祭りの号砲は意外な一撃だった。 チャンピオンズリーグ(CL)のグループBを戦うパリ・サンジェルマンは、第4節終了時…

 祭りの号砲は意外な一撃だった。

 チャンピオンズリーグ(CL)のグループBを戦うパリ・サンジェルマンは、第4節終了時点でまだ一度も失点していなかった。爆発的な攻撃力で4試合17得点を記録したのに加え、無失点のままグループリーグを突破すれば、新たなレコードとなっていたが……。その記録の樹立は、セルティックとの第5節でキックオフ早々に阻まれた。



CLグループリーグ5連勝を飾ったパリ・サンジェルマン

 開始1分、セルティックのオリビエ・ヌチャムがグラウンダーのCKを入れると、ムサ・デンベレが右足のダイレクトで合わせて先制する。「早い段階で失点しないことが重要。立ち上がりに注意したい」と、セルティックのブレンダン・ロジャース監督は戦前に語っていたが、スコットランド王者にとって望外のオープニングゴールが転がり込んだ。ケルトの熱いサポーターたちが狂喜乱舞したことは言うまでもないが、フランスU-21代表コンビによるゴールに、地元パリのファンも複雑な想いを抱いたかもしれない。

 試合後に現地の女性記者に問いただされていたように、すでに勝ち抜けを決めていたパリの選手たちは、試合序盤に集中力を欠いた緩慢なプレーを見せた。先制される起点となったCKは、ダニ・アウベスの不用意なキックにより生まれたもの。先行された後も攻撃時にはシンプルなパスがずれ、ボールを持たない時は前線のエディンソン・カバーニとネイマールがほとんど守備をしないため、プレスがうまくかからなかった。

 しかし、働き者のフランス人、アドリアン・ラビオがそんなチームメイトを叱咤するかのように流れを変える。前半6分、生え抜きの背番号25が中盤で相手ボールを奪って持ち上がると、左前方のネイマールにパス。すると、それまでほとんど歩くように動いていたスーパースターは、ボールを持った途端に別人になり、角度のないところから左足で見事にネットを揺らした。そしてここから、怒涛のゴールラッシュが始まる。

 前半22分、左サイドからネイマールがマルコ・ベラッティとのワンツーで抜け出し、1点目のデジャブのようなシュートであっさり逆転。その6分後には、ユリアン・ドラクスラーの浮き玉のパスをネイマールが頭で折り返し、カバーニがボレーで追加点を奪う。前半終了10分前には、ネイマールのFKがエリア内にカオスを生み、最後はフリーのキリアン・ムバッペ(フランス人に聞いた正しい発音は”エンバペ”)が仕留めた。

 前半のうちに、パリの誇る煌(きら)びやかな3トップがそれぞれネットを揺らし、ホームスタジアムのパルク・デ・プランスはお祭り騒ぎ。ゴール裏のサポーターが会場の全員に立席を促し、皆で合唱しながらリズミカルに拍手を続ける。それを横目に、隅に陣取るセルティックファンだけが頭を抱えて静まり返っていた。

 後半もゴールラッシュは続いた。ベラッティのゴールを皮切りに、再びカバーニの見事なボレーがネットを揺らす。そして、後半35分には圧巻の7点目が決まる。左サイドの深い位置でネイマールがシャペウ(相手の頭を越すフェイント)を決めて折り返すと、カバーニは空振りしたが、最後はアウベスが右足アウトのミドルを左のトップコーナーに沈めた。

 ピッチ上のスターたちの競演に応えるように、スタンドの観衆は手元のスマートフォンのライトを光らせた。その光景はノエル(クリスマス)の電飾に彩られたシャンゼリゼ通りにも似ていた。

 5-0、3-0、4-0、5-0、そして7-1。5戦全勝、24得点1失点は今季のCLトップ記録であるだけでなく、これまでのグループステージ最多得点数を、まだ1試合を残して更新した。第2節にはバイエルン・ミュンヘンを粉砕しており、「ここまでの相手が弱すぎた」という見解があったとしても、それは説得力を持たない。

 敗軍の将となったロジャーズ監督は、「彼らが決勝へ勝ち進まなかったら、私はとても驚くだろう。パリはワールズベスト(world’s best)だ」と、試合後の会見で相手を讃えた。また、翌日の地元紙『ル・パリジャン』では、かつてパリの主将を務めたブルーノ・ジェルマンが「バランスのよい完璧なチームだ」と現チームを評している。

 昨季からチームを率いるウナイ・エメリ監督は、セビージャ時代にヨーロッパリーグを3連覇した経験を持つが、昨季はCLで16強にとどまり、リーグではモナコの後塵を拝した。ネイマールとムバッペを加えた今季は当然、失敗は許されない。

「この勝利を喜んでいるが、謙虚な姿勢を忘れてはならない。改善すべきディテールはまだまだある」

 エースのネイマールについては、「彼はいつもピッチで楽しんでいる。そして自分だけでなく、仲間の能力も生かしている」と語った。

その言葉通り、最近のネイマールは得意のドリブルやトリッキーな足技だけでなく、FKやフィードでもきわどいシーンを何度も演出している。左サイドから、逆サイドを抜け出す仲間に届ける浮き玉のスルーパスは、セレソン、バルサ、そしてパリの先達、ロナウジーニョの全盛期を彷彿(ほうふつ)とさせた。シーズン当初に騒がれたカバーニとの不仲説も収束しており、この日は7度のゴールシーンを両者が一緒に祝っている。

 カタールの王族がパリの経営権を握って6年。フットボールのハードもソフトも整った華の都に、ビッグイヤーはもたらされるのか。今季CLグループリーグ無傷の5連勝は、アブダビが統治するペップ・グアルディオラのマンチェスター・シティと、パリの2チームのみ。

 もしキエフでのファイナルにその両雄が残るとすれば、”カネ”が支配する現実を見せつけられるようで、ちょっと寂しい気もするけれど、”至高のスペクタクル”だけは保証されそうだ。