浦和は28日、今季のホーム開幕戦となる鹿島戦(埼スタ)を迎える。すでに5万枚以上のチケットが発券されており、今季のJ1…

 浦和は28日、今季のホーム開幕戦となる鹿島戦(埼スタ)を迎える。すでに5万枚以上のチケットが発券されており、今季のJ1最多観客動員が濃厚となっている一戦に向け、在籍13シーズン目でチームの象徴としてゴールを守り続けてきたGK西川周作(39)が、スポーツ報知の取材に応じた。日本一の集客力を誇る浦和のゴールを守り続けるやりがいや重圧について、昨季王者との一戦を前に明かした。(取材・構成 金川誉)

 赤く染まるスタジアム。これは浦和にとって日常とも言える光景だ。ただ、日本のプロスポーツ史上、ホームスタジアムに5万人を超える観客を集める例は決して多くない。2025年のJ1で5万人以上の観客を集めた試合は計6試合。国立開催(鹿島、清水、東京Vの主催試合)が3試合で、その他の3試合は埼玉スタジアムでの浦和の主催試合だった。リーグ最多の観客動員を誇る浦和で過ごしてきた時間は、西川にとって最高の刺激であり、重圧でもある。

 「5万人が入ると、アドレナリンの出方が全然違うんですよ。練習で感じる痛みが試合では消えるし、『見られている』という意識が自分をもう一段上に引き上げてくれる。練習で何本も蹴る負担と、緊張感の中で蹴る1本の負担の違いは計り知れないもの。試合の1本の方が重みがあって疲労度もすごい。試合自体が最高のトレーニングになっていると思います」

 そのアドレナリンは、特に西川が得意とするキックに重要な影響を与えるという。

 「練習では上手くいかなかったことが、試合の1本で上手くいくことがよくあるんです。キックの質も、練習では“なんかフィーリング悪いな”と思っていても、アドレナリンが出て全集中の状態だとすごく自信に満ちあふれて、いい時もある。それは僕ひとりの力では出なくて、ファン・サポーターがたくさん入って盛り上げてくれるからこそ出るものだと思っています」

 一方で西川には、毎試合、試合前に重圧と戦う時間もあるという。「僕は毎試合、試合の前に必ず緊張に襲われる時間があります」と語るように、ベテランと呼ばれる年齢になっても試合前には葛藤がある。

 「(緊張するのは)この時間っていう決まったものじゃなくて、アップに行く前とか、入場の前とか。それぐらいプロの世界は責任が大きい。子どもの頃は楽しくサッカーしていた。今でも楽しいですよ。でも、応援してくれる人がいるからこその責任感もある。緊張する自分を理解してプレーしているので、強くない自分もいると受け入れています。試合に入るとその緊張は無くなるので、自分を理解しながらプレーすることが大事だと思っています」

 緊張に体が支配された時、西川は自分自身に問いかける。鏡の前で顔を見つめ、自らと対話するという。

 「今日もできるのか。お前ならできるだろ、しっかり楽しめ、とかそういう会話をね。結局、GKは自分でなんとかしないといけないポジション。フィールドとは全く別の孤独なポジションだと思っているので、そこは自分自身が強くいることがチームのためなのかなと思っています」。ピッチに立つ頃にはワクワクした感情が体を支配しているという。

 なかでも昨季王者・鹿島との一戦は特別な舞台だ。

 「ただの一試合ではない。鹿島とやると、サポーターも僕たちも自然と熱量が上がる。負けられない、意地と意地のぶつかり合いになるんです」と静かに語気を強める。ただ、昨季は5万3301人を集めたホーム鹿島戦で0―1と敗れ、悔しい記憶として刻まれている。

 「失点も僕のパスミスからだったし、味方にもチャンスがありながら決めきれなかった試合でした。でも、ああいう試合もある。ワンプレー後の切り替えが本当に大事。僕たち(浦和GK陣)は『ページをめくる』と言っていて、頭の中のページをめくって次の章へ行くようにする。なぜミスをしたのかすぐに分析して、ゴールに入ったボールを拾いに行った時にはその処理は終わっています」

 この切り替えが、西川が長くJ1の第一線でプレーし続ける秘訣のひとつだろう。さらに「試合に出続けるのは当たり前じゃない。明日ケガするかもしれないし、明日死ぬかもしれない。だから“今日”を生きる」。22年から3年間指導を受けたGKコーチ、恩師ジョアン・ミレの言葉を今も胸に刻み、埼スタのピッチに立つ。

 「あの赤い景色を見ると、僕たちは燃える。どれだけ時代が変わっても、あの場所は特別なんです」

 そう語りながら臨む百年構想リーグのホーム開幕戦。赤い景色を背にゴール前に立つ西川が、また一つ新しいページをめくる。