U-23代表がリオ五輪で優勝し、フル代表が2018年W杯南米予選で圧倒的な強さを発揮して首位通過したのに続いて、ブ…
U-23代表がリオ五輪で優勝し、フル代表が2018年W杯南米予選で圧倒的な強さを発揮して首位通過したのに続いて、ブラジルサッカー復活を印象づけた今年のコパ・リベルタドーレス制覇だった。

ラヌスを破り、リベルタドーレス杯を掲げるグレミオの選手たち
11月22日、ブラジル南部の都市ポルトアレグレで行なわれた決勝第1戦。グレミオは昨年のアルゼンチン王者ラヌースの堅牢な守備に苦しめられた。
前半は高い位置からのプレスによってパスワークを封じられ、逆にカウンターから2度の決定機を作られたが、これはGKマルセロ・グローエのファインセーブによってかろうじて救われた。
後半、ラヌースは主として深い位置で守備ブロックを構築し、グレミオは明らかに”ボールを持たされている”状態。決定機を全く作れず、時間ばかりが過ぎていった。ようやく83分、右からのクロスを頭で折り返したボールに途中出場のMFシセロ・サントスが反応して左足で蹴り込み、これが決勝点となった。
だが、地元観衆がホームチームを常軌を逸した熱意で応援し、相手チームへすさまじいプレッシャーをかける南米では、ホームが圧倒的に有利。グレミオのホームでの1点差勝利など、アドバンテージのうちに入らない。試合内容からみても、第2戦をホームで戦うラヌースの方が優勝に近いと思われた。
そして11月29日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス郊外で行なわれた決勝第2戦。スタンドは4万人の地元サポーターで超満員となった。試合開始の1時間以上前から総立ちで、腕を振り回して野太い声でチャントを歌い続け、グレミオ選手は身の毛がよだつような恐怖にも似た感情に襲われたはずだ。
ところが、いざ試合が始まると、主導権を握ったのはグレミオの方だった。まるで第1戦のラヌースを見習ったかのように、高い位置からの強烈なプレスで相手の攻撃を封じると、危険極まりない高速カウンターを繰り出す。
前半27分、ピッチ中央で快速左ウイングのフェルナンジーニョがラヌース選手のパスをインターセプトし、ドリブルで30m以上を疾走。ペナルティエリアに入ったところで左足を強烈に振り抜き、ニアサイドに突き刺した。さらに42分、左サイドでパスを受けたMFルアンが、パスを出すと見せかけてドリブルで突き進み、シュートフェイントでDF2人を一気に置き去りにすると、飛び出してきたGKの肩口を抜く華麗なループシュートを決めた。
後半はラヌースも必死に反撃。72分、FWラウタロ・アコスタがゴール前でグレミオDFに倒されてPKを獲得すると、これをCFのホセ・サンドが決めた。しかし、グレミオの選手は精神的に逞(たくま)しく、失点にも動じない。83分にはMFラミーロが退場処分を受けて数的不利となったが、粘り強い守備でラヌースの猛攻を耐え抜き、2-1で勝ち切った。
この大会でグレミオは1983年と1995年に優勝しており、これが22年ぶり3度目の制覇。ブラジルのクラブが優勝したのは2013年のアトレチコ・ミネイロ以来4年ぶりで、宿敵アルゼンチンのクラブを敵地で倒して優勝したのは、1963年のサントス以来、実に54年ぶりの快挙だった。
実は、決勝第1戦の2日前、グレミオはある”不祥事”を暴かれていた。ブラジルのテレビが、「ラヌースの練習場へ送り込まれたグレミオのスパイが超小型カメラを搭載したドローンを飛ばして非公開練習を撮影し、戦術などの極秘情報を盗んだ」と報じたのである。
当初、グレミオの首脳は「我々は全く関知していない」と全面否定していたが、報道の翌日には、レナト・ガウショ監督が「世の中では賢い者が勝つんだ。対戦相手の情報を集めてどこが悪い」と開き直って物議を醸した。
レナト・ガウショは俳優リチャード・ギア似の二枚目。1983年にトヨタカップを制したグレミオのエースストライカーだったから、憶えている日本のサッカーファンも多いだろう。名うてのプレイボーイで、自由奔放な言動で知られたが、指導者となった今もやんちゃぶりは変わらない。その反面、実は緻密な戦術家で、選手のモチベーションを高め、チームをまとめる術(すべ)も心得ている。
この結果、グレミオは、12月6日から16日までアラブ首長国連邦(UAE)で開催される世界クラブW杯に南米代表として出場し、12日の準決勝で、本田圭佑が所属する北中米カリブ代表パチューカ(メキシコ)とアフリカ代表ウィダード・カサブランカ(モロッコ)の勝者と対戦する。
守備の柱は、高さと強さを備える長身CBペドロ・ジェロメウ。ボランチのアルトゥールは、21歳ながら驚異的なキープ力の持ち主で、後方から多彩なパスを配給する。また24歳のMFルアンが幅広く動いて攻撃を組み立て、自らもゴールを狙う。この3人はいずれもブラジル代表歴があり、とりわけルアンとアルトゥールは今季の活躍で評価が急上昇しており、来年のW杯登録メンバーに選ばれる可能性がある。
戦力的には、近年の南米王者の中でトップクラス。個人能力の総和ではさすがにレアル・マドリードには及ばないが、準決勝をしっかり勝ち上がり、決勝で”白い巨人”を苦しめることは十分に期待できる。