競馬開催に欠かせない存在のひとつが誘導馬である。競走馬をスタート地点まで安全に導くのが役割。現在、中山競馬場では13…

 競馬開催に欠かせない存在のひとつが誘導馬である。競走馬をスタート地点まで安全に導くのが役割。現在、中山競馬場では13頭が在籍しており、レースを支えている。今回は昨年デビューを果たした“新米誘導馬”ゴーストの日々に迫った。(取材日・1月17日、取材・文 netkeiba編集部)

「おばけくん」の愛称で親しまれる芦毛馬のゴースト。現役時代は中央で4勝、地方で4勝を挙げた。昨年5月に競走馬を引退し、同年9月から中山競馬場で誘導馬として第二の馬生を歩み始めた。

 そんなゴーストを日々支えているのが、担当者の河原田享さん。開催日にはタッグで誘導業務を務める。普段は担当馬の手入れはもちろん、乗馬体験のインストラクターや少年団への指導なども行っている。

 ゴーストは普段から温厚でおとなしい性格。河原田さんも「すごくいい子ですね」と目尻を下げる。仕事以外の時間は馬房でのんびりと過ごしているそうだ。「馬房の中が大好きで、基本的には出たがりません。食べることも大好きですね」。

 誘導馬としての仕事ぶりも順調だという。「日に日に落ち着いてやってくれています。待機所の雰囲気だけは、まだ少し慣れないところもありますが、初めの頃に比べれば随分よくなりました」。デビューから4カ月が経ち、経験を重ねながら着実に成長している。

 仕事内容は、徐々にステップアップしていく。まずは先輩の後方に付いて競馬場の雰囲気に慣れることから。その後、前方での誘導も経験させていく。取材当日、ゴーストは1Rから6Rまで前方誘導を務めた。デビューから4カ月という早さで先頭を任されていることについて、「他の馬を気にする様子もなく、9月のデビューした開催の最後に少し前に立たせたときに『これなら大丈夫だろう』という手応えがありました」と河原田さん。素質が高く、デビュー当初から優秀だったようだ。

 そんなゴーストにはファンの注目を集めるポイントがある。「おばけマーク」。デビュー当初から、イヤーネット(耳に付ける馬具)に装飾された“おばけ”が話題になっていた。だが、おばけはほかにも隠れている。尾の部分にもチラリ。デビュー間もない誘導馬が着ける初心者マークと一緒に並んでいる。

 チャームポイントはほかにも。河原田さんは「右前脚に注目してほしい」と話す。12月の開催に合わせて毛を刈り、おばけの形に整えたという。「昨日、撮影用に手直ししました(笑)もともとファンの多い馬ですし、競走馬のセカンドキャリアが注目される中で、誘導馬は華やかで、ファンの前に帰ってこれる仕事。彼にしかない魅力がお客様に伝わって、また元気な姿が見せられたらいいなと思います」。ゴーストのおばけマークや整った身だしなみには、河原田さんの愛情とファンへの思いが込められている。

 河原田さんが仕事に向き合ううえで心がけていることは、馬それぞれの個性に応じた接し方。「一頭一頭個性があるので、それに合わせて付き合うようにしています。誘導という面では、競走馬たちをスムーズに馬場まで導くことが一番大切だと思っています」。河原田さんは最後に、ファンへ思いを口にした。「競走馬のセカンドキャリアの一つとして誘導馬という仕事があります。元競走馬が元気に過ごしている姿を、ぜひまた競馬場に見に来ていただけたら嬉しいです」。