UEFAヨーロッパリーグのグループリーグ最終節が行なわれ、グループJのヘルタ・ベルリンは、エステルスンド(スウェー…

 UEFAヨーロッパリーグのグループリーグ最終節が行なわれ、グループJのヘルタ・ベルリンは、エステルスンド(スウェーデン)と1-1で引き分けた。この結果、エステルスンドは勝ち点11の2位でラウンド32(決勝トーナメント)へ進出。一方のヘルタは、勝ち点5の最下位でグループリーグ敗退に終わった。



約1カ月ぶりにスタメン出場を果たすも、ノーゴールに終わった原口

 とはいえ、ヘルタのグループリーグ敗退は、すでに前節終了時点で決まっていた。この試合はヘルタにとって”消化試合”だったわけだが、幸か不幸か、そのことが原口元気におよそ1カ月ぶりとなる公式戦出場の機会をもたらした。

 原口の試合出場は、ヘルタに限れば11月2日のELアスレチック・ビルバオ戦以来。それ以降は、11月10、14日に行なわれた日本代表の2試合(ブラジル戦、ベルギー戦)のみだった。

 エステルスンド戦に左MFで先発出場した原口は、前半から積極的に得意のドリブルで仕掛け、チャンスを作った。また、守備での貢献も見逃せないものがあり、プレスバックからボールを奪うシーンも多かった。出色の、とまでは言えないまでも、80分に途中交代するまでに見せたパフォーマンスは、今季開幕以来、パル・ダルダイ監督から”冷遇”を受け続けてきた原口にとって、自身の存在価値を示すに足るものだったはずだ。

 しかし現状においては、この試合での原口のプレーが、彼の未来を明るいものにするかどうかは疑わしい。それ以前に、そもそも指揮官が原口のプレーに関心を持っていたのかどうかすら疑問に思えてくる。

 ヘルタはこの試合、週末のリーグ戦に備えて主力のほとんどを温存した。先発メンバーのなかには、今季公式戦初出場の第3GK、20歳のジョナサン・クリンスマンをはじめ、20歳前後の選手を中心とした控え組が多く含まれていた。18歳のMFパル・ダルダイ・ジュニアなど、若手に経験を積ませる場として生かされたとも言えるが、言い換えれば、彼らはいわば”敗戦処理”をさせられたわけである。そのなかに26歳の原口が含まれていたことは、手放しに喜べることではなかった。

 試合を振り返る原口の言葉も、歯切れが悪くなって当然である。

「思うところは多々ありますけど、それを晴らせるのはピッチしかないので。今日晴らせなかったから、いつか……、いつかというか、近いうちに必ず、まあチャンスがあればですけど、晴らせるようにしたいですけどね」

 不本意な形で訪れた出場機会であろうと、今の原口にとってチャンスはチャンス。久しぶりの先発出場にも、入れ込み過ぎないように注意をしたと原口は言う。

「なんで(自分を)使わないんだって気持ちは常に持ってやってきたので、それを結果で出せなかったのは残念ですけど。チームも勝てなかったし、まあ……、悔しいですね」

 当然、試合から遠ざかる時間が長くなるほど、コンディション調整は難しくなる。「(出場していない)試合の分は(通常の練習にプラスして)必ず走っていたし、相当自分に対して負荷をかけてきたつもり」と原口。「これまでやってきた自信もある反面、久しぶりすぎて、ちょっと感覚を忘れていた部分もあった」と語る。

 それでも「プレー自体は常に落ち着きながらできていた。欲を言えば、もっと仕掛けられたらよかったかなと思いますけど、今のコンディションを考えると、最善は尽くしたかなと思います」。

 そして、原口はプライドをにじませるように、「最低限の(役割である)、しっかり守って出ていってチャンス作るっていうことは何回かできたので。その回数をもっと増やさなきゃいけないっていうのはあるけど、(試合に)出続けたらもっとできるなっていうのは、もちろんある」と話し、こう続けた。

「ちょっと悔しい、今日は」

 とりわけ原口が悔しがったのは、前半35分のシーンである。ハーフウェイライン近くでボールを持った原口は、ドリブルで約40mを独走。相手DFを完全に振り切って左足でシュートを放ったものの、惜しくもGKにセーブされた。

「あれが一番の後悔ですね。決めなきゃいけない。あれを決めていれば、週末の(リーグ戦で自分の)状況は間違いなく変わったと思うんで」

 目に見える結果を残したいという気持ちを、いつになく強く抱いて臨んだ試合だったからこそ、後悔の念も一層増した。

「使わざるを得ないような活躍をするしかないと思っていた。普段だったら、チームが勝つような働きが求められるし、今日の感じくらいやっていたら、去年は出続けられていたので。でも、それで次は出られないとしたら、今年はもっと(高いレベルのプレーを)求められているということなので……、まあ、見てみましょう、週末(のリーグ戦のメンバー)を」

 3カ月前、同じELのアスレチック・ビルバオ戦を取材したとき、原口は不遇が続く状況にも、「遅かれ早かれチャンスは来る」と言い、「普通にやれば、(それまでに失ったものを)取り返せる」と前向きに話していた。

 ところが、事は彼の思うようには進んでいない。それどころか、事態はむしろ3カ月前よりも悪化してさえいる。

 だが、その一方で、原口の表情には当時よりも落ち着きが生まれているように感じる。

 3カ月前の原口は、うつむき加減で、あまり表情も変えずに話していた。ところが今回は、時折、横を向いて遠くに視線を送ったり、考えを整理するように上を見たりすることはあっても、基本的にはしっかりと前を向き、質問者の目を見て話をしていた。

 また、話す言葉にはいくらかの含みがあり、歯切れが悪かったのは確かだが、話している間には笑顔も多く見られた。それも「苦笑まじりに」や「自嘲気味に」といった表現を加える必要のない、どこかすっきりとした笑顔に見えた。

 正直、それが何を意味するのかはわからない。単純にこの日の自身のプレーに納得できていただけかもしれないし、もはや、もどかしさや苛立ちを通り越し、あきらめに似た感情が芽生えてしまったからなのかもしれない。あるいは、もしかすると冬の移籍に向けて何か進展があったなどということも、ないとは言い切れない。

 いずれにせよ、原口の心の内を知ることはできないが、ただひとつ確かなことは、ヘルタで彼が置かれた状況が突然よくなることはないということだ。原口が語る。

「これで(次のリーグ戦の)メンバーに入れないようだったら、僕が足りないだけだから。(ウインターブレイクまで)残りちょっとなんで、いい意味で休みというか、ブレイクがあるから、そこで何か起きるかもしれない」

 不遇が続く原口は、どんな形でシーズン前半戦を終えるのか。ドイツ・ブンデスリーガはあと1週間ほどでウインターブレイクを迎える。