第12週、ニューイングランド・ペイトリオッツはマイアミ・ドルフィンズを35対17で下し今季9勝目を挙げ、17年連続での勝ち越しを決めた。17年連続での勝ち越しは1966年から1985年の20年間、ダラス・カウボーイズが勝ち越したのに次いで2…

第12週、ニューイングランド・ペイトリオッツはマイアミ・ドルフィンズを35対17で下し今季9勝目を挙げ、17年連続での勝ち越しを決めた。17年連続での勝ち越しは1966年から1985年の20年間、ダラス・カウボーイズが勝ち越したのに次いで2番目に長い記録だ。

ペイトリオッツを17年連続勝ち越しに導いたのは、2000年就任のビル・ベリチックだ。17年間で210勝はNFLのHCの中では史上4番目に多い勝利数だ。

現在のNFLにおいて長期間HCを務め、勝ち続けるのは簡単なことではない。結果が残らなければすぐに次の人材にポジションを奪われる。

今季のペイトリオッツは開幕戦でカンザスシティ・チーフスに黒星を喫したのを皮切りに序盤は守備の不調に苦しんだ。17年間チームに在籍し続けているのはQBトム・ブレイディのみ。チームを取り巻く状況が目まぐるしく変わる中、最終的には毎年好成績をおさめている。

ベリチックHCの戦い方や試合中の所作には、勝利への哲学が垣間見られる。

サイドラインで感情の起伏がまったく表情に表れない、鉄仮面ぶりはベリチックの代名詞でもある。17年連続での勝ち越し達成にも、「私たちはそのために、勝つためにここにいる。そのことに誇りを持っているし、勝つことは非常に大切だ。しかし、そんなことは、今はどうでもいい。何シーズン勝とうが、何試合勝とうが今週の試合には何の関係もない」と喜ぶ素振りも見せなかった。

勝利した時ばかりではない。敗戦を喫した時、ピンチの時にもベリチックは変わらない。2014年の第4週、カンザスシティ・チーフスに41対14と大敗を喫し、チームは2勝2敗。当時QBトム・ブレイディが不調で限界も囁かれていた際のインタビューで、全ての質問に「シンシナティに向かっている」と答え、次の試合に集中していることを強調。ベンガルズ戦を制すると、一気にスーパーボウル制覇まで駆け抜けた。昨季、歴史的逆転劇でスーパーボウルを制した際も「ただ1つの試合に勝っただけ。次のシーズンがすぐにくる」と、コメントした。

勝利した時も敗戦した時も、結果が出たことには執着しない。常にただ目の前の勝利を目指し続ける、一戦必勝の姿勢の積み重ねが17年連続勝ち越しの真実の姿である。

余程のことがない限り最後までベストメンバーで試合に臨むこともベリチックの特徴の一つだ。

第12週ドルフィンズ戦後の記者会見で、第4Qに入った時点で28対10とリードしていたことから、なぜブレイディを交代させなかったのか、という質問に、ベリチックはこう答えた。

「そこで座って試合が決まったっていうのは簡単だろうね。NFLでの試合を見ていればわかるように、一瞬のうちに状況が一変する。試合が手中にあると確信するのは相手が点差を詰めるだけのポゼッションを絶対に確保できない時だけ。どうやら考え方が違うようだね」と、強めの口調で答えた。

RTマーカス・キャノンが負傷欠場していたのもあってか、この日ブレイディは被QBサックこそ1回ながら、8回のヒットを受けており、40歳の体を考えると交代してもおかしくなかった。しかし、ニールダウンを除くとペイトリオッツが最後に攻撃した段階では試合時間が4分58秒残っていた。4分58秒で3ポゼッション差は、何かのビッグプレーで1TDを奪われればまたたく間に2ポゼッション差になる。ペイトリオッツは残り4分で2ポゼッション差を覆したことが8回ある。自分たちに短い時間で逆転できた経験を持っているからこそ、逆転可能な残りポゼッション数の見積もりは、よりシビアになるのだ。

長年HCを務め、勝ち方を熟知したベリチックHCの存在が、ペイトリオッツの強さの秘訣である。連続勝ち越し記録をどこまで更新できるのか、楽しみだ。