初めて日本代表になった2012年から、国際舞台でも危険地帯へ先回り。好タックルでピンチを救うたび、概ねこんな意味合いの言葉でそのシーンを振り返ってきた。「それは感覚というか…。チームの決まった動きというわけではないので」 数年が経ち、20…

 初めて日本代表になった2012年から、国際舞台でも危険地帯へ先回り。好タックルでピンチを救うたび、概ねこんな意味合いの言葉でそのシーンを振り返ってきた。

「それは感覚というか…。チームの決まった動きというわけではないので」

 数年が経ち、2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げ、2016年秋にジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ体制が発足してからも、立川理道は危機管理能力を維持している。2017年秋のツアーを締めくくる、フランス代表戦でも然りだった。

 8-3と5点リードで迎えた前半25分ごろ、グラウンド中盤右のスペースを攻略された。日本代表防御網のなかでも大柄なFW第1列が並ぶところを、青い戦士が首尾よく破った。

 しかし、逆方向から駆け戻ってきた赤と白の背番号12が、そのランナーに追いつく。倒す。被害を最小限に食い止める。間もなく、味方WTBのレメキ ロマノ ラヴァが接点で球に絡む。フランス代表の反則を誘った。

 さらに立川は続く26分ごろ、自陣ゴール前でのピンチを救う。

 日本代表側から見て左端のスペースを駆け抜ける相手へ、それよりやや中央よりの位置にいたはずの立川が迫る。トライラインにボールが置かれるより少し早く、その下半身をタッチラインの外へ押し出した。ビデオ判定により、ノートライとなった。会場のナンテール・Uアリーナでは、ファンのブーイングが渦巻いた。

 本人の述懐はこうだ。

「(日本代表は)結構、(前に)出てディフェンスするところが多かったので、カバーできるところはカバーしたいと思っていました」
 
 今秋から、ジョン・プラムツリー新ディフェンスコーチが着任。鋭く前に出る防御網を唱えている。そのため立川の言う通り、「結構、(前に)出てディフェンスする」のがチームの命綱となっている。

 鋭く飛び出した選手の裏側を取られれば、別の場所にいる選手がカバーしなくてはなるまい。「危ない」と感じた先へ「感覚」で戻れる立川は、システムの行き届かぬ領域をカバーしうる。

 この日は、前にせり上がった防御網が相手を仕留めるシーンもあった。チームの副将でもある通称「ハル」は、この新システムの定着度合いを前向きに語る。

「プラムツリーが来て時間も経ちましたし、(戦術を)落とし込むなかで選手も自信を持って反応できている。抜かれても(前に)出ている分、ゲインラインは取られない(攻防の境界線を後退させない)ために思い切って出るというのが重要。この4週間で、自信をつけたと思います」

 所属先のクボタでは主将を務める。10月いっぱいまであった国内トップリーグの序盤戦で故障したが、11月4日のオーストラリア代表戦になんとか間に合わせた(神奈川・日産スタジアム/●30-63)。

 渡仏後の18日は、トゥールーズのスタッド・アーネスト・ワロンでのトンガ代表戦にフル出場。39-6で勝った。フランス代表戦では15-20で迎えた後半21分に「戦略的交代」で退いたが、状態は上向きだったようだ。

「個人的にも怪我から復帰してトンガ代表戦、フランス代表戦はコンディションもよかった」

 ややミスの多かったフランス代表に勝ち切れなかったため、「本当に小さい、細かいことを修正しないと」とも語る。反則を契機に8-13と逆転された前半終了間際、攻め込みながらスコアできなかったいくつかのシーンなどを振り返り、勝機を逃した悔しさも口にしている。

「プラン通りにできたところがスコアにつながった。そこでは、自分たちのやりたいラグビーができたのかなと思います。ただ勝ち切れなかったのは、(点を)取り切れるところで取り切れなかったこと、前半の最後にペナルティからスコアをされてしまったこと(が要因)。細かいミスをなくしていきたい」

 組織力に手ごたえを掴んだ防御についても、「個々のタックルは向上できる」。欧州6強の一角を苦しめ「ヨーロッパのチームに対していい試合ができたのは収穫」としながら、伸びしろのありかを語っている。

「また、トップリーグ、サンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦。日本代表とリンク)、日本代表(6月にテストマッチを予定)に向けて、コンディションを維持しながらやっていきたいと思います」

 ツアー解散後も、国の主軸として研鑽を積む。(文:向 風見也)