NTTコムのFL金正奎キャプテンは確かに言った。
「この1か月間、たぶん日本一努力したと言っても過言ではないくらい、フロントロー(FW第1列)のみんなは努力していました」
 12月2日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれたNTTコム×神戸製鋼。
 28-28で決着した試合の記者会見でのコメントだった。

 キャプテンの言葉をNTTコムの先発PR上田竜太郎に伝えた。
 東福岡高初優勝時のメンバーで、早稲田大ではキャプテンも務めたスクラムの強者(つわもの)だ。
「この11月は、どこのフロントローにも負けないくらい練習したと思います」(PR上田)
 その練習量は早大時代を振り返っても「比にならないくらい」だという。分厚い上半身がさらに大きく見えた。

 元NTTコムの斉藤展士スクラムコーチが主導するフロントローのアフター練習は、リーグ開幕前から少しずつおこなわれていた。
 しかしウインドウマンス(国際交流期間)の11月になって、集中強化期間として全体練習後のアフター練習が激増。筋力トレーニングでは、フロントローへ特別メニューが組まれた。
 PR上田いわく、その目的はひとつだった。
「この1か月間、神戸(製鋼)さんにスクラムで勝つためだけに準備しました」

 練習計画は綿密で、トレーニングに最新機器を投入するなど先進的なチームカラー。
 11月下旬に千葉県内でおこなった3日間の合宿では、グラウンド練習のすべてをドローンで空撮。NTTのグループ会社(NTTぷらら)の提案で、グラウンドをカメラで取り囲み、チーム分析のために360度動画も撮影した。

 そんなNTTコムだから猛特訓も闇雲ではなく、斉藤スクラムコーチが準備するスクラム練習は多彩だった。
 ロープでつながれた一対のヘッドギアを装着して左右で引き合う。時には人数を変えながら坂道でスクラムを組む。
 しかしその強度はハード。
 千葉合宿の最終日、グラウンドに残された合宿最後の光景は、突っ伏したまま動けなくなったフロントローの姿だった。
 アフター練習の特殊な腕立て伏せで追い込み、全員がそのまま崩れ落ちてしまっていたのだった。

 青春のような日々を過ごし、迎えた神戸製鋼との運命のスクラム戦。
 この日途中出場したチーム8年目のLO石神勝が言っていた。
「きょうスクラムを押したのも、フロントローの努力のおかげかなと思います」
 終始プレッシャーをかけ続けた。前半35分の自陣ゴール前マイボールスクラムでは、ジャパン経験者が並ぶ神戸製鋼FWを押し、ペナルティを奪った。
「スクラムについては本当に改善することができました」とは、指揮官のロブ・ペニー ヘッドコーチの試合後コメント。
 流した大粒の汗は裏切らなかった。

 PR上田の向上心はまだまだ旺盛だ。
「フロントローからチームの流れを変えられるように頑張っていきたいです」
 トップリーグのリーグ戦も残り3試合。まだ日本選手権(兼トップリーグ優勝決定トーナメント)出場のチャンスは残っている。
 さらに強くなったフロントローの絆、スクラムへの想いを武器に――これからもフォワード全員でスクラム戦の勝利を味わいたい。(文:多羅正崇)