Jリーグでは秋春制への移行を前に、新しい試みとして百年構想リーグが行われている。この短期決戦となる特別リーグでは、PK…
Jリーグでは秋春制への移行を前に、新しい試みとして百年構想リーグが行われている。この短期決戦となる特別リーグでは、PK戦が導入された。Jリーグでもかつては採用されていた懐かしい制度ではあるが、当時を知らない世代にとっては新鮮でもある。だが、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之は、この制度は「邪道」であると考える。
■PK戦ラッシュの百年構想リーグ
Jリーグの特別大会「百年構想リーグ」が始まって2節、東西に分かれた「J1」では、計20試合のうち10試合が90分間を終わった時点で得点差がつかず、PK戦となった。第1節は10試合中4試合(東1、西3)だったが、第2節はなんと6試合(東3、西3)。「PK戦ラッシュ」だった。
シーズン制以降に伴う「特別大会」と位置づけられた「百年構想リーグ」では、通常のリーグ戦にないさまざまな制度が導入された。そのひとつが試合ごとの賞金で、勝利チームには600万円が与えられる。そしてもうひとつ、引き分けをなくし、PK戦で決着をつけることだ。
90分間での勝利に与えられる「勝点」は通常のリーグ戦と同じ「3」だが、PK戦勝ちだと「2」、PK戦負けだと「1」。90分間での敗戦は、もちろん「0」である。賞金は、PK戦勝ちには400万円、PK戦負けには200万円となる。うまく連動しているわけである。
■驚くべき若き日本代表のメンタル
私がスタジアムで見た試合では、第1節のFC東京×鹿島アントラーズ、第2節のFC東京×浦和レッズの2試合がPK戦となった。90分間でのスコアは、いずれも1-1だった。そしてPK戦は、両試合ともホームのFC東京が勝った。
いずれもコイントスによってPK戦はFC東京のサポーターエンドのゴールが使われ、FC東京は鹿島戦では後攻、浦和戦では先攻だったが、ともに5人全員が成功した。キッカーは両試合ともDFアレクサンダー・ショルツ、MF橋本拳人、MF山田楓喜、DF橋本健人、MF佐藤龍之介の5人で、ショルツ以外の4人はいずれも交代出場。キック順は少し入れ替わったが、5人とも鹿島戦とは違ったところに蹴って浦和戦でも全員成功した。
少し驚いたのは、「5番手」に佐藤龍之介が起用されたことだった。PK戦では、1番手と5番手に大きなプレッシャーがかかる。それを19歳、ファジアーノ岡山への1年間の期限付き移籍から戻ってきたばかりの佐藤に任せたのだ。もちろん、佐藤は2028年ロサンゼルス・オリンピックを目指すU-21代表世代のエース。彼のメンタリティーの強さを物語るものと、非常に興味深かった。
■引き分けが妥当な試合もある
ただ、なぜリーグ戦でPK戦を導入するのか、私にはその意図が理解できなかった。この2試合は、前半こそやや雑で攻撃にまとまりはなかったものの、後半になるとともにゴールへの意欲と積極性を見せ、活発な攻め合いとなり、まずまず楽しませてくれる試合内容であり、2試合とも「引き分け」が妥当な結果だった。ことさらに勝負を決する必要などないように思われた。
しかし、その後のPK戦を経ての「勝点2+400万円」と「勝点1+200万円」の差は大きい。PK戦で勝ったFC東京には笑顔が見られ、鹿島と浦和はガックリとうなだれていた。
引き分けには、「痛み分け」の意味合いを持つときもあるが、一方が悔しがり、他方は満足な結果と思うときもある。そうした「機微」が、PK戦で吹き飛んでしまうのも惜しい。