いつあってもおかしくなかったドルトムントの監督交代が、12月10日、発表された。ペーター・ボスが解任され、ケルンを…

 いつあってもおかしくなかったドルトムントの監督交代が、12月10日、発表された。ペーター・ボスが解任され、ケルンを解任されたばかりのペーター・シュテーガーが指揮をとることになった。

 実質的に2カ月以上勝てていないボスと、14試合して勝ち点3しか取れなかったシュテーガー。ちょっと前まで、現地メディアは「2人のペーターの行方はどうなる?」と、面白おかしく伝えていたものだが、まさかの”玉突き”人事が現実に。パズルのピースを無理やり当てはめたような印象を受けざるを得ない。

 ここ数試合、ドルトムントの試合後の取材現場における混乱はこれまでもお伝えしてきた。香川真司はチャンピオンズリーグ(CL)のトッテナム戦、シャルケ戦と、テレビ中継以外のメディア対応を行なわず、CLレアル・マドリード戦後は取材を突然、切り上げさせられた。



ドルトムント監督を解任されたペーター・ボス(右)と香川真司

 12月9日、ブレーメンに1-2で敗れた後も、この試合にフル出場し、話をしたそうなそぶりの香川を広報担当者が制していた。この日もドイツメディアに対応をしていたのはマルセル・シュメルツァーとアンドレ・シュールレだけ。ブレーメン戦には普段は目にしないような記者も多数訪れており、クラブに何かしら動きがあることは想像がついた。

 スタジアムでの取材が終わり、夜になるとメディアが動き出した。23時30分頃から、ビルト紙などがウェブサイトで「どうやらドルトムントは決断したようだ」と報じ始めた。地元紙ルールナハリヒテンのウェブサイトには、シュメルツァー、マルコ・ロイス、ヌリ・サヒン、負傷中のウカシュ・ピスチェクらが、クラブの事務所から出てくる動画がアップされた。深夜にもかかわらず、明かりが消えないクラブ事務所。緊急ミーティングが開かれ、主力や生え抜きの選手に説明が行なわれたようだ。

 翌10日の正午から、記者会見が行なわれた。先行している報道からみても、ボスの解任は想定内だ。しかし、同時に発表された新監督の名前は大きな驚きをもって迎えられた。

 実は昨シーズン終了後、トーマス・トゥヘルの後釜としてシュテーガーの名前も挙がっていた。当時、有力候補とされたのが、現在ニース(フランス)の監督を務めるルシアン・ファブレ、シュテーガー、そしてボスの3人だった。その意味では少しタイミングがずれただけの監督交代と言えないこともないが、今季のケルンでの成績から考えると、ドルトムンが新監督にシュテーガーを据えること自体、不可解としか言いようがない。歴史的な成績不振で降格まっしぐらのケルンをクビになった人物を、なぜCL出場権獲得をノルマに課すドルトムントが獲得しなければならないのか。

 そもそも現在のクラブの混乱の出発点をたどると、ハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOと前監督トゥヘルとの間の軋轢(あつれき)に行き着くように思える。昨季、ヴァツケは公然とトゥヘルを批判。最後はドイツ杯で優勝したにもかかわらず、解任という事態に至った。解任にあたってヴァツケはクラブ公式サイトで声明を発表したが、それは「クラブは悪くない」という言い訳のような内容だった。

 トゥヘルの性格的な難しさはマインツ時代から折り紙つき。ドルトムントでの2シーズン目になると、香川も含めて選手たちも不満を隠さないようになった。一方で今季、ボスに関して選手から表立った疑問を聞くことはなかった。ボスとヴァツケの間にも揉めごとはなかったのだろう。だが、昨季壊れた何かは、今季も修復されずそのままだったように思える。

 トゥヘルやボスにはなく、シュテーガーにあるのは人気だ。ケルンではどれだけ成績が悪くても、ファンに愛されてきた。また、「選手に対してオープンで、話し合いを望む監督」だと、大迫勇也が教えてくれたことがある。香川にとってその点は悪くないだろう。ケルンとは全く違う戦力でブンデスをどう戦うのか。まずは選手をまとめ上げる手腕が問われる。 

 ドルトムントとシュテーガーとの契約は今季終了まで。シュポルト・ビルト(ビルト紙のスポーツ版)によれば、ドルトムントは来季、ユリアン・ナーゲルスマン現ホッフェンハイム監督の引き抜きを目論んでいるという。ナーゲルスマンは一昨季、ブンデス史上最年少監督ということで注目を浴びた30歳。順調に結果を出し続けており、現在ホッフェンハイムはドルトムントより上位にいる。

 ただし、ナーゲルスマンにはバイエルンも手を伸ばしていると言われ、早くも争奪戦の様相を呈している。来季監督の人事情報が飛び交うようになった場合、シュテーガー新監督の求心力はどうなるのか。いずれにせよ、ドルトムントの混乱は当分続くことになりそうだ。

 香川個人についていえば、この際、沈みかけた泥舟から脱出するのもひとつの選択肢なのではないだろうか。来年のロシアW杯、そして来季以降の自分のサッカー人生を考えると、迷走が収まらないドルトムントを離れるという手も十分あり得るように思われる。