21日の非公開練習で秘かに実施「こういう時間の使い方があるのか」 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で大会連覇…
21日の非公開練習で秘かに実施「こういう時間の使い方があるのか」
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で大会連覇を狙う野球日本代表「侍ジャパン」は24日、宮崎キャンプを打ち上げた。14日からの合宿期間限定のアドバイザーとして参加していたパドレスのダルビッシュ有投手は、この日を以てひとまず“お役御免”となったが、チームにとって厄介な課題だったピッチクロックへの対応に関して、大きな役割を果たした。
今回のWBCで新たに導入されるピッチクロックは、侍ジャパンの連覇を阻む“壁”になりかねなかった。投手はボールを受け取ってから、走者なしの場合は15秒、走者がいる場合は18秒以内に投球動作を開始しなければならないルールで、MLBではおなじみだが、NPBは未導入で、日本でプレーしている選手にとっては戸惑いが大きい。
そこで、ダルビッシュによる“ピッチクロック講習会”が秘かに行われた。休養日明けの21日、木の花ドーム(室内練習場)に投手、捕手、内野陣が集められ、非公開練習を実施。複数の選手の証言によると、ダルビッシュは自らマウンドに上がり、昨年10月にトミー・ジョン手術を受けたばかりとあって実際にボールを投げることこそできなかったが、投げる動作を見せながら、ピッチクロックのルール下で時間を有効に使うコツ、捕手や内野手の注意点などを伝授したという。
そもそも、この非公開練習自体、ダルビッシュが侍ジャパン首脳陣に提案して実現したものだった。
中村悠平捕手(ヤクルト)は「ダルビッシュさんにレクチャーしてもらって、こういう時間の使い方があるのかと勉強になりました」と感謝。「僕らはこれまで、時間に追われている感覚が少なからずありましたが、ダルビッシュさんの立ち居振る舞いを見ていると、そういうところが全く無く、自分の間合いで動いている。ああいう姿を見ると、球を受ける方も安心できるんですよね……」と絶好の手本を示され感心しきりだった。
具体的には、ピッチクロックのルールの下では、投手は牽制球を投げたり、プレートを外したりして、1打者につき2度までタイマーをリセットすることができる。タイマーが残り8秒となる前なら、審判にボールの交換を要求することができ、この場合もタイマーはリセットされる。非公開練習では、ボールの交換をうまく使うことも実演されたという。
合宿打ち上げ前日には感謝の気持ちを込め、選手だけの食事会に招かれた
これをうけて臨んだ23日のソフトバンクとの強化試合では、高橋宏斗投手(中日)が残り8秒となってからボール交換を要求し、ピッチクロック違反で1ボール加算を宣告される一幕があった。だが、ダルビッシュは「本人(高橋宏)はルールを理解していましたが、サインが決まっていなかったみたいで、ちょっと焦ってしまっただけ。気にするようなことではないと思います」と“次につながるポジティブなミス”と位置付けた。
ちなみに、ピッチクロック対策としては、宮崎合宿が残り3日間となった22日に“滑り込み”で合流したエンゼルスの菊池雄星投手も「審判に怒られない“ギリギリのところ”があるのです。たとえば、ファウルボールを長く眺める。それだけでも2-3秒は間を取ることができます」と秘訣を明かした。
井端弘和監督はピッチクロックについて「正直言って、われわれ首脳陣も経験がないのでわからない。いくらルールを言葉で説明されても、どう対応することが正解かは、やっている人にしかわからない部分がある」と苦しい胸の内を吐露。そんな中で「メジャーリーガーは合宿初日から来られなかったが、ダルビッシュが、こういうのもある、ああいうのもあるとアドバイスしてくれた。本当に『助かった』のひと言です」と頭を下げた。
その他、ダルビッシュは合宿中、投手1人1人の投球練習を事細かくチェックしながら技術的なアドバイスを送り、日米のストライクゾーンの違い、有効な外国人打者の攻め方などもレクチャーした。
合宿打ち上げ前日の23日夜、侍ジャパンのナインが感謝の気持ちを込めて、選手だけの食事会にダルビッシュを招き、一緒に焼き肉に舌鼓を打ったというのもうなずける。
チームには今後、大谷翔平投手、山本由伸投手(ともにドジャース)らメジャーリーガーが続々合流し、ようやく最強メンバーの全貌が見えてくる。ただ、WBC本番の激闘を経て見事連覇に行き着くとしても、合宿に参加した選手たちが“ダルビッシュ先生”への恩を忘れることはないだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)