サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニ…
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、あまり知られていないけど、けっこう凄いリーグについて。
■W杯開催国の国内事情
アメリカを中心に、メキシコ、カナダを加え、史上初めて「3か国共同開催」で行われる今夏のワールドカップ。メキシコには「リーガMX」という80年以上の歴史を持つプロリーグがあり、南米の強豪にも十分対抗できる実力の持ち主であることがよく知られている。
現在のメキシコ代表選手の多くがこのリーグのクラブに所属している。2022年大会ではグループステージで敗退したものの、その前はワールドカップで7大会連続ラウンド16に進出。強豪国でありながら、欧州のクラブでプレーする選手が意外に少ないのは、リーガMXの競技レベルの高さとともに選手の報酬レベルの高さを証明している。
ではアメリカとカナダはどうだろう? 今回は、この両国にまたがるプロサッカーリーグである「メジャーリーグ・サッカー(MLS)」がどんなリーグなのか、少し探ってみたい。
■タレントが続々と集結
18歳でアルゼンチン代表にデビューし、少年時代から所属したスペインのFCバルセロナで数々の記録を残し、ワールドカップ出場5大会目の2022年についに「世界チャンピオン」の座を獲得したリオネル・メッシがMLSの「インテル・マイアミ」と契約したのは2023年の6月。その活躍は目覚ましく、リーグカップで7試合に出場して10得点を記録、クラブに初タイトルをもたらすとともに、世界の注目をMLSに集めた。
日本人選手も活躍している。2022年まで日本代表のキャプテンとして守備の中心だった吉田麻也が2023年に「ロサンゼルス・ギャラクシー」に加入。翌年には川崎フロンターレから山根視来も加わった。バヒド・ハリルホジッチ監督時代に日本代表で活躍した久保裕也は2020年から「FCシンシナティ」でプレー、Jリーグの横浜F・マリノスなどでプレーしたGK高丘陽平は2023年に「バンクーバー・ホワイトキャップス」に加入、MLSの「オールスター」に選ばれるなど高い評価を得ている。
■サッカー不毛の地
MLSの誕生は1996年。しかし、その前にアメリカにプロサッカーリーグがなかったわけではない。19世紀からいくつものプロリーグが生まれ、消えていった。
1921年にできた「アメリカン・サッカー・リーグ(ASL)」は、一時的にではあるものの成功したリーグのひとつだった。第一次世界大戦による欧州の荒廃により、スコットランドやイングランドから数多くの「元プロサッカー選手」がアメリカに渡ってきたことで誕生した。
ただ、交通の便が現在ほど良くなかった時代、アメリカ全土を覆ったわけではなく、北東部を中心としたリーグだった。アメリカサッカー協会(USSF)や国際サッカー連盟(FIFA)と衝突しながら奮闘し、このリーグの存在が1930年第1回ワールドカップ(ウルグアイ)での「3位」という成績の要因となった。しかし1929年に始まった「大恐慌」の影響で1933年に解散した。
このリーグの失敗が、アメリカでのサッカー普及の遅れに大きな影響を与えたという。アメリカンフットボール、ベースボール、バスケットボールなど、アメリカで成功していたプロスポーツと比較すると得点が少なく、引き分けもあるサッカーのリーグに、アメリカ人の多くが「あんなもの何でおもしろいんだ」と、興味を失ったという。