ほどよく筋肉のついた、しなやかで細いバレエダンサーは憧れの的。ハードに踊るための筋力がありながら、なぜあんなにほっそりと美しい体なのでしょうか? その秘密は、バレエならではの体の使い方にありました。後編では「二の腕」に特化し、バレエダンサ…

 ほどよく筋肉のついた、しなやかで細いバレエダンサーは憧れの的。ハードに踊るための筋力がありながら、なぜあんなにほっそりと美しい体なのでしょうか? その秘密は、バレエならではの体の使い方にありました。後編では「二の腕」に特化し、バレエダンサーが日々おこなっているエクササイズを教えてもらいました。

前編はこちら

内ももを鍛えて美脚になる方法【バレエダンサーはなぜ細い?バレエに学ぶストレッチ(前編)】 | ビューティ×スポーツ『MELOS』

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バレエダンサーの二の腕が「振り袖」にならない理由

 二の腕の下側、よく「振り袖」と呼ばれる箇所は鍛えにくく、たるみやすいと悩む女性は多いもの。バレエダンサーのたるみ知らずの腕は、どのようにして鍛えられているのでしょうか? 大人のためのバレエスタジオ「BALLET GATE」吉祥寺スタジオの主任教師・山口愛先生にお訊きしました。

「バレエでは、筋肉を固めずに、長く伸ばしながら使うのが特徴です。上半身の動きでは『ポール・ド・ブラ』と呼ばれる腕の運びが重要で、筋肉を繊細に動かして感情表現につなげています。腕は背中から使うように意識しますが、そのときに大切なのが、二の腕の下側にある上腕三頭筋です。外側にある上腕二頭筋だけで踊ると、肩が上がってしまい、やわらかな腕の運びを表現することができません。肩甲骨から肩、ひじ、手首、指先までを分断させず、つなげて踊るためには、上腕三頭筋を鍛えることが不可欠なのです」

 上腕二頭筋は、腕を曲げたり、ものを持ったりするときに使う筋肉で、日常的によく使う筋肉です。腕にできる「力こぶ」は、上腕二頭筋のこと。ここを鍛えすぎると、ムキムキと太い腕になってしまい、優雅さとは離れてしまいます。

 一方、上腕三頭筋は、手でものを押したり、腕を体の後方に引いたりするときに使う筋肉で、日常生活では使いにくい箇所。でも、ここを鍛えれば「振り袖」のたるみを軽減でき、ダンサーのように細くてしなやかな腕に近づけるはず。

 今回は、二の腕の下側を効果的に鍛えるエクササイズを教えていただきましょう。

「押す」動きで、二の腕の下側の筋肉を目覚めさせる

【二の腕の下側を鍛えるエクササイズ①】

【1】手首を直角に曲げ、ひじを伸ばしてバー(台の上でOK)に手をつきます。腕は両肩の幅に広げ、両足はそろえて立ちます。

【2】二の腕の下側を意識しながら、上半身を前に倒していきます。ひじが体の横に来るまで倒したら、少しキープします。ゆっくりペースで、10回ほどおこなってください。

「押す動作をすることで、上腕三頭筋を目覚めさせます。力を入れる必要はありません。二の腕の下側がピリッとして、効いている感覚があったら、そこで少しキープしましょう。上半身が崩れやすいので、腹筋と背筋を使って、まっすぐな上半身を保つこと。背中が反り返らないよう、注意しましょう」

ねじりを加えることで、上腕三頭筋を感じやすくなる

【二の腕の下側を鍛えるエクササイズ②】

【1】まっすぐに立ち、両腕を真横に伸ばしたら、中指を遠くへ引っ張るように意識しながら、手の甲が前を向くように腕をねじります。このとき、肩が上がってしまわないように注意しましょう。

【2】次に、同じく中指を遠くへ引っ張るように意識しながら、ゆっくりと手のひらを上向きに返します。このときも肩が上がらないように注意。二の腕の下側が絞られている感覚があったら、少しキープします。手のひらを返しながら、ゆっくりと10回おこなってください。

「手のひらを返すときに、上半身が崩れやすいので注意しましょう。このように(上写真)お腹と背中が平らのままおこなえば、二の腕の下側にある筋肉を感じやすいはずです」

『白鳥の湖』の腕使いで、背中から二の腕を鍛えるエクササイズ

【二の腕の下側を鍛えるエクササイズ③】
 バレエ『白鳥の湖』で、白鳥たちが踊るときの腕運びです。肩甲骨から羽が生えているような感覚で腕を大きく使い、鳥の羽ばたきを表現します。

【1】両腕を下げたら、ひじから二の腕を軽く横に張り、丸みをつけたポーズからスタート。

【2】ひじと二の腕を使いながら、ゆっくりと腕を上げていきます。

【3】頂点に来たら二の腕張り、ひじから下げるような感覚で腕を下ろしていきます。

【4】1のポーズに戻ります。1~4まで、息を吸いながら腕を上げ、吐きながら下ろしながら、ゆっくりと10回おこなってください。

「ひじから二の腕を張ることで、二の腕の下側への意識が抜けずに、この動きをおこなうことができます。腕だけですべてをおこなうのではなく、背中から羽が生えているような感覚で、大きく腕を動かしてください。その際に背中が反りやすいので、腹筋と背筋を使って、まっすぐな上半身をキープしましょう。また、肩が上がってしまうと効果が半減。できるだけ、肩が上がらないように!」

 これらの動きをおこなっていると、二の腕の下側にピリッとした心地よい痛みを感じられます。これが筋肉に効いているサイン! 日ごろの習慣にすることで、自信をもってノースリーブを着こなせる腕を手に入れたいですね。

【取材協力】
BALLET GATE
熊川哲也さんが大人の女性(満15歳以上)のために設立したバレエスタジオ。熊川さんは英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍し、帰国後Kバレエ カンパニーを創立。ダンサーとしてはもちろん芸術監督をも務める。日本においてバレエ文化を伝承したいという思いのもと、BALLET GATEを設立。恵比寿、吉祥寺、横浜、福岡、大宮の5カ所にスタジオがあり、どのスタジオでも受講可能なグランド会員(入会金3万円)と、入会したスタジオのみ利用できるホーム会員(入会金1万円)がある。レッスンはチケット制。
[HP]http://www.k-balletgate.com/

【監修者プロフィール】
山口愛
Kバレエスクール吉祥寺校・主任教師。5歳よりバレエを始め、11歳より石神井バレエアカデミーにて外崎芳昭、山崎敬子に師事。2000年、ロシア国立ワガノワ・バレエアカデミー留学。帰国後NBAバレエ団入団。2001年NBA全国バレエコンクール、シニアの部第3位受賞。 2003年、東京新聞全国バレエコンクール、パ・ド・ドゥ部門ファイナリスト。2006年4月、Kバレエ カンパニーに入団。2009年よりKバレエスクールにて教師を務める。

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<Text:富永明子+アート・サプライ/Photo:斉藤美春>

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