理解できていなかったとも言える。普通に戦い、普通に負けた。しかもよりによって、予想しうるなかで最も確率の高い負け方で。

 もしも浦和に、本田のようなメンタリティの持ち主がいたら。本田のような発想をチーム全体に伝えられる選手がいたら。浦和はアルジャジーラ戦で違う結果を手にしていたかもしれない。

 パチューカと浦和が残した対照的な結果は、日本代表における本田の必要性を考えるうえでも、興味深いものだった。