アトレティコ・マドリードの本拠地、ワンダ・メトロポリターノで22日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)グループ…
アトレティコ・マドリードの本拠地、ワンダ・メトロポリターノで22日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ第5節、アトレティコ対ローマの一戦は、アントワーヌ・グリーズマンの2得点に絡む活躍で、アトレティコが2対0と勝利し、最終節に決勝トーナメント進出の望みをつないだ。
その瞬間、アトレティコのエースは自然と右手の甲を空に突き出していた。

ローマ戦でスーパーゴールを決めたアントワーヌ・グリーズマン
「チームは家族」と常々語っている監督ディエゴ・シメオネにとって愛おしい息子のひとりであるグリーズマンが、69分、アンヘル・コレアの左からのクロスを、まるでマンガのような美しいバイシクルシュートでローマゴールに突き刺した直後のことだ。
左コーナーでは、直近の9試合無得点でアトレティコ不調の戦犯と呼ばれたフランス代表FWを中心にチームメイトが輪を作ると、ワンダ・メトロポリターノに集まったアトレティコ・マドリードのファミリーも大きな歓喜に包まれた。そしてグリーズマン、シメオネ、チーム全体へのチャントが熱気に溢れたスタジアムに響き渡った。
前半は今シーズンのアトレティコを象徴するような低調な内容だった。試合前に負傷したフアンフランの穴をMFのトーマスが埋めたが、徹底的にその右サイドをローマに攻められ、主導権を握られた。
安定しない守備、つながらないパス、連動性のない淡白な攻撃、ハンドで取り消されたアウグスト・フェルナンデスのゴールに象徴される不運……すべての要因が少しずつ、今季のアトレティコの歯車を狂わせていた。リーガではなんとか4位をキープしているが、CLでは格下のグラバグ・アグダム(アゼルバイジャン)にアウェー、ホームとも引き分けたのが痛かった。
アトレティコの不振が厄介なのは、明らかな修正が必要なほど悪いわけでないことだ。力のあるチームだからこそ、ごまかしながら戦い続け、少しずつベストな状態から遠ざかっていく負のスパイラルに飲み込まれてしまった。その負のスパイラルに一番に飲み込まれていたのが、ゴールに見放されていたエース、グリーズマンだ。期待はプレッシャーに、愛情は憎悪へと変わった。その結果、生み出されていたのはゴールではなく、焦りだった。
だがこのローマ戦、悩めるエースが決めた一発は、そんな悪い流れをすべて断ち切る力のあるものだった。試合終了間際にもグリーズマンのアシストから途中交代のケビン・ガメイロがGKをかわして角度のないところからゴールを決めた。リーガエスパニョーラのセビージャ戦以来、公式戦11試合ぶりの複数得点で勝利を手にしたチームは、決勝トーナメント進出へ一縷(いちる)の望みを残した。
とはいえ、シメオネ率いるチームがその望みを叶えることが簡単ではない状況には変わりはない。5節終了時点でグループCの順位は1位チェルシー(勝ち点10)、2位ローマ(8)、3位アトレティコ(6)、4位グラバグ・アグダム(2)。アトレティコが決勝トーナメントに進出するためには、最終節、スタンフォード・ブリッジでチェルシーに勝つのはもちろん、すでに敗退が決まっている最下位グラバグが、ローマのホームで勝ち点を獲得しなければならない。自分たちではどうにもならない戦いに身を委ねなければならないのだ。
最後まで決して諦めない。サッカーではよく使われるフレーズだが、今このフレーズが一番似合うのは、この夜、ワンダ・メトロポリターノで勝利を手にしたチームではないだろうか。
シメオネは試合後の記者会見で「試合開始からサポーターは自分たちに力を与えてくれた。このチーム、そしてサポーターには魂がある」と話している。試合前、試合中、そして試合終了後もチャントを歌い続けたサポーター、そしてそのサポーターに応えるように再びグラウンドに姿を見せ、2週間後の決戦に向けて気持ちを高める選手たちを見ていると、奇跡が起きてもおかしくないような大きな力がアトレティコに生まれているような気がした。
この夜、ワンダ・メトロポリターノで行なわれた試合のように、魂を震わせる戦いをしたチームを責めるサポーターはいない。昨シーズンまで4季連続でCLの決勝トーナメントに駒を進めてきたが、今季はそこにアトレティコ・マドリードの名前は刻まれないかもしれない。だが、シメオネ率いるチームとそのサポーターが誇り高く最後まで戦い続けることだけは間違いない。