Jリーグでは秋春制への移行を前に、新しい試みとして百年構想リーグが行われている。この短期決戦となる特別リーグでは、PK…

 Jリーグでは秋春制への移行を前に、新しい試みとして百年構想リーグが行われている。この短期決戦となる特別リーグでは、PK戦が導入された。Jリーグでもかつては採用されていた懐かしい制度ではあるが、当時を知らない世代にとっては新鮮でもある。だが、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之は、この制度は「邪道」であると考える。

■本来は「勝利=勝点2」

 今から138年前の1888年、イングランドで「フットボールリーグ」が始まった。サッカーでは世界最初の「リーグ戦」形式の大会であり、順位決定のために生まれたのが「勝点」の制度だった。「勝利に2、引き分けに1」というもので、それが世界に広まった。

 サッカーの結果には、一方のチームが勝ってもう一方が負けるか、あるいは引き分けに終わるか、その2つしかない。1試合の「勝点」を2とし、引き分けの場合にはそれを2等分するというのは、非常に理にかなっている。「2-1」の勝点制度が1世紀以上使われ続けたのは、そのためだった。

 それを「3-1」の勝点にしたのは、イングランド・リーグだった。世界に先駆け、1981年に導入した。目的は「エンターテインメント」の追求である。アウェーゲームで引き分けを求めて守備的な戦術になることを抑止しようというものだった。だから「3-1」の勝点が使われたのは、プロあるいはセミプロのリーグに限られた。アマチュアレベルでは、その後も「2-1」が使われたのである。

 以後それを真似するリーグが少しずつ生まれた。JSLでも1988/89シーズンから最終シーズンの1991/92まで4季にわたって「3-1」が使われた。ただ、国際的には「2-1」がスタンダードで、ワールドカップのグループステージでも1990年のイタリア大会まで「2-1」だった。

■勝点の変更は得点数増加のため

 しかし1993年、国際サッカー連盟(FIFA)はワールドカップで「3-1」システムを使うことを決定、併せて、「3-1」を世界のスタンダードにすることを要請した。1990年ワールドカップで1試合平均得点が2.21と非常に低調だったことに危機感を抱いた結果だった。現在、世界の大半のリーグで「3-1」システムが使われているのは、この要請以後である。

 そして現在、日本では、プロリーグだけでなくアマチュア、少年に至るまで、あらゆるカテゴリーで「3-1」となっている。

「引き分けは悪である。だから勝利の3分の1の価値しかない」というのが、「3-1システムの思想」である。だが、その論理が通じるのはプロのサッカーの話であって、ひたすらボールを追いかける少年少女のサッカーや、ただ楽しみでサッカーをしている草の根レベルにまで使う必然性などまったくない。こうしたレベルでは、「2-1システム」がふさわしい。

■PK戦はゴールの補填ではない

 もちろん、プロでも、価値ある引き分けはいくらでもある。2月17日に行われた「AFCチャンピオンズリーグ・エリート」の「FCソウル×サンフレッチェ広島」がその好例ではないか。

 アウェーの地でPKとオウンゴールにより前半はやばやと2点のビハインドを負い、その後圧倒的に攻めながら相手GKの好守などでどうしてもゴールを割れなかった広島。しかし「5分間」と示された後半アディショナルタイム、時計で言えば「92分3秒」にFWジャーメイン良のゴールでようやく1点を返すと、その3分後、95分をわずかに回ったところでMF志知孝明のクロスをFW木下康介がヘディングで決め、2-2の引き分けに持ち込んだのだ。

 プロであっても、引き分け自体が悪いわけではない。プロとして問題とすべきは、得点数の少なさではないか。昨年のJ1全380試合で生まれた得点は911点。1試合平均2.40は、Jリーグ史上最少記録だった。

 PK戦導入により、「2026百年構想リーグ」はより攻撃的になり、得点数が増えたのだろうか。2節までの時点で、全20試合の総得点は48。試合平均2.40と、まったく増えていないのである。PK戦では「10本連続成功」のFC東京も、2試合で2得点に過ぎない。

 試合中に「ゴール」というサッカーで最もスリリングなシーンを提供できない分をPK戦で提供しようというのが今回のPK戦導入なら、それはやはり「邪道」というしかない。

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