試合終了のホイッスルが鳴ると、レスター・シティの岡崎慎司は太ももを両手で叩いて悔しがった。 12月2日に行なわれたバー…
試合終了のホイッスルが鳴ると、レスター・シティの岡崎慎司は太ももを両手で叩いて悔しがった。
12月2日に行なわれたバーンリー戦で、レスターは1-0で勝利。チームメイトたちは一様に歓喜に沸いていたが、岡崎は見るからに納得のいかない様子だった。仲間とハイタッチし、サポーターの声援に拍手で応えながらも、選手通路口に消えていくまで4回も天を仰いだ。

チャンスをモノにできず天を仰ぐ岡崎慎司
この試合で、岡崎はふたたびベンチスタートを命じられた。前節トッテナム・ホットスパー戦でトップ下として先発し、2-1の勝利に導く好パフォーマンスを見せたが、クロード・ピュエル監督は岡崎の代わりに21歳の若いMFデマライ・グレイを起用した。
「ミッドウィークの試合で岡崎は非常にいいプレーをしたが、練習でよくやっていたグレイを起用したかった。難しい試合が続く。その間、変化を加えるのは、時としてよいことだ」と、試合前に岡崎を外した采配について説明したピュエル。大金星を挙げたトッテナム戦の先発メンバーから外れたのは、その岡崎だけだった。
試合では、グレイがクロスボールのこぼれ球を押し込み、6分という早い時間帯にゴール。先制したレスターはロングカウンターとクロスによる大味な攻撃を展開していく。そして、自陣深い位置で守備ブロックをつくり、バーンリーのロングボール攻撃をしのいでいた。
前半から断続的にアップを行なっていた岡崎に出番の声がかかったのは88分。グレイとの交代でピッチに入ると、積極的に仕掛け始めた。
投入から1分後には、身体を張って敵からボールを奪取。素早くボールをFWジェイミー・バーディーに預け、自らゴール前に突進する。両手を広げてリターンパスを要求したが、バーディーはシュート。ボールが枠外に大きく逸れていくと、自分にパスを出さなかった選択に、岡崎は両手を挙げて不満そうなジェスチャーを見せた。
3分後にも、MFリヤド・マフレズとの連係でゴール前に切れ込む。マフレズがヒールで落としたボールを日本代表FWが左足でシュートしたが、敵DFにブロックされる。
最後のチャンスは90+4分に訪れた。マフレズからのリターンパスを狙ってゴール前に侵入したが、アルジェリア代表MFはシュート……。岡崎はもう一度、パスが戻ってこなかったことを不服とし、両手を広げて訴えた。
結局、4分のアディショナルタイムと合わせて6分間プレーし、シュートの場面を1回、決定機になりそうな場面を2回つくった。先発の座を再奪取するため懸命にアピールしたが、いかんせんプレー時間が短すぎた。それでも、限られた時間で結果を残したい──。必死のプレーからは、そんな強い思いが伝わってきた。
そして、冒頭に記した岡崎の様子につながるわけだ。試合終了のホイッスルが鳴り、サポーターの声援に応える選手たち。岡崎も仲間と喜びを分かち合っていたが、悔しさを思い出し、繰り返し天を仰いでいたのが印象的であった。
試合後、岡崎は落ち着いた様子で語り始めた。
「(先発から外したことに監督から説明は?との問いに)全然ないですね。戦力としては見ているけど、毎試合使うという立ち位置ではないと思う。今までの試合を見ても、自分がずっと使われることはなかったので。だから、そこに対してはあまり疑問を持たないようにしている。トッテナム戦では勝ちに貢献できたけど、今の立ち位置は連続で使うほどのものではないということ。ピュエル監督になってからまだ点を獲っていない。点を獲ったり、コイツは違うものを持っていると思わせたりしたら、自分が使われるかもしれない。
選手なので、自分が出ることしか考えていない。『自分だったらこうできる』という気持ちもある。でも、『このチームで誰が中心か?』と言えば、自分ではない。そのなかで、『攻撃陣の中で誰を代えるんだ?』となれば、やっぱりそういう(自分が外れること)ふうになる。それは仕方のないことだと思う」
今シーズンは国内リーグ第9節までに4ゴールを挙げて幸先よくスタートしたが、ピュエル監督の就任を機に準レギュラーに降格。指揮官交代のあおりを受けた格好で、心の中では葛藤や複雑な思いがあるという。岡崎は正直に心情を吐露する。
「レスターは自分に合っていると思っているんです。『やっと掴みかけているのに』『自分を信頼して使ってくれれば』という思いはありますけど。『もっと違う自分を出せる』『もっと成長する自分を出せる』と考えながらやっているけど、その思いがなかなかね(実らない)。ただスポーツでは、全員の思いをくめるわけでもないので。だから、限られた時間の中で見せていくしかない。
本当は、(監督に)もっと期待してほしいです。いつかね、自分の気持ちをわかってくれる監督に出会えたらいいと思いますけど。ただ、それって日本人じゃなければわからないと思いますし。『海外でやろう』と思ったら、点を獲って勝ち取っていくしかないと思うので。
まあ、そこは俺の戦いというか。もう、それの繰り返しですけどね。新しい監督になったら、またアピールから始まる。自分に何ができるのか。それを見せるところからまた始まる。それは楽しくはないですけど、そうした環境が自分を強くすると信じているので。いつか必ず自分にフィットするときがあると思うし。待つだけじゃなく、目指し続けることで(チャンスを)引き寄せられる」
レスターにおける岡崎の挑戦は、まさにアップ&ダウンの繰り返しである。レギュラーの座を掴んだかと思えば、監督交代や方針変更を機にベンチ組へ降格。奇跡のリーグ優勝を果たした後も、クラウディオ・ラニエリ前監督はFWの大量補強に踏み切り、翌シーズンはベンチ行きを命じられた。
それでも、岡崎は数々の試練を乗り越えてきた。
バーンリー戦で見せた6分間にわたる懸命なプレーは、何とかして目の前の壁を飛び越えようとする戦う男の姿だった。