【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】◆平地転向で見せた「怪物の証明」と新境地 2月20日(金曜日)にサ…
【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆平地転向で見せた「怪物の証明」と新境地
2月20日(金曜日)にサウスウェル競馬場で行われた未勝利戦(AW12F14y)を、コンスティテューションヒル(セ9、父ブルーブレシル)が9.1/2馬身差で圧勝。今週中にも陣営から発表があると言われている、同馬の次走がどこになるかが、競馬ファンの間で大きな話題となっている。
海外競馬ファンの皆様には、コンスティテューションヒルが何者であるかの説明は不要だろうが、そうでない読者の皆様のために、まずは同馬の経歴をご説明させていただきたい。
21年4月に、ティッペラリー競馬場で行われた4歳セン馬限定のポイントトゥポイント競走に出走して2着になった後、翌5月に行われたゴフス英国スプリング現役馬セールにて、英国でチャンピオントレーナーの座に就くこと6回という伯楽ニッキー・ヘンダーソン調教師に見いだされたのがコンスティテューションヒルだ。12万ポンド(当時のレートで約1905万円)で購買された同馬は、ヘンダーソン師の長年のクライアントの一人であるマイケル・バックリー氏の所有馬として、ヘンダーソン厩舎に入厩した。
21年12月にハードルデビューしたコンスティテューションヒルは、このシーズン3戦し、22馬身差で制したチェルトナム競馬場のシュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)を含めて3連勝。22/23年は4戦し、ハードル2マイル路線の最高峰に位置付けられるG1チャンピオンハードル(芝16F87y)を9馬身差で制したのを含めて4連勝。ハードル界におけるスーパースターの地位を確立した。
23/24年初戦となったケンプトン競馬場のG1クリスマスハードル(芝16F)を9.1/2馬身差で制したコンスティテューションヒルだったが、連覇を目指して出走予定だった24年のG1チャンピオンハードルを前にして、ケンプトン競馬場で行ったレースコース・ギャロップで、併せ馬の相手に大きく遅れるという「らしからぬ」姿を露呈。実施したスコープや血液検査の結果が芳しくなく、ヘンダーソン師はチャンピオンハードルの回避を決断した。
そのままシーズンオフに突入し、24年の5月に喉鳴りの手術を受けたことが後に発覚。復帰へ向けての調整中に、軽い脚部不安が発生したこともあり、同馬の休養は1年という長きにわたることになった。
戦線に戻ったのが24年12月で、コンスティテューションヒルは復帰戦のG1クリスマスハードルを快勝。続くチェルトナム競馬場のインターナショナルハードル(16F179y)も制し、ハードルデビュー以来の成績を10戦10勝として、25年のG1チャンピオンハードルに向かった。
このレースから、ハードル界のスーパースターにとって屈辱の日々が始まる。5号障害で飛越に失敗して、初めての落馬を経験。連勝も10で止まってしまった。失地回復をかけて出走したG1エイントリーハードル(芝20F)でも、再び落馬。このままでは終われないと、G1パンチェスタウンチャンピオンハードル(芝16F45y)に出走。ここでは完走したものの6頭立ての5着に終わり、3連敗を喫した。
凋落したかつての王者の姿を見て、ファンの間からは引退を勧める声も上がったが、陣営は現役続行を決断。25/26年シーズンの緒戦となったのが、昨年11月29日にニューキャッスル競馬場で行われたG1ファイティングフィフスハードル(芝16F190y)だったが、コンスティテューションヒルはここでまたも落馬。直近4戦で3度目の落馬で、コンスティテューションヒルは「終わった」と誰もが思った。
その、ハードル界の”元”スーパースターが、2月20日にサウスウェル競馬場で行われた平地の未勝利戦にエントリーしてきたのだ。除外の危機を乗り越え、オイシン・マーフィー騎手を背に出走してきたコンスティテューションヒルは、初体験だったスターティングゲートも無事にクリア。好位で競馬をした後、直線残り2Fを切った辺りで先頭に立つと、そこから後続を9.1/2馬身ちぎる快勝。鮮やかすぎる平地デビューを飾った。
かつてのスーパースターの劇的な復活に、英国競馬サークルが沸き立った一方で、ジレンマを抱えることになったのが、馬主マイケル・バックリー氏と管理調教師ニッキー・ヘンダーソンだった。
コンスティテューションヒルの次走を、どこにするか。
3月10日にチェルトナム競馬場で行われるG1チャンピオンハードルという選択肢は、もちろんある。だが、飛越に不安を抱える今、ハードルへの回帰にリスクがつきまとうことは確かである。
平地初戦の勝ち方が鮮やかだったことで、可能性として大きく膨らんだのが、今後も平地を使うという選択肢だ。ヘンダーゾン師からは、4月4日にマッセルバラ競馬場で行われるLRゴリアットC(芝14F、昨年までノッティンガム競馬場で行われていたファーザーフライトSが移設され改称)や、5月28日にサンダウン競馬場で行われるG3ヘンリー2世S(芝16F50y)らが、候補として挙げられている。
また馬主のマイケル・バックリー氏は、22日にメディアのインタビューに答え、先の話になるがと前置きしながら、8月22日にヨーク競馬場で行われるイボアH(芝13F188y)から、11月3日にオーストラリアのフレミントン競馬場で行われるG1メルボルンC(芝3200m)に向かいたいという野望を明らかにしている。
コンスティテューションヒルが今後、どの路線に行くか。陣営の発表を心待ちにしたい。
(文=合田直弘)