◇卓球 ◇WTTシンガポール・スマッシュ 第6日(27日、シンガポール・OCBCアリーナ) 【シンガポール 27日=宮下…

◇卓球 ◇WTTシンガポール・スマッシュ 第6日(27日、シンガポール・OCBCアリーナ)

 【シンガポール 27日=宮下京香】女子シングルス3回戦が行われ、24年パリ五輪銅メダルで世界ランク10位の早田ひな(日本生命)が、同5位の蒯曼(かいばん、中国)をフルゲームの末に破って8強入り。世界トップ5を破るのは、24年2月の世界卓球団体戦決勝で当時ランク3位の陳夢(ちんむ)を倒して以来。同年夏のパリ五輪での左腕負傷を乗り越え、強敵を撃破した。28日の準々決勝では、世界ランク1位の孫穎莎(中国)に挑む。張本美和(木下グループ)と組む女子ダブルスでも決勝に進んでいる。

 ついに壁を破った。2―2で挑んだ最終ゲーム(G)。先にマッチポイントを握ったのは世界屈指の左利き・蒯だったが、早田は己を信じ抜いた。11―11からこの日初めて出したバックサーブで意表をつくと、バックハンドドライブで押し切った。勝利を確信し、両拳を突き上げた。両手で顔を覆い、目元が熱くなる。4度目の挑戦で蒯を初撃破した。「率直にうれしい。殻を破れた。苦しい時間が続いたけど、少し報われたかな」と喜びを爆発させた。

 世界最強の左利きを相手に先に2Gを奪取。「逃げ切った感じはあった」。しかし簡単にはいかない。相手に驚異の粘りでじわじわと迫られ、ゲームカウント2―2に追いつかれた。一転して「負けてもおかしくない」と弱気になりかけたが、流れを変えたのは「現役が終わるまでの武器」というパリ五輪でも救ってくれたフォアハンドドライブだ。最終Gの6―8から勇気を出して回り込んで、左腕を振り抜いた。相手のブロックがエッジで入ったが、「少し相手が押されている感じがあった」という。相手のわずかな変化に気づき、早田は「爆発力」と呼ぶ猛攻をたたみかけた。

 平たんな道のりではなかった。パリ五輪で銅メダルを獲得したが、準々決勝で痛めた左腕は、なかなか回復せず、五輪後は苦しい時間が続いた。中国の強豪には「もう勝てないと思うことも今日まであった」。パリ五輪前のようにいかない中で「新しい人生を歩む感覚」と切り替え、全てにおいてあえて「チャレンジ」する選択を取ってきた。長年、指導を受けた石田大輔コーチの専任を離れ、さまざまな人から卓球の考え方を吸収。この日ベンチに入った森聡詩さん、石田氏ともたまに連絡を取り、新たな「チームひな」を形成して歩んできた。

 「やはりメダルを取る前と取った後では、同じ気持ちで頑張ることはできない。若干、燃え尽き症候群みたいになっていた時期もありました。今でもそこには波がある。だからこそ、自分がやってきたことがない人生を歩んでみたい」。ロス五輪に向けて決断した「シーズン2」。2年後の大舞台に向けて、早田にとって大きな意味を持つ1勝になりそうだ。