前編「3億円のオファーを断った理由」を読む>>「日本代表には、しかるべきタイミングがあって、きっと入る。今はそう信じ…
前編「3億円のオファーを断った理由」を読む>>
「日本代表には、しかるべきタイミングがあって、きっと入る。今はそう信じています」
リーガエスパニョーラ2部のヒムナスティック・タラゴナ(以下、ナスティック)で3シーズン目となるディフェンダーの鈴木大輔は、その胸中を明かしている。代表で最後にプレーしたのは、ハビエル・アギーレ前日本代表監督時代の2014年10月、ブラジル戦だった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督からの招集は未だにない。今月の欧州遠征でもメンバー入りはしなかった。
「代表でプレーしたいというのは、もちろんあります。でも、それに執着したらいけない、とも思っていますね。自分はスペインに、”どれだけ成長できるか”というので来ていますから。そうすることで、代表の道も開けるはずって。ただ、ネットニュースとかで情報は伝わってくるので、それを見たりすると、焦りがないといえば、嘘ですよ。不安もあるけど、目的を見失っちゃいけないって自分に言い聞かせています」

試合後に対戦相手と握手をかわす鈴木大輔。チームメイトとのコミュニケーションにも不安はない
鈴木は「自分のプレーを高める」という純粋な向上心をテコにして異国での戦いに挑んでいる。そのプロセスの中で、W杯のような華やかな舞台もあるはず。そう腹を決めている。
代表のセンターバックは吉田麻也に続いて昌子源がポジションを確保しつつあったが、欧州遠征では槙野智章が台頭するなど、メンバーはまだ確定していない。
「代表に入ったら何ができるか?というのはまったくイメージしていないし、できないですよ。サッカーはそのとき、そのときのものですから。中に入ったら、そこにまずは身を任せて、そこからは競争ですよね。自分は1番下からになるので、そこでひとつずつ評価を上げていくしかない」
日本代表の欧州遠征の前には、代表関係者が鈴木を視察に来ている。しかし折悪しく、カタルーニャカップには出場したものの、リーグ戦はベンチだった。監督が代わった直後で、先発を外れる試合もある。
「このタイミングじゃなかった、というだけのことですよ。必ず然るべきときが来るはずです」
鈴木はそう言って、楽観的に先行きを捉えている。今は修練の日々なのだろう。
「毎日、必ず一回は悔しいことがありますよ。大変なことだらけ」
スペインで戦う日本人DFは、苦笑しながら続ける。
「新しく就任した監督は戦術マニアで、すごい細かいんです。自分はまるで18歳の選手みたいに、トレーニングで一から教えられている感じ。練習後も2人でビデオを見ながら戦術的な動きをチェックし、補習みたいなもんですよ。でも、期待していない選手にそこまでしないと思うんですよね。俺がチームの中で一番伸びしろあるなって思うようにしています。考え方次第ですよね」
彼はよく通る声で言った。日本のサッカーで教わってきたこととは、まるで違う指摘も少なくないという。
「楽天的? どうですかね。”悔しいな、マジか”と打ちひしがれるときもありますよ。でも、その時間が若いときよりも短くなって、感情が安定してきました。ここは耐えていれば、次にチャンスは来るなって。いま学んでいることをマスターしたら、どうなるんだろうって、楽しみですよ。めっちゃ、いい経験ができていると思います」
過去4人の監督からは主力として扱われただけに、反発もあるだろうが、鈴木はまずすべてを受け入れ、成長の糧にしようとしていた。とことん積極的に補習を受けるのは、頑張る姿を見せるためではない。本心から、それが自らが殻を破る手段になると信じている。うまくなりたいという熱量の多さと、ひとつひとつの積み上げで道を切り開いてきた自負がある。
「いつも自分にフォーカスするようにしています。それは昔から。誰かと比較するんじゃなくて」
そう語る鈴木は、日々、自らと向き合っている。一方で、耳を閉ざすこともしていない。先日は、センターバックを組むキャプテンのシャビ・モリーナからこんなことを言われた。
「おまえたち日本人のメンタリティはリスペクトするよ。でも、監督に言われた指示を正直に守ろうとするな。まじめに没頭するのはいいことでもあるが、悪い部分もある」
その言葉は身に染み、鈴木はこう洩らしている。
「スペインに来て、自分が日本人だなぁとは思いますね。例えばビルドアップで、斜めにボールをつけるというトレーニングがあるじゃないですか。こっちの選手は必ずしも、その通りにやらない。違うプレーを選択し、”その方がいいと判断したから”と平然としている。でも自分の場合、言われた通りにボールをつけようとしてしまう。監督の言った通りにすることが、プレーの目的ではないんですよね」
鈴木は異国での戦いに揉まれ、着実に成長を遂げつつある。
11月5日、第13節のバジャドリード戦で、鈴木は先発に返り咲いた。敵地に乗り込んだ難しい試合で0-3と完封勝ちに貢献。それ以来、4試合連続先発出場を続けている。その道の先に日本代表、そしてW杯もきっとある。