終わってみれば、妥当な結果だった。「J1行き」の最後の切符をかけたJ1昇格プレーオフ決勝は、レギュラーシーズン3位…

 終わってみれば、妥当な結果だった。

「J1行き」の最後の切符をかけたJ1昇格プレーオフ決勝は、レギュラーシーズン3位の名古屋グランパスが4位のアビスパ福岡と引き分け、リーグ戦上位チームのアドバンテージを生かして1年でJ1復帰を果たした。



まさかの降格から1年、名古屋グランパスは見事にJ1へ返り咲いた

 立ち上がりから積極的だったのは、福岡のほうだった。

 勝利のみが求められた福岡は、ハイプレスと鋭いサイドアタックを駆使し、名古屋ゴールに迫る。19分にはMF山瀬功治のミドルがバーを叩き、FW仲川輝人がこぼれ球に詰めたものの、名古屋のGK武田洋平の素早い対応にあってゴールはならず。それでも、勝利への執着心を示した福岡は、名古屋の足をすくう予感を十分に漂わせていた。

 しかし、名古屋に動じる気配はなかった。福岡の攻勢を後方でしっかりとしのぐと、長身センターフォワードのシモビッチをめがけたシンプルな攻撃で次第に相手を押し返していく。

「名古屋さんは、今までのスタイルとは少し変えて、シモビッチにロングボールを蹴りながら、割り切ってやっていた。そのセカンドボールを拾われて、押し込まれる時間が増えていった」

 福岡の井原正巳監督は名古屋の変化に対応しきれなかったと明かしたが、それはスタイルを変えてまでも勝利を求めた名古屋の覚悟の表れでもあった。

 風間八宏新監督のもと、今季の名古屋はイチからのチーム作りを進めた。フロンターレスタイルを築いた風間理論と言うべき独特なサッカーを体現しようにも、おそらくひと筋縄ではいかなかったはずだ。実際に、FW佐藤寿人やFW玉田圭司ら実力者を補強し、リーグ屈指のタレントを揃え昇格候補の筆頭と見られていたが、リーグ戦では不安定な戦いが続いていた。

 6~7月の2ヵ月間では3勝6敗と散々な出来で、8月後半から9月にかけても4戦未勝利と苦しんだ。それでも、風間監督の地道な指導が徐々に実を結び始めたシーズン終盤は安定感を備えはじめ、自動昇格こそ叶わなかったものの、3位でプレーオフ進出を果たしている。

 その基盤となったのは、やはり攻撃力だろう。シーズン85ゴールはJ2のダントツで、風間スタイルの成果はしっかりと現れた。ただ一方で、65失点はリーグで6番目に多い数字だった。それゆえに不安定さが同居していたが、この福岡との大一番ではその課題を見事に修正し、90分を通して堅守を保ち続けた。

 もっとも、風間監督は「(やり方は)変えてないですね。やはり敵をどう動かすかということがすべてなので、そこはまったく変えていないです」と振り返る。

 決して守備を固めて引き分け狙いのサッカーをしたわけではなく、あくまで今季1年をかけて築いてきた「ボールを回して相手を動かす」サッカーを狙い続けた。

「ただ、そのなかで選手たちの判断や、自分たちが気づかないなかで受けてしまうときもあった」

 つまり、狙ったわけではなく、結果として守備意識の強さが表出してしまったということだ。それは、福岡のアグレッシブな姿勢が予想を上回ったことを示すものでもあるだろう。

「これがまだ僕たちの実力かなと思います」と玉田が振り返ったように、自分たちのスタイルを表現できなかった意味で、まだまだ名古屋が発展途上のチームであることをうかがわせた。

 それでも、結果として普段とは異なるサッカーとなったなかでも、名古屋が示した昇格への強い想いは、試合を通じて枯れることはなかった。

 後半に入ると、中盤で激しく相手の攻撃をつぶしてシュートチャンスをほとんど与えない。終盤の福岡のパワープレーに対しても、しっかりと自陣で跳ね返し、あるいは身体を張ったシュートブロックでこれを阻止。持ち前の攻撃力は示せなかったが、課題と見られていた守備がこの日のストロングポイントとなり、下剋上を狙った福岡の挑戦を見事に退けてみせた。

 スコアレスドローは、名古屋にとっては珍しい結果ではある(今季は第12節の山形戦のみ)。それでも、引き分けでも勝ち上がれる状況を生かしたという意味では、最高の結果であることに変わりはない。

「1年でJ1に復帰しなければいけないなかで、最低限の結果が出せてホッとしています。ただ、ここからがスタートです」

 キャプテンを務めた佐藤は安堵の表情で試合を振り返った。まさかの降格から1年――名古屋にとっては苦悩のシーズンだったことは間違いない。

「新しいメンバーで、新しい監督のもと、イチからチームを作り上げていったなか、本当にJ1に戻れるかと思われた人もいたでしょうし、僕たちもこのままで大丈夫かと思う時期もあった」

 佐藤はそう心境を明かした。そしてこう続ける。

「でも、支えになったのは、自分たちが普段から行なっているトレーニング。グラウンドで何ができているか、そこの積み重ねがこの結果につながったと思うので、信じてやってきてよかった」

 2012年の途中に川崎フロンターレの指揮官に就任した風間監督は、5年かけてチームを強豪に仕立て上げた。その成果は退任してから現れることになったが、根底にあるのは「巧さと強さは同じである」という考え方だろう。

「お客さんがどれだけ入ってくれるか。勝つだけでは入らない時代になっている。お客さんがたくさん入るような、すばらしいサッカーをやれるように。敵のチームのサポーターも見たいサッカーをやっていければいいと思います」

 その指揮官の言葉を鑑(かんが)みれば、この日の名古屋のサッカーに合格点は与えられないかもしれない。それでも、風間改革はまだ始まったばかりである。発展途上であるからこそ、未来の楽しみは増す。来季の名古屋は舞い戻ったJ1の舞台で、さらに進化した姿を見せてくれるはずだ。